映画「4分間のピアニスト」オリジナル・サウンドトラック 映画「4分間のピアニスト」オリジナル・サウンドトラック
サントラ ヤン・ティルマン・シャーデ アネッテ・フォックスユニバーサル ミュージック クラシック 2007-10-31
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監督  クリス・クラウス
出演  モニカ・ブライブトロイ、ハンナ・ヘルツシュブルング、スヴェン・ビッビッヒ、リッキー・ミューラー、ヤスミン・タバタバイ

この映画も音楽好きの友人に誘われたのです。実際予告編で見たときにはこの映像が発する「情念」と映画の音楽性が垣間見させる深い「葛藤」の世界って凄いかも・・・ってまぁ感じたのですが、に、惹かれていた私は一もニも無く「行こう!行こう!」だったのですが・・・
実際は見終わったとき二人で顔を見合わせてしまいました。
いつもだったら凄く素直に「よかったわねぇ・・・・」と映画を見終わったときに言う彼女も呆然っていう顔でした。それは合わせ鏡の様に私の気持ちを現していました。
だって、何ていったらいいのでしょう?
期待にたがわず、いえそれ以上に最後のジェニーの弾く、または叩くピアノは魅力的でした。ひょっとしたらあの呆然顔はその音楽の力によるものだったかもしれませんが・・・それはまさしく呆然たる素晴らしさでしたから。
でも、違います。
コンテストの場面は圧巻です。それだけは絶対書きたいです。ピアノ曲の素晴らしさも、それを叩くハンナの演技力も!このピアノだけがこの映画で何かを語った唯一のものだという気がします。
では何が足りないのか?
癒しようの無い孤独もいらだつ心もたけり立つ感情も納めきれない憎しみも、女なら理解できます。いえ、人なら大抵理解できるでしょう。だからこの映画が多分語ろうとした事を見に来た全ての人が共感を持って理解したいと望んでいたことでしょう。
希望、最後の奉仕、理解、受け継がれるもの・・・物語の筋書きにはすべて含まれていることは分かります。もう既に共感しようとこちらは(見るものは)待ち構えているのです。にもかかわらず私は肩透かしを食ったような、お預けを食ったような気分です。
余りにも無駄を殺ぎきって、見る人が自分の想像力と理解力を総動員して感動してくれますように・・・と、作家は期待しすぎたのではないでしょうか。それが芸術だと?見る人を買いかぶりすぎたのではないかと思えてなりません。言葉を削ぎきるなら、それに見合う背景の入念な書き込みが必要です。言葉ではなく語るものが。ヒョットすると研ぎ澄まされ削りに削った科白の翻訳が下手だったのかも知れません?ん、そうかも?そういう可能性もあるか?
映画が言いたいことがこんなにわかるような気がするのに、こんなにもどかしい映画はありませんよ・・・と、不満です。「無口」が語った映画を一寸前に見ましたよ。「グッド・シェパード」でした。多分この「4分間のピアニスト」の方がより多くの共感者を生む可能性が高かったのに・・・と、私には妙に惜しいような、高みに登り損ねたような映画でした。クリューガーが美貌だった?ことも垣間見られました。彼女の過去に起きたドラマがもう一つ分かりやすければ・・・そこも見たいのですが、見えなかったのは私のせいかなぁ?彼女のかたくなさの底も、まだそう長く生きてきたわけでもないジェニーの心の荒れ狂う底も、見えそうで見えきれないのです。それを乗り越える二人の間に流れるものが見えてこないのです。過去は、二人の気楽ではなかった過去が二人の絆になる理由がどうしても見えてこなかったのです。あの二人にそもそも分かり合える何かが存在するのでしょうか?ヒョットするとそれこそが、見えないということこそ言いたい事だったりして・・・と、疑心暗鬼です。でも多分あの4分の演奏はクリューガー先生の心にも間違いなく響いたのですよね。