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監督  クリント・イーストウッド
出演  モーガン・フリーマン、マット・ディモン、トニー・キゴロキ、パトリック・モフォケン、マット・スターン、ジュリアン・ルイス・ジョーンズ、マルグリット・ウィートリー
クリント・イーストウッドの作品はここのところ本当に安心して身も心も委ねられる。映画に真に安心していられる正しさというか理性というか・・・が漂っているような気がするからだろうか?
でも、その分彼の若若しさは消えた!という気がしなくも無い・・・って、それは当然か。
成熟というものの静かな佇まいという手ごたえは確かに感じる。
しかし・・・ローハイドから見続けてきた私には一抹の寂しさがある。「ダーティ・ハリー」の頃はもう随分昔のことなのだなぁ・・・という感慨。
「許されざる者」にはまだ娯楽があった。けれど、「ミリオンダラーベイビー」の頃からは感動が常識になってきたような気がしている。静かに確かに感動する!まさに確実に! 見に来て良かった!と思う。
この映画も最後に私の目は確かにウルウルしていた。
焦点を見事に絞って実話を完全に美しく消化していた。マンデラの解放のニュースを見た覚えも、彼の政策が報道されたことも、彼の離婚が奉じられたことも記憶に残っている。それなのにラグビーには全く興味の無かったわたしはこの出来事を知らなかった。
「え、日本はそんな記録?を持っているの?」と、驚いたくらいである。
しかしマンデラとビナール、マンデラの黒人白人取り混ぜた警備陣、ラグビー選手達とに特化して進むワールドカップまでの軌跡。
的を絞って白人黒人融和政策に邁進する大統領の信念と意思の実行力。それを具体的に実現していく手腕と人格。そこに漂う力と理性は言葉に出来ないほど目覚しく心を打たれる! 冒頭の白人黒人達のグラウンドの有様から・・・最後の大観衆の熱狂場面まで・・・本当ならば憎悪と確執でもっと鋭い対立があったであろう状況が静かに進行していく・・・実際には・・・・・・と、ここは想像力を駆使させられる。
その観客に委ねられた部分が凄いとも思い、物足りなくも思われる。クリントウッドが・・・ああ、老成したのだなと思わされる部分である。しかしだからといって、この大テーマをがっちり握り締めて描こうとする彼の姿勢には枯れた風情はまだ無い、ええ無い。そう思うとなにか嬉しさもある。ファンで居ることはなかなかこれで忙しい。
それでもこの映画で、忘れていた偉人を確実に思い出した。
私達は生きるに当たって尊敬する人を常に心に抱いていたいものだ・・・という事を感じている。 世界に常に目を広げていればそういう人物はたくさん居るはずなのだ。敬う心は人を謙虚にしそして目標を抱かせてくれる。 「グラン・トリノ」に続いてこんな気持ちをさりげなく掘り下げてくれた映画だと思った。意志を持つ人間に備わる尊厳!