行きずりの街

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監督  阪本順治
出演  仲村トオル、小西真奈美、南沢奈央、菅田俊、石橋蓮司、佐藤江梨子、谷村美月、杉本哲太、ARATA、江波杏子

志水辰夫さんの本をもう20冊以上読んでいると思うけれど、その記念すべき第一冊がこの「行きずりの街」だった。 この作品が面白かったのでその後続けて志水さんを読むようになったのだけれど・・・この作家のハードボイルドな部分とそれでいて妙に日本人的なウェットさと、特に短編に横溢している渋さが好きで・・・。だからこの主人公波多野が仲村トオル?う~ん、微妙を通り越している。といって、誰がしてもウンとは言えないかもしれないのだけれど。で、元妻を演じるのが小西さん。これまた微妙。映画によく出ているようなので魅力的な何かがあるのでしょうが、原田知世さんになりそこなった女の子ってイメージがあって。 この映画見に行くのはちょっと厭だったのだけれど・・・だいたい書くのも厭だ・・・って、思っていたのだけれど、「東京に出てきたから映画見て帰りたいが今見たいものっていったら思いつくのはこれだけだ」と父が言うのでね。しかたなくお供。
で、二人して「見なければ良かった・・・」って言っていれば世話はない。
この原作、読まないで、知らないで見た人にはどうだったのだろう? 思い入れが無ければ素直に見れば・・・主人公のひたすらさにうたれたのだろうか? 
「SP」で、邦画のアクション?スタント?もなかなか見せるじゃないのって思ったけれど・・・こういう作品にもスタイリッシュさ、もう一段上のセンスを求めたいなぁ・・・と、思ったのだけれど。なんかなぁ・・・、厭だし、変だったし・・・
(2010・11・28)
 

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ヤング@ハート

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監督  スティーヴン・ウォーカー

ドキュメンタリーでした。
予告編で老人たち(それもかなりの?後期高齢者)が実に生き生きと歌っている姿を見ちゃったので・・・これは私好みに違いない!
まさしく私好みでした。楽しく足の先でリズムを刻みながら見ていました。
このドキュメンタリーを作っている間にも同じコーラス隊の方々が何人か病に倒れて・・・亡くなっていきました。平均年齢80歳ですって!年に一度のコンサートに向って練習を続けるコーラス隊の日常と練習風景を追ったドキュメンタリー。
悲しみは、長年の高齢の友人を亡くす悲しみはとても伝わってきますが・・・それでもひょっとしたら私たちよりも彼らくらいの年になると死は見知らぬものではないのかもしれない・・・という気がしました。
乗り越えてというよりむしろ静かに受け入れて自分は自分の道を自分のペースで、でも新しいことにもチャレンジして、難問を一つ一つクリアーしながら・・・結局はわが道を楽しく歩んでいる・・・という感じが感動的でした。他に言葉がありません。
年寄りを年寄り扱いしないで一つ上の課題を与え続ける良き指導者がいて、努力する姿勢がみずみずしくて、こんな風に死ぬまで続けたいと羨ましく思わせるほど。最後のコンサートで見せる堂々たる姿は眩しくて!最後まで自分らしく生きるコーラス隊の皆さんに拍手を送ると共に・・・憧れました。
30歳近くも年上の方の歌に、素直に励まされました。
不思議に味わい深くなった歌の数々!刑務所の慰安コンサートでの囚人たちの柔らかい表情。歌のある心でいたいものだと思わされた素敵なドキュメンタリーでした。いいドキュメンタリー映画でした。
 

夢のまにまに

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監督  木村威夫
出演  長門裕行、有馬稲子、井上芳雄、宮沢りえ、永瀬正敏、上原多香子、桃井かおり、観世榮夫、浅野忠信、小倉一郎

90歳の映画美術の巨匠の初監督作品というのが広告に歌われていました。お名前は何度も見て知っています。長い間映画界で仕事をしてきての初の映画だそうです。きっとそれだけに心の思いが詰まったやむにやまれぬ?作品なのではないかしら・・・と、思って見に行きましたが・・・微妙な気分で見終えました。館が明るくなって立ち上がった時、「なんか独りよがりの映画だったわね」という大声が聞こえて、思わずはたと手を打ちそうになりました。
そう、そんな感じです。映像は本当にきれいだったんですよ。
夫婦の日常と、夫の生徒との交流の合間に挟み込まれる過去の映像の入れ方も丁寧で。なのに挿入が妙に唐突でこちらの気持ちが付いていく前を前を?または意表を突いて?切り替わるのが落ち着かなくて。言いたいことか表現したいことが溢れてこぼれてしまったのかもしれません。その辺りが夢のまにまにという題の雰囲気を感じさせはしたのですが・・・
テーマが二つ、真っ二つに裂けてしまったようなのです。
夫婦とその過去だけでも、または病んだ生徒との交流だけでも描けるテーマになったのではないかしら?
特に過去の、戦後の映像が微妙にあいまいだったようなのが、いえ丁寧ではあったのですが・・・それだけに使い方がちょっと、惜しまれるような扁平さだったような気がするのです。
老いの強さも若さの弱さも・・・どちらも切ない、しかし表現したい人間の有り様だという気持ちは受け止められましたが。しかしあの青年の統合失調症?が青春の一様相として選ばれたのがなんだか悲しかったのです。青年とは苦しむ者だとしても・・・
井上さんは透明感があってそういう青年にぴったりでしたが・・・私は彼が歌うのを何度か聞いていますから映画の中の歌も彼自身だと分かっていたのに・・・なんですかあれ口パクに見えて妙にぎごちなかったのはなぜでしょう?不思議です。丁度映画全体がそんな違和感に侵されていたような。

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容疑者Xの献身

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監督  西谷弘
出演  福山雅治、堤真一、柴咲コウ、松雪泰子、北村一輝、ダンカン、長塚圭史、金澤美穂、益岡徹、林泰文、渡辺いっけい、真矢みき

本も読んでいるし、TVドラマも見ている。さて、映画はどの線を行くのだろう?何故かこんなに映画の予告編を見ていたのに、この映画の予告編には一度も当たらなくて(だからチラシも無い)、福山君のファンクラブに入っている友人が「今月はまずXを見るでしょ。」というので私は?な顔をしてしまいました。彼女がいなかったら今月公開だなんて気が付かなかったかも。で、最初のレディスディに出撃しました。「おくりびと」が同じ状況で満席でしたから一時間も早くチケットを買いに並びましたが・・・敵もさるもの(って、何が敵さ?)日劇PLEX948席、劇場の広さが倍でした。ちゃんと考えているのね?
映画そのものは意外なくらい危ういバランスを渡り切りましたね。
私には大学の同窓3人の男の関係の中での事件解決という意識がありましたから、TV版の内海さんのぶっちょう面+泣きっ面のうるささが、ちゃんと草薙刑事の登場で救われた感があります。
男のドラマはちゃんと男のドラマとして楽しみたいものですよ。
ワトソンやヘイスティングスが女になって御覧なさい!ね?
で、次は献身部分です。肝心の石神さんの献身が納得できるか?
ちゃんと必然性を描ききれるか?見に行く前に友人からメールで堤さんのコメントを聞いていましたが・・・「ホントお前石神ちゃうやろ」確かに!でしたが・・・そこはやはり旬の盛りの俳優さんの力技でしたね?福山さんに演技やその賞を期待する気は誰も無いでしょうが、今年の、ここのところの堤さんは本当に魅力的です。
それに松雪さん!これは彼女とも「適任かも?」と話していたとおりでした。「白鳥麗子でございま~す」で知った人ですからね。こんなに「悲」が似合う女優さんになるとは夢にも思いませんでした。「フラガール」が転機かな?「薄幸」を絵に出来る女優さんはきっと他にもいっぱいいらっしゃることでしょうが、その上に生活臭ときりりとした美しさという相容れない要素を載せることは至難です。でも映画の中の彼女は「虚」の中にいた男を活きさせるだけの魅力を見せました。納得させました。だからいい映画になったのだと思います。娘との慎ましい正しい生活が醸す音や暖かさが周りに及ぼす影響。孤独を癒すきっかけになったという自然さ。
謎解きはこの場合影が薄くなるほどでした。愛が一人の男に人を殺させましたが、その愛がまたその男を生かしもしました。そのドラマがこの俳優さん二人の演技によって見事に最終局面に具現しました。だからぐっと心に響く映画になりました。

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山桜

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時雨みち (新潮文庫) 時雨みち (新潮文庫)
藤沢 周平新潮社 1984-05
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監督  篠原哲夫
出演  田中麗奈、東山紀之、壇ふみ、篠田三郎、富司純子、村井国夫、永島暎子、高橋長英、樋浦勉
この原作は周平さんの短編の中でも印象に残っている好きな作品の一つです。周五郎さんの「婦道記」の女性に通じる健気さがあるのですが、もっと現代的な血を感じさせます。でもどれも自分の生き方を貫く女性たちの可憐さ強さを描いて秀逸な作品ばかりです。
美しくて凛としていて饒舌ではなく芯が強い雪国の柳のような女性です。
だから、これが映画化?え、大丈夫かなぁ?誰が野江さんをするの?
弥一郎は?え~この二人?そりゃないんじゃないのぉ?危ないなぁ・・・見に行くべきか?止めた方が無難!
と、まぁこういう筋道でした、頭の中では。
おまけに「地下鉄に乗って」の監督でしょう?若い!
黒土監督でも、山田洋次監督ですら、難しかったあの世界です。
しかも短編1作!ほんの短い、さぁどうしましょう?
ところがところが藤沢映画の中では多分最高の出来だったかも!
全く余計な説明が無かったのが何よりよかったです。
海坂藩の1年が映像の中で見事に再現されていました。素朴な桜の美しさも、雪、豪雪に耐えて咲く花が見事に野江さんを象徴して。私的には疑問符だらけだった東山さんの演技も、寡黙で姿の美しさのみ印象的できりっと凛と、抑えた演技に見えました。
田中さんはりえさんが演じた朋江、松さんの演じたきえさんと劣らない風情を見せました。少し幼かったかな?という気はしないでもありませんが。おっとりした愛情深い家で育った女性のつつしみも芯もちゃんと見せました。堪えられる女の強さとそれに寄る成長、その屈折を見せるにはまだ少し若いかな。
映画全体が、本当に寡黙でした。篠田さんの父も、弥一郎も全ての登場人物も。
それが本を愛読している人をがっかりさせない映画に結実したのだと、監督始め脚本を手がけた人の本に対する愛情を素直に感じられました。だからこそ母の「回り道をしているだけ」が生きました。
素直に女性を肯定する素晴らしい科白がきっちり印象的に生きました。
母3人が上手かったですね。壇さんの見せる母らしさは愛情をたっぷり湛えて優しく美しいし、闊達で生き生きした富司さんの母は弥一郎を育てた人らしい賢さを、永島さんの母は母なりにその家風の中でその時代の女性の厳しさを見せて。丁寧に本をめくるような映画化でした。
慌てて父に「見に行っても大丈夫だよー」と電話しました。

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4ヶ月、3週間と2日

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監督  クリスティアン・ムンジゥ
出演  アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ、アレクサンドル・ポトチェアン、ルミニツァ・ゲオルジウ、アディ・カラウレアヌ

一応東京では終ったようですね。見た映画はなるべく記録しておくという私のルールに則って、記しておきましょう。
見るに先立って、予告編でも、簡単な情報は手に入れていましたから、誘われなければ見なかったでしょう。
どこの国でも、特に貧困に喘ぐ人々がおり、知識の無かった時代には当然のことながら、命を掛けた堕胎は女性の歴史から除くことは出来ません。ですからそれが主題に据えられた映画を見る勇気?は余りかき集めたくは無かったのです。
でも見た結果、この映画は、ある時代のある状況下での一人の女性の人生の選択を、そしてまたその選択を遂行する行動力とその意志の源、知性を描いて秀逸なのだと思いました。そしてまたもう一人の女性の人生へのある意味無責任な楽観主義、人任せの逞しさと無知をも描き出していたと思います。
オティリアは自分で考え選び取り進むという行動様式を多分貫ける女性でしょう。だからこそ私は彼女がベベの要求を受け入れたと分かった時から彼女のその後を心配し始めました。ベベは避妊手段をちゃんともっていたでしょうか?もしかしたら、この結果彼女が妊娠することもあり得たでしょうに・・・・と。この時点で映画の世界に入り込んだのです。
それと同時にガビツァの逞しさ、なるようになる、誰かが何とかしてくれる・・・式逞しさに感服もしています。
庶民って、ある意味、女ってこういうものではないでしょうか?大抵は?
そうして彼女たちはのほほんとまではいかなくても、何とか生き抜いていくのだろうなぁ・・・そして男たちは女を真に理解することなくそれでも生きていけるんだなぁ・・・あの子供の行方、自分の行為の行方にも目をつぶったまま・・・なんてじっくり沈み込んでいたら・・・あの音楽!あれ、一体なんだったんでしょう?あの歌詞・・・あれれれれ、一体これはナンだ・・・なんだと、もっともっと考え込んだのですゥ・・・

4分間のピアニスト

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映画「4分間のピアニスト」オリジナル・サウンドトラック 映画「4分間のピアニスト」オリジナル・サウンドトラック
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監督  クリス・クラウス
出演  モニカ・ブライブトロイ、ハンナ・ヘルツシュブルング、スヴェン・ビッビッヒ、リッキー・ミューラー、ヤスミン・タバタバイ

この映画も音楽好きの友人に誘われたのです。実際予告編で見たときにはこの映像が発する「情念」と映画の音楽性が垣間見させる深い「葛藤」の世界って凄いかも・・・ってまぁ感じたのですが、に、惹かれていた私は一もニも無く「行こう!行こう!」だったのですが・・・
実際は見終わったとき二人で顔を見合わせてしまいました。
いつもだったら凄く素直に「よかったわねぇ・・・・」と映画を見終わったときに言う彼女も呆然っていう顔でした。それは合わせ鏡の様に私の気持ちを現していました。
だって、何ていったらいいのでしょう?
期待にたがわず、いえそれ以上に最後のジェニーの弾く、または叩くピアノは魅力的でした。ひょっとしたらあの呆然顔はその音楽の力によるものだったかもしれませんが・・・それはまさしく呆然たる素晴らしさでしたから。
でも、違います。
コンテストの場面は圧巻です。それだけは絶対書きたいです。ピアノ曲の素晴らしさも、それを叩くハンナの演技力も!このピアノだけがこの映画で何かを語った唯一のものだという気がします。
では何が足りないのか?
癒しようの無い孤独もいらだつ心もたけり立つ感情も納めきれない憎しみも、女なら理解できます。いえ、人なら大抵理解できるでしょう。だからこの映画が多分語ろうとした事を見に来た全ての人が共感を持って理解したいと望んでいたことでしょう。
希望、最後の奉仕、理解、受け継がれるもの・・・物語の筋書きにはすべて含まれていることは分かります。もう既に共感しようとこちらは(見るものは)待ち構えているのです。にもかかわらず私は肩透かしを食ったような、お預けを食ったような気分です。
余りにも無駄を殺ぎきって、見る人が自分の想像力と理解力を総動員して感動してくれますように・・・と、作家は期待しすぎたのではないでしょうか。それが芸術だと?見る人を買いかぶりすぎたのではないかと思えてなりません。言葉を削ぎきるなら、それに見合う背景の入念な書き込みが必要です。言葉ではなく語るものが。ヒョットすると研ぎ澄まされ削りに削った科白の翻訳が下手だったのかも知れません?ん、そうかも?そういう可能性もあるか?
映画が言いたいことがこんなにわかるような気がするのに、こんなにもどかしい映画はありませんよ・・・と、不満です。「無口」が語った映画を一寸前に見ましたよ。「グッド・シェパード」でした。多分この「4分間のピアニスト」の方がより多くの共感者を生む可能性が高かったのに・・・と、私には妙に惜しいような、高みに登り損ねたような映画でした。クリューガーが美貌だった?ことも垣間見られました。彼女の過去に起きたドラマがもう一つ分かりやすければ・・・そこも見たいのですが、見えなかったのは私のせいかなぁ?彼女のかたくなさの底も、まだそう長く生きてきたわけでもないジェニーの心の荒れ狂う底も、見えそうで見えきれないのです。それを乗り越える二人の間に流れるものが見えてこないのです。過去は、二人の気楽ではなかった過去が二人の絆になる理由がどうしても見えてこなかったのです。あの二人にそもそも分かり合える何かが存在するのでしょうか?ヒョットするとそれこそが、見えないということこそ言いたい事だったりして・・・と、疑心暗鬼です。でも多分あの4分の演奏はクリューガー先生の心にも間違いなく響いたのですよね。

やじきた道中 てれすこ

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監督  平山秀幸
出演  中村勘三郎、柄本明、小泉今日子、ラサール・石井、笑福亭松之助、淡路恵子、間寛平、笹野高史、松重豊、藤山直美

ありえない邦画三連荘の真ん中が「てれすこ」と成りました。
ま、行かれた人はてれすこの説明要らないでしょうし、行く予定の人は聞きたくないでしょうし・・・というような微妙な代物です。とりあえず金馬さんの「てれすこ」でも聞きましょうか?それからってものかもしれません。
ってーか、この場合、面白い題をつけたいからだけだったんじゃないか?って気もしないでもない代物です。最後に食べた弥次サンの幸せ感に結びついて意味を成したって感じですから、一緒に行った旦那が「今一だった、ウン今一だった!」と、繰り返したのにも頷けます。
でも、のっけの老いたおさん・茂兵衛には思いっきり笑わせてもらいました。会話の魅力ってやっぱりこんなんですよ。絶妙!
松之助さんに長谷川一夫さんを被せるとなんかにやにやしてきちゃって自分の中で笑いが完結しちゃいました。
この淡路さんと比べると明るくおきゃんで擦れてて粋のいい(筈?)のお喜乃さんの今日子さんは声のよさと思いっきりの良さで吹っ飛ばしただけって気がしてしまいます。科白で説得力に欠けたかな?男性陣二人が余りにも芸達者な科白に説得力のしっかりありすぎるほどの人でしたからね、可哀相。っていうか、小泉さんの持って生まれた愛嬌がしっかりカバーしていてくれて、かえって下手な演技上手の半端な人を持ってきたらどうにも成らなかったでしょうね・・・という感じでしょうか。
だからつまり?いい組み合わせだったんです、ハイ!
落語のあの話この話とつまみ食いして笑わせてもらって、楽しいひと時でした。デモネ、私の中では松重さん使っておいてあれだけ?っっていう気はしないでもない。何でこの俳優さんこんなに気になるようになっちゃったのかな?って不思議でもあるのだけど。好きな俳優さんもうちょっと見させてもらいたかったァ・・・旬ってあるじゃない?
道中どんどん前へ進んでいくんだから挿話一つ一つに引っかかってなんかいられない、その歩く早さが命です。それが実に上手く言っている部分で楽しませてもらえたって事でしょうね。ひと昔前のフランキーさんとかの完全娯楽総天然色っていう映画をぼんやり思い出したりしていました。でも印象に残ったのは冒頭と飲んでしまった喜多さんのとぐろ!
サービス精神は間違いなくある。そして上手に見手をくすぐる会話とそれをうまく聞かせてしまう上手さと勢いのある俳優さんがいる、楽しいじゃありませんか!と、私は思って、くくくと笑いながら帰ってきたのですけれど、多分来週にはもうこの映画のことは忘れているかも・・・
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善き人のためのソナタ

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監督  フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演  ウルリッヒ・ミューエ、セバスチャン・コッホ、マルティナ・ゲデック、ウルリッヒ・ツゥクール、トマス・ティーマ、ハンス=ウーヴェ・バウアー

老化が進んでいます。友人と渋谷まで重い腰を上げて出て行ったら、昨日までだったといわれてしまいました。こんなことがこの頃結構あります。いい評を耳にして、それなら一寸長く上映するだろうなんて思う私が甘いんですけどね。見逃して悔しいから言いますが、渋谷は大人の町ではないんですよ。行くのは気分が今一面倒臭がってなかなか・・・こんな映画は大人の銀座でして欲しいよと友人とぼやきます。捨てる神在れば・・・ギンレイがある!ありがたいことですよ。でも、ギンレイもそのときにならないとやってくれるかくれないか分からないのが難点です。でもま、見れました!

セバスチャン・コッホっていう人の顔好きなんですけど、何でかなぁ、彼の事を思うと赤ちゃんを思い出すのよね。キューピーと似ているなんて思わないのに?悪い人なんて絶対できないなんて思っちゃう。ふぅんわり甘ぁーい感じ?理想を謹厳な理想にしない柔らかな持ち味?と言うわけで今回も頷ける配役で填まっていました。知的な魅力が横溢していました。

だけど、主演のウルリッヒさんの目、見ました?初めごろのヘッドフォンをとる時、講義する時の目と最後に本を手にとって「ボクの本だ」って言う時の目!こういう人を俳優さんと言うのだろうな!
ヴィスラーの精神の軌跡が心に滲み込んで来ます。孤独で乾いて感動も無くなっていた心にしみこんでいくものが見えるようでした。すべてはウルリッヒさんの目がなす技でした。
この映画の3本柱、女優のクリスタを演じたマルチナさんも素晴らしくて、彼女の苦悩、愛も誠意も裏切りも慙愧も一人の女が背負わされるには余りに過酷なすべてを見せてくれました。
今もまだ東西真の融和の難しさが報じられる国のあの当時の東側の人々がこの3人に凝縮されてあの映画の画面に立ち上がって来ました。
知らないということは、知らないままで済ませることは罪なんだと思いました。
だって、ドライマンが「あのクリスタが死ぬまで・彼がスパイされなかったこと?」の真相を知ろうと努力しなかったら、あの「HGXxxx?」にたどり着くことは無かったし、彼自身もう作品は書けなくなっていただろうと思われたからです。
しかしそれにも増して本当の感動は、すべてを見破った上司に格下げされ日陰に落とされたヴィスラーが淡々と背筋を伸ばし日常をこなし、その目がきれいに輝きを増してそしてあの本と出会う!そこにこそありました。本を抱いた彼の目の中に浮かぶ誇りと尊厳!理解されたことへの感謝と喜び!
なんて静かに感動させる映画だったことだろう!
ソナタはただ単にあの時彼の耳に入ってきた音楽としてだけでなく、彼の知らなかった、彼が覗き見た人たちが奏でていた愛のある世界だったのかもしれないなぁ。

自殺者の多かった東ドイツ、今多い日本、北朝鮮はどうなのだろう?南北半島の壁が崩壊する時どんなことが起こるのだろう・・・見終わった後素晴らしい映画を見たと言う感動の下でジワリと未来の不安を感じました。
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ゆれる

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監督  西川美和
出演  香川照之、オダギリジョー、伊武雅刀、蟹江敬三、真木よう子、新井浩文

この映画不思議なんです。
確かにオダギリジョー演ずる弟の真っ赤なパンツ、赤い革ジャン見ているんです。
そしてちゃんとその色が焼きついているのに、思い出そうとすると映像は白黒なんです。
白黒映画を見てきたような印象が残りました。
確かに実に押さえた色合いの映画でしたが、多分白黒がこの映画のモチーフだと思ったから、映画の印象も白黒になってしまったのかも知れないなぁ・・・
兄の香川さんの顔が凄く黒くて、髭面ぼさぼさ髪で余りはっきり見えない弟の顔が凄く白くて・・・を皮切りに?今の日本で考えられるあらゆる対照が描かれたように思います。
田舎と都会、素朴と洗練、才能と平凡、女にもてるもてない、生き上手下手(要領の良さ悪さ)、お金の有る無し、親付き親無し・・・といった具合に。
その対照がご丁寧に兄弟、二代に渡って繰り返されて。
昔は長男に生まれることが全てだったのに、現代で長男に生まれることののっぴきならない重さ。
最もそれは今は都会ではもう死にかけている意識・・・でも田舎は・・・まだだろうな。
でもやはり消えかけている意識だから、伊武・蟹江兄弟では顕在化しなかったものが香川・オダギリ兄弟では顕在化してくる・・・ということだったのかなぁ。
でもどうしようもないなぁ・・・という重たい感じ?
だから映画を見終わってもしんと音なしの構え・・・劇場中が・・・と、思ったのは私の意識の問題だろうか?
男だけだったらお互いに仕方ないよな、分かっているさ・・・式に言わなくてやり過ごせたものを、良くも悪くも真木さん演じる「今の女の子(田舎はいやで、お金は必要で、だけど家族(親も子も)を作る覚悟は無い?・・・あらら、今の男の子もか!)」が挟まることで全部が見えてしまって・・・。
我慢していない者にとってはなんてことも無いことが、我慢してきた者にはここで我慢の糸が切れるって言う飽和の時が来るものだということかしら?
糸を切っておいて、奪えるものを奪っておいて、「僕の知っていた本当のお兄ちゃんになって欲しい・・・」なんてほざく弟、柵を柵と感じない無神経な都会人に、自分を投影してしまってがっくり私自身が重くなってしまった。
それにしてもお兄ちゃんの服役中の弟のこざっぱり感が解せないなぁ。正直に言っちゃったからすっきりした?正直なら何言ってもいいってことはないでしょ!
そして最後の弟の呼びかけに気が付いていたんだよね?お兄ちゃん。
あのかすかな笑みは・・・全部を見切ったと言う感じ?過去も人生も家族も故郷も・・・全ての抑制を・・・切った?
香川さんて表現する人だなぁ・・・って、凄いわ。
私まじめだから、恨んじゃうわ。一生懸命解釈しようとしちゃうじゃないの、香川さん。
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