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監督  木村威夫
出演  長門裕行、有馬稲子、井上芳雄、宮沢りえ、永瀬正敏、上原多香子、桃井かおり、観世榮夫、浅野忠信、小倉一郎

90歳の映画美術の巨匠の初監督作品というのが広告に歌われていました。お名前は何度も見て知っています。長い間映画界で仕事をしてきての初の映画だそうです。きっとそれだけに心の思いが詰まったやむにやまれぬ?作品なのではないかしら・・・と、思って見に行きましたが・・・微妙な気分で見終えました。館が明るくなって立ち上がった時、「なんか独りよがりの映画だったわね」という大声が聞こえて、思わずはたと手を打ちそうになりました。
そう、そんな感じです。映像は本当にきれいだったんですよ。
夫婦の日常と、夫の生徒との交流の合間に挟み込まれる過去の映像の入れ方も丁寧で。なのに挿入が妙に唐突でこちらの気持ちが付いていく前を前を?または意表を突いて?切り替わるのが落ち着かなくて。言いたいことか表現したいことが溢れてこぼれてしまったのかもしれません。その辺りが夢のまにまにという題の雰囲気を感じさせはしたのですが・・・
テーマが二つ、真っ二つに裂けてしまったようなのです。
夫婦とその過去だけでも、または病んだ生徒との交流だけでも描けるテーマになったのではないかしら?
特に過去の、戦後の映像が微妙にあいまいだったようなのが、いえ丁寧ではあったのですが・・・それだけに使い方がちょっと、惜しまれるような扁平さだったような気がするのです。
老いの強さも若さの弱さも・・・どちらも切ない、しかし表現したい人間の有り様だという気持ちは受け止められましたが。しかしあの青年の統合失調症?が青春の一様相として選ばれたのがなんだか悲しかったのです。青年とは苦しむ者だとしても・・・
井上さんは透明感があってそういう青年にぴったりでしたが・・・私は彼が歌うのを何度か聞いていますから映画の中の歌も彼自身だと分かっていたのに・・・なんですかあれ口パクに見えて妙にぎごちなかったのはなぜでしょう?不思議です。丁度映画全体がそんな違和感に侵されていたような。

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