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終着駅―トルストイ最後の旅 (新潮文庫) 終着駅―トルストイ最後の旅 (新潮文庫)
ジェイ パリーニ Jay Parini新潮社 2010-07-28
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監督  マイケル・ホフマン
出演  クリストファー・プラマー、ヘレン・ミレン、ジェームズ・マカボイ、ポール・ジアマッティ、アンヌ=マリー・ダフ、ケリー・ゴードン、パトリック・ケネディ

私は若いときにトルストイを一応?読んだ世代だから・・・かなり迷った末に見に行ったのだが・・・科白の最初を聞いた時、「ああ、これはトルストイの映画だと思わなくていいんだ」と思った。見事な?英語に思いっきり(当然分かっていたはずなのに)肩の力が抜けた。
トルストイの妻がどういう言われ方をされていたかも、この映画では関係は無い。ただ50年余り共に暮らしてきたある夫婦の晩年を描いた作品だった・・・ということだ。
功成り名遂げて、その盛名を慕うたくさんの弟子や思想家や理想家に取り囲まれて、もうただの夫ではいられなくなった男と、ただの自分の男である夫をひたむきに手繰り寄せようとした妻の物語だ。
老いて、妻と思想の間で揺れながら、わずらわしさに対処する能力も根気も無くなってうろうろ苛々する夫が少々戯画じみて見えないことも無い。 
対して妻は現実を背負っている。夫を愛してもいるし、自分が尽くしてきた上にある夫の資産は13人もの子供を産んだ自分と残っているその子供たちのものであるはずだ。 夫がその遺産をどう残すか? それが彼女にとっては夫の誠意と愛を測る唯一のものに思えている。だから彼女はなりふり構わない。  
ところが夫は有名になった余り報道陣を始め賛美者に取り囲まれていて、彼女の姿は彼らには偶像を引き摺り下ろす惨めな欲張りにしか見えない。哀れなことに父をあがめる娘にすらも母は愚かな女として遠ざけられる。これら他者が入り込むことによって溝は傷は決定的に広げられる。 夫婦はもう単なる夫婦ではありえなくなる。 
それをその両者の姿を当分に優しく見る若者の目から描くことによって、見る私は永遠の戯画のように両者を俯瞰することが出来た。哀れな! しかし面白い視点だと思った。若い彼らの素直な愛の形と対応して。 夫婦のことは夫婦にしか分からないが、その夫婦であってもお互いは永遠に解らない。 だから夫婦でいられたりもするのだけど。 夫婦って苦い!                                                                     
映画では理想のために民衆に贈られたはずの著作権は、妻ソフィアに贈られたと最後に字幕で出たが・・・あれは? 終着駅でトルストイは最後の遺言を妻のために書いたのだろうか?
(2010・10・14)