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監督  ダーレン・アロノフスキー

出演  ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー

 


息を忘れて映画館の椅子に張り付いてのど元を抑えて見ていたかも…終わったときぶるっと体を震わせてやっと息が吸えたような…。 一言でいえば、もう怖かった!だろうな。      足のつま先や、指の先、彼女の顔そのものも…どんどん痛々しくなっていくし…全身が焦燥に焼かれていくのが…こちらに迫って来る。    それが異常だ…異常過ぎる…危ない危うい…手に汗握って…ただただ狂気が覆ってくるのをただじっと見ている感じ。    女性が自分を解放するには…そうなの?この道を通らなくちゃならないの? 関門が3つ、母、あこがれの先輩、ライバル。 そのどれも…普通じゃなく手ごわいのだから。 母に逆らったこともそれまでなく、先輩を追い越す時をねらい澄ましていたわけでもなく、突然にライバルが出現するとも思っていず、それなのに自分にないものをおぼろげに察していたニナ! 野心を持つと、心の中に忍び込んでくるもの、隙をうかがうもの、心も体も犯してくるもの…に無防備になるのかしら?     最後のチャンスに自分を解放しなくちゃと必死になり…自分が押し殺してきたかもしれないものを心の深奥から引きずり出さなくてはならないと足掻き…結果自分を失っていくように見えるニナ。                                               いい役柄で見たことのないヴァンサンのルロイの冷徹で非情な多分エゴイスティックな指導?に追いつめられて…指導者というものの素晴らしいあり方が引き出す才能とその麗しい果実とは全く違うような…血まみれのザクロのようにぱっくりと切り裂かれた果実を差し出すことになってしまったニナ。それが絶賛されようとも…私は身震いが出る。               見ていて怖くなったのは…彼女が追い詰められて狂気に覆われていくからではなくて、ひょっとしたら自分を解放したことのない私の覆われた心が殺気を感じたからかも?    悲劇だけど、たぶん一生に一度の大成功に本人は満足の極みにあるのかもしれないけれど…あの笑み。  そう思うことで、その1回で終わったことで…安心したいような…後ろ向きの気分です。