「コリン・ファース」
彼の目は多分黒、いや絶対黒でしょう。
「憂鬱な黒」が似合う人です。
初めて彼の名前を知ったのはTVドラマでした。
何年か前の正月にNHKで放映した「海外ドラマ」の「高慢と偏見」でです。
ジェーン・オースチンの小説は「エマ」と「高慢と偏見」を学生時代読んでいましたから、
「この英国小説を英国ドラマとして見られるとはなんという楽しみ!」と喜んで見ました。
期待にたがわず丁寧に原作を大事にした脚本に俳優さんのイメージも見事に合致して、私にとって大満足のTVドラマでした。
何よりミスター・チャールズ・ダーシーを演じた俳優にはころっと参りましたね。
私の頭の中のイメージをそのまま実現したみたいに、馴染んだ手袋のように、ぴたっと填まりました。
「誰だろ?この俳優は?」・・・それが「コリン・ファース」でした。
ミスター・ダーシーが高慢をへし折られて、苦々しくもどこか自信無げに悔しげに恋を告白するところなんか出色でした!
高慢で陰鬱だった黒い目が憂鬱な悩める黒い眼になっていました。
こんな誇り高い男に恋を告白された女の凱歌、歌ってみたいものですねぇ。
その偉そうな告白をまたぺシャッと潰されて、本当の恋がその苦痛の中から生まれたのは
「その人柄の奥底に秘められていた高潔で誠実な人柄があったから!」
だという事を見るものに分からせてくれる力を秘めたしっかりした目でしたね。
この人の映画見たいなぁと思うこと数年。
やっと巡りあいました。
「恋に落ちたシェークスピア」1998年で。
まさか!と、意外なキャスティングでした。
あのミスター・ダーシーがシェイクスピア(ジョセフ・ファインス)と恋に落ちるヴァイオラ(ヴィネス・パストロウ)の無理やり結婚させられる喜劇的な笑える貴族になっていたのですから。
しかしこれはこれで凄いんですよ。
欲とコケにされた激しい怒りに狂った目をぎらぎらと見せて、この貴族を存在感あるものにしていましたね。
最近の彼は「ブリジット・ジョーンズの日記」2001年、
「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」2004年のマーク・ダーシーで知られていますが。
この作品の中でのマーク・ダーシーという名前、「高慢と偏見」のダーシーから来たんでしょうかね?
トナカイ柄でしたっけ?凄いセーターで出てきた時の彼の顔は忘れられませんよ。
ミスター・ダーシーがガラガラと崩れていったんですから。
作品が面白かったから許せますが、実力が認められ人気が出てくると、沢山の作品を見られるという喜びとともに、こういう悲劇?も生まれます。
ま、どっちにしても彼の名前を見つけると直ぐ映画館へ行ってしまう私なんですけれど。
だから「真珠の耳飾の少女」の陰気な苦悩のあるフェルメールの役は私にとって彼向きでした。
絵の対象として少女を見る激しい目の中に複雑なものを秘めて、そこに彼の本領が伺えたような気がしたからです。
でも、願わくばいつか彼のロチェスターを見たいものだと思っています。
「ジェーン・エア」の苦悩と激情を秘めたあの悲劇の意志の男です。
彼を演じられる目をコリン・ファースは持っていますよ!