監督 ケイ・ポラック
出演 ミカエル・ニュクビスト フリーダ・ハレグレン
ヘレン・ヒョホルム レナート・ヤーケル ニコラス・ファルク

私はこの映画を見て帰ってきてから、毎日ボイストレーニングをしています。
そういうと凄いみたいでしょ?
でも、ただ家で、窓を閉め切って、彼らがしていたように自由に自分の声を出しているだけです。
そして良ぉく声を出したら懐かしい童謡などを一節、仕上げに歌います。
これが結構いいストレス解消?になっています。
が、それ以上に映画を心の中で反芻して、感動を確かめているということでしょう。
この映画の物語に感動したことはもう最上の感動をしましたけれど、それ以上にひょとすると私は声を出すことの楽しさ、気持ちよさに目覚めちゃったのかもしれません。
それぞれに生活の中で色々な問題や屈託や葛藤を持っていたり、それぞれの道徳観に縛られていたりする様々な村人が、床の上に寝転んで人のお腹の上に頭を乗せて発声しているところなんか、愉快でもあり、また象徴的でもあると思われました。
腹の中、聞いてみたいものですよ。
お互いが腹の中をぶちまけると取り返しの付かないことになるのじゃないかと言う気がしますけれど、意外に道が開けることもありますしね。
同じ村でずっとーお互いの生活を見尽くしてきた人々ですもの、結末の心地よさに素直に流れ込んでいく素地が自然です。
結末では、折角思いが通じた村の雑貨屋でレジをしていたレナの、この後の悲しみまで想像してしまって、涙が止まらなかったのです。
でも命と引き換えに幼い頃の夢を実現した主人公の指揮者には「良かったわね!」と声を掛けるほか無いでしょうね。
本当に「ヨカッタ!良かった!」って、声を大にして。
彼にとっては「これで人生は完璧に近く満足のいくものになった!」と感じさせる表情を彼は見せましたから。
それにしてもレナの素朴で直接的な求愛(ちょっと古い言葉ですが)は可愛らしかったですね。
ぽっちゃりとした白い肌のように体中に優しい母性的な愛が満ち満ちていました。
それに引き換え人間関係に子どもの頃ににつまずいたままの主人公のダニエルが心を開くまでのおぼつかない戸惑いの連続はちょっとひ弱で見る女性すべての母性をくすぐったのでは無いでしょうか。
聖歌隊のヘレン・ヒョホルムの演じる夫の暴力に耐える妻が、歌に癒され勇気を得ていく過程も、それを引き出していくダニエルの書いた曲も素晴らしかったです。
スェーデンの厳しい冬の大地の中にも優しく春が芽生えてくるように、心の中にも暖かいものが芽生えてくるようなそんな映画でした。