花よりもなほ
映画タイトルINDEX : ハ行 6月 13th, 2006監督 是枝裕和
出演 岡田准一 宮沢りえ 古田新太 浅野忠信 香川照之
田畑智子 原田芳雄 加瀬亮
実に充実した濃い映画を見ちゃった!
満足!満足!と、心の中でつぶやきながら席を立った。
これだけの映画見せていただけば十二分に元が取れた?いやそれ以上ですよ。有り難や!
出演の項に長屋の全員の名を連ねて書くべきですよ。ええ、そうですとも!
本当言うと途中長い映画に思えたんです。
って、中だるみしたと言うことではないんですよ。
余りに長屋の住人がしっかり書き込まれていたんです。
一人一人の個性や匂いまで伝わってくるような。
長屋しぐさとでもいいますか、狭くて汚くて思いっきり肩寄せあっている住人たちが、それぞれを馴れ合いながらも底の方でそれぞれの抱えるその阿呆さ加減も悲しさ加減も辛さ加減も尊重して受け入れあっている、認め合っているとでも言いますかね?
その描きようが余りに見事で、反対に途中で心配になってきちゃったんです。
監督はこれを一体どう収めるんだろう?
すべてのこの愛すべき人たちをどうしてくれるんだ?って、本気で
心配になっちゃって。
仇の金沢十兵衛親子どうする気よ?
一年に一回腹切る香川さんの浪人の人生って何を抱えているの?
やくざの袖吉には何があるの?
おさえ親子の仇は?
その日暮らしの面白いけれど見てると悲しくなる住人たちは長屋を追われたら・・・?
第一この情けない長屋の隅で膝を抱えてる主人公どうしてくれるのよ・・・?何とかしてやってよ、お願い!みたいな。
赤穂浪人さんの方は想像が付いていたから・・・まぁね。
っていう具合に完全感情移入。
だから濃くって重くって、時々くすくす笑いながらも、彼らの逞しさも愛しく・・・結末が出るまでが長~く感じられたと言うわけです。
でも素晴らしかったのがここからでした。
実に見事な畳み込み方でした。
収束に向かっていく収斂のスピード感と省略の上手さ!
この省略って手抜きの省略ではありません。
科白と絵面のコラボレーションとでも言いますか?
上手に見る人の想像力をフル活用する仕方とでもいいますか!
その上に赤穂浪士の討ち入りの見事な常識の裏切り方のおまけ付き。
これ、ありですよ!
書きませんけれどね、浪士の討ち入りに急ぐ場面に懸かる「一言」!
貞四郎の討ち入りの感想!
意表を突かれましたけど、頷いちゃいますもんね。
(そして寺坂吉衛門さん、息子にわらじ作り教えられるのねぇ。)
この映画の「主題」がくっきりと浮かび上がって、宗佐さんの大写しの笑顔と共に満足の吐息!となったわけであります。
出演していたすべての俳優さんがこれだけ一人一人が見事に思えた映画ってそうそうは無いですよ。
業突く張りの大家でさえもね?
いやぁ、実に秀逸な長屋セット付きの極・極上等な落語でした!
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