監督 塙幸成
出演 宮崎あおい 小出恵介 宮崎将 小嶺麗奈 藤村俊二

この映画は前もって知識が全く無かったので、チケットを頂かなければ、見損なうところでした。
かの「3億円事件」を土台に据えているところ、つまりあの時代は私の青春期だったので、様々に挿入されるあの時代の映像を懐かしく見ました。
だいたいあの事件は随分沢山様々なメディアで取り上げられていますから、解決されなかった事件だけに許されて?色々な解釈が可能ですが、この脚本には意表を衝かれました。
作家になれる人の想像力の翼って本当に凄いですね?

話は変わりますが、先だって父が「NHKの朝ドラ見ているかい?」
「その時間はドラマ見る暇無いので朝ドラってあんまり見ること無いんだわ。」
「そうかい、別にどうっということは無いんだが、今度主演している女の子なぁ、宮崎あおいとかいう名だったと思うが、久しぶりに本当に可愛い子でね、気持ちよく見ているんだ。いい女優さんに成長してくれればいいなぁと思ったんでね。」と言ったのです。
その宮崎さんが主演でした。
いい女優さんになるんじゃないかなぁと私は思いました。
彼女の孤独感、所在の無い切なさがよおく分かりました。
ジャズ喫茶の入り口に佇む姿に乾いたいじらしさがありました。
乾いたと書いたのはじーんと来る涙を誘うような感じとは一線を画すようなむなしさがあったからです。

あの時代の空気は知っているつもりですが、私は蚊帳の外でしたから・・・何も行動しなかったからで、クラスでクラスメートと安保で激論を交し合ったりはしましたから・・・ただあの映画の中の青年たちが醸すような空気は縁が無かったと言うことですが、
それだからかこの物語には「ありだなぁ」と言う部分・理解できる部分を持てないままに見終わってしまいました。
ただ、みすずの初恋の情緒は普遍的な悲しみが漂っていてあの頃の私の心のあった場所を思い起こされました。
しかし殆どの出演者がよく言えば初々しいからでしょうか、せりふが聞き取り難いので困りました。
口跡がいいとか悪いとか言いますが、それ以前かもしれません。
会話の中身が中身ですからあれは「狙い」なんでしょうか?
でも作品としては不親切です。
どんなボソッとした一言も聞くものの耳に届かなくては、意味が無いでしょう。
囁くような一言、つぶやくような一言を客の耳に届けて役者は「何ぼ!」と思うのですが、皆さんまだ途上ですからね?
唯一藤村俊二さんが助け!でしたよ。あの小柄な方の声がしっかり耳にも心にも気持ちよく届くんですからね。