監督  佐々部清
出演  市川海老蔵、伊勢谷夕介、塩谷瞬、柏原収史、伊崎充則、
香川照之、上野樹里

7・8月体調を崩して家にこもっていた父が墓参りに上京してきた。
好きな映画も見ず、買物も散歩も極力控えていたからか、涼しくなったからか、体力を取り戻したと・・・それでも一回り小さくなって。
何もせずに家でおとなしくしていた間、横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」と「出口のない海」を読んでいたからと、墓参りがすんでからこの映画を見に行った。
私の苦手のジャンルはオカルトとリアル日本戦争映画。
史実に基づいた・・・というヤツだ。これは辛い!
しかしこの映画は不思議なことに今まで日本の戦争映画で抱かされたいやらしさが全く無かった。
陸軍を描いた映画では無かったからかもしれない。
いじめの為のいじめ、卑劣なだけの卑劣、そんな物は皆無だったからだ。
海軍は同船同夢・一蓮托生の家族的?世界だからか?
でもしかし・・・それだけにこれでは戦争の悲劇がヒーロー化しないだろうか?と不安にも思ってしまった。
何しろここに出てくる青年たちはさわやかで好感が持てて、親だったらこんな、息子を持ちたいと思う青年ばっかりだったのだから。
一寸ひねたランナー北君ですら真摯な青年であるし。
主人公の並木君はもとより、塩谷君(この人の顔本当にいい感じ!)演じる整備工君や伊崎君演じる童顔君、母似の鏡青年君、「心配したぞ!」と言って唯一鉄拳を振るった高橋君演じる教官にいたるまで、皆共感の持てる日本が誇れる?青年たちだったのだから。
こんな戦争映画作ってしまっていいんだろうかという私の不安、分かってください。
彼らは本当に死を恐れているのに、誰一人戦争への疑問・反発・憤りを表現しない、悲しみはあるけれどね。
並木君の父に至っては・・・あの諦観と平常心とあの科白「イギリス人?の何とかさん、いい人だったなぁ・・・。」はどうでしょう。
その科白が並木君の最後を左右したんでしょう・・・と、思うと、やっぱりおちおち親は出来ません。ある意味凄い親ですよ、行動で示せないことは言わないんですね。
時代に素直に育った青年たちというのは考え物だ・・・不味いんじゃないかなぁ・・・困ったもんだ・・・いい子たちだなぁ・・・の堂々巡りに落ちた私です。
やっぱりあんな子供たちをむざむざ殺す国なんて・・・自分の子の事を思うに付け安倍さんでいいのかなぁ・・・きな臭いなぁ・・・あの人本当は戦争どう思っているんでしょうね?・・・鵺みたいな答弁だし・・・と、不安が募る私でもありました。
美しい国は美しい青年たちが居てこそなんだからね!と、釘を刺したい私でもあります。
美しい青年って、素直なだけの青年ではないですからね!
とにかく、この立派に育った青年たちを生かせる国にしたい!
彼らがしたい事をして生きてゆける国であって欲しい!
という意味で、この映画も反戦・非戦の気持ちを一層強くしてくれましたし、目指せ八方美人の国?外交が全てよ!と、思いました。
ま、それはともかく、見終わって何か違和感が・・・と、ズーット考えていたのですが、分かりましたよ。
海老蔵さんです。一生懸命に演じていて、演技力にも不足は無いのになんかそぐわないって感じ・・・他の青年群と並ばないのです。
「主人公だからだろ。」って?うーん?
いえいえ、単に彼の大きすぎる立派な顔と目のせいじゃないかなぁ・・・っていう気がするのですけれど。
反対に彼だけがあの時代の顔をしていて、他の青年たちが現代の顔過ぎるのかも・・・。
海老蔵さん、別に「睨んで」くれたわけでもないのですけれどね。
香川さん、ここでも存在感有りましたね。無くてはならない俳優さんになりそうです。
でも、便利に使える何でも出来る一寸出る俳優さんにはならないでね・・・。