監督 篠原哲夫
出演 堤真一、岡本綾、大沢たかお、常盤貴子、田中泯、吉行和子

原作を知っている作品の映画化はいつも葛藤を引き起こしますね。
でも、やっぱり見ちゃうんだなぁ。
さてと、何が一番違ったでしょう?
見終わって一番に思ったのは「女」というものをどう思っているの?でした。
男に優しいものを描くと女は割りを喰わなくちゃならないの?
3人、いや4人の女性・・・本当に幸せだったのは誰でしょう?
いえ、一番可哀相だったのは誰でしょう?と問いますか。
吉行さんの演じた主人公の母?
愛した人には戦死されて、お腹に残された子供には自殺されて、大成功した(成り上がった?)夫には虐待されて別れ、冴えない次男と暮している上に多分その息子の不倫にも気が付いているから一緒に暮している嫁には後ろめたい。
常盤さん演じるみちこの母?
愛して戦後一緒に生きぬいた人には妻子がいて、とうとう一緒に暮すことも無く世話されることも無く、意地を貫いてひとりで生き抜き、子供も結局は流産してしまう。
岡本さん演じるみちこ?
生きている時は愛人で、好きになった男は腹違いの兄で、その兄のために自分の存在を抹殺しようと決意しなければならなかった?
長谷部の妻?
夫の愛人の存在も知らず、姑と狭い団地で同居して、パートで家計を遣り繰りして夫の留守がちの家庭を支えている。
映画の始まりから終りまで沢山のタイムトリップがあって、過去が凝り固まった愛憎を解きほぐしていく形になっているのにこの女たちは物語から置き去りにされたままだったような・・・
勿論みちこさんは余りにも哀れな存在に描かれているけれど・・・勝手に男の守護天使なんかにされては叶わないわねぇ、みちこさん!
岡本綾さんが本当に消え入る風情の女性を好演していたからなお更。
好演といえば常盤さん、蓮っ葉な粋ないなせなお姉さん堂に入ってたわ。
主人公が優しい弟に自分の厭なもの?を押し付けっぱなしで勝手に生きてきた男と見えてしまったのは映像の力だろうか。
本で読んでいる分には彼の事を理解できたような気がして「よかったね・・・」とでも言ってあげたくなるくらいだったのに、みちこと抱き合う生の姿を見てしまうと、こんないい加減な男に「過去を知る」という恩寵がどうして与えられたのか?とすら思ってしまう。
勿体無いじゃない!もっとそれに値する人が他に幾らでもいるでしょうに、何で彼なのよ・・・ってね。
そこで「ああそうか、恩寵が与えられたのは戦中子供を助けた、良かれ悪しかれ一生懸命生き抜いた父親にだったのか!」って思ったりして。いや、でも女に手を挙げる男なんだぞ!
だけどやっぱり、みち子さんにとっては冗談じゃないわよ、こんな「真実」見せられてこんな選択させられて・・・。あんな男たちのためによ?
本でオブラートに包まれていたものが脚本に整理されたら男の童話の我が儘さがそそけたってしまったという印象なのだ。
だけど過去を振り返る、過去を見る、過去に浸るというのは確かにちょっとしたカタルシス!思い出は絶対に甘い!許しはもっとイケル!
その点でこの映画を好きだという人も多いだろうな・・・とも、思うけれど、同じ「懐かしいなぁ!」でも「3丁目の夕日」との決定的な違いは真底を流れる暖かさに無垢なもの有るか無いか、傷つく人がいるかいないか、かもしれないなぁ。