監督  アン・リー
出演  ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、ミシェル・ウィリアムス、アン・ハサウェー、

時代を背負った悲しい恋物語でした。深ぁーいため息が漏れます。
この映画は見損なった事をとても悔やんでいた映画の一つです。
友達は誰もうんと言わなかったし、「ゲイ」のイメージが先行したので一人で行くのをためらったのです。
見終わって何もためらうことなど無かったのだと思いました。
素晴らしい映画でした。
先日豊洲ユナイテッド・シネマの「2006年心に残った映画アンコール上映」という広告を見つけました。ラインアップを見ると、まさに私が見落として残念!という映画と見て良かった!と思った映画が・・・。だから?今月は忙しい!「クラッシュ」も「ホテル・ルワンダ」も「間宮兄弟」も見たいしね。
それはさておき、素晴らしい映画でした。アンコール?アンコールです、心から。
美しい映画でした。勿論景色もですが愛もです。
ブロークバック・マウンテンという山が本当にあるのかどうか知りませんが、心を充たしたのはあの美しさも、厳しさも背負った大自然でした。彼らの心の充足はあの自然の中を置いて他には無かったのです。彼らの愛を象徴したのがあの厳しい自然です。
あの愛情は確かに愛情でしたから、切なくて可哀相でいとおしくて・・・なんていう恥ずかしいような言葉をためらわずに費やしたいと思います。
あの夏、彼らが見せていたのは子供のような素直で可愛いじゃれあいでしたよ。孤独だった心が通じ合って、通じ合った人を愛するのは自然のことですもの。
何時までも大人に成れない子供どうしの愛着のような始まりだったのに、地上に、世間に降りると本当の普通の愛情だと言えなくなる悲しさ。
イニスの心を縛ったものは父親が埋め込んだ偏見と元々決めていた自分の決断(結婚して、家庭を築く)を貫き通すのが男だと言う信念、時代の常識だったのでしょうか?
そしてジャックを縛ったのは愛するイニスの決断を尊重する愛そのものだったのでしょうね?長い距離を飛び越えてイニスの元に急ぐジャックの素直さが可愛くてたまりません。
だからイニスは耐え忍び、ジャックはそのイニスにじれて・・・心模様がこんなにも静かに表現されれば、見る私にも否応も無く静かにこの愛情の沈潜していく悲しみが迫ってきます。
ジャックが語る夢が切ないですね。本当にそうできたらどんなにか良かったのに・・・と思い続けています。
4年ぶりに会った瞬間の彼らの姿を涙無しでは見られなかったのです。どんな恋人たちがめぐり逢う場面より感動的でした。耐え忍んでいた愛情のほとばしるその深さに押し流されてしまいました。
山々の美しい景色の下、アメリカの貧しい田舎の風景の下、二人の日常は流れて歳月がめぐっても決して隠してきた愛情は薄らがず、辛さ寂しさばかり募り来るのです・・・そしてあのラストです。悲しみより他に何か感じられますか?生きている間に一生の愛を誓い合える時がくればどんなにか・・・と思い、可哀相でなりません。ジャックを失った後もイニスは行き続けなければならない・・・愛する人が居る人には必ず来る時ですが・・・のですもの、あの土地で。二人の灰を合わせてブロークバック・マウンテンに撒いてあげたい。
けれど、一方で彼らと結婚した女性たちの事をも思わずにはいられません。彼女たちの愛もどうにもならず悲しいのですから。
一つの宿命の恋があると周りの恋もドミノ倒しのように倒れていって悲しさだけが降り積もる・・・そう思うと厳しい映画でもありました。
若々しかった彼らには初々しい魅力の味わいが、20年を苦しんだ彼らにも魅力的な人としての味わいがありました。
ジェイクではありませんからねと自分に断って、私はジャックの切ない瞳の美しさに、きっと暫くおぼれこむことでしょう。