監督  テリー・ジョージ
出演  ドン・チードル、ソフィー・オコネド、ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックス、カーラ・セイモア、デズモンド・デュベ、ジャン・レノ

札幌から東京に転勤してきた頃ですから、もう6・7年前になりますか、久しぶりに朝日新聞を採り始めた時に連載していたのが曽野綾子さんのツチ族とフツ族の物語でした。
途中から読んだので全体像はわからなかったもののルワンダの惨状に読んでいてひるみました。
途中から読んでしまったので、普通なら本になったら読むところですが、この小説はどうやら「辛すぎる」という部類に入りそうだから読むのはやめよう・・・と、思ったのです。
大体それは私らしくない行き方です。読み始めた物はつまらなくても読みきる、何かで途中を知ってしまった物は必ず読みきると言うのが私の仕方です。
でも、この主人公の行き先は新聞では完結しませんでしたから、読んだとしても・・・読んだだけのところから想像しても・・・辛さが勝つだけのような気がして・・・悪い夢に落ちるだけのような気がしたのです。
それでもルワンダの虐殺の歴史は事実として私の頭の中に残って滓のようにあったようです。だからこの映画も躊躇いました。曽野さんの小説を読みきらなかったのだから、これも見るのはちょっと?という気持ちでしたろうか?
それでも気持ちに残っていると情報はやってくるものです。
ルワンダのことは何もできないと思いつつも知らないで済ませるよりは知って何もできない自分を確認した方がいいのかもしれない・・・と言う気持ちでした。そこにこのアンコール上映でした。他にもルワンダの映画が来るようですね。
日本もアジアの侵略者だった過去があるのですから言えた義理じゃありませんが、ヨーロッパの国々ってなんて事をしたんでしょうね?そしてしているのでしょうね?です!
日本が開国させられた時、イギリスはアヘン戦争で中国を侵していた頃でしたよ。あれが日本が世界に生きることのお手本になったんだ・・・なんてほんの言い訳に過ぎませんが・・・でも、そういい訳したくなりますよ。恥ずかしいことだから。でも恥ずかしいことに言い訳を重ねるほど恥ずかしいことはありません。
でも、でも、でも・・・です・・・
ヨーロッパがアフリカにしたことは人類史上最悪に近いことじゃありませんか?
ツチとフツという分類も、アフリカの直線を多用した国境線も、世界中に散らばった黒人も、アフリカに蔓延する病気も貧困も皆ヨーロッパ列強の仕業です。アフターケアは義務でしょう!と座席で情けない気持ちで憤然としながら、一方でそんな世界を上手に生きていく知性があることに感嘆もしていました。
主人公の機転、といっていいのですかね?は凄いですよ。生きていく理性に満ち満ちてしたたかで逞しくて!人ってなんて素晴らしい賜物をも一方で付与されているのでしょう!
家族を守りきることに徹したその理性と機転が結局多くの人を救ったわけですが。
紛争のある世界の中で穏健派で暮すことの怖さも知りました。
私たちは普通に穏健な政治理念を持って暮せているというだけで、なんと恵まれた社会に暮せているのかって事です。
怒りと憎悪の中で暮していると爆発した時にまず血祭りに上げられるのはどっちのグループでも穏健派です。それだけそれまで怒りや憎悪から逃れて暮せていたということなのでしょう。それだけに、虐げられた人またはその憎悪に便乗する人にとってはけ口になってしまうのでしょう。
現場から逃げ出した人々やカメラマン(ホアキン・フェニックス演じた)でなくとも、紛争地以外で安穏に暮している全ての人が「恥ずかしい」と思うでしょう。ホテルマンのポールが成し遂げたことに感嘆し賞賛する前に、国連平和維持軍(ニック・ノルティが演じて代表した)の現状に絶望する前に、本当にただ生きていることが恥ずかしいと思う映画でした。