手紙
映画タイトルINDEX : タ行 3月 19th, 2007監督 生野慈朗
出演 山田孝男、玉山鉄二、沢尻エリカ、尾上寛之、吹石一恵、杉浦直樹、田中要次、石井苗子、吹越満
予告編では何回も見ながら、泣かせ映画っぽくて?見る気は全然なかったのに「紙屋悦子の青春」とニ本立てだったのでつい?見てしまいました。そして予想以上の収穫で、驚き、儲け物をしました。
登場人物が全員非常にバランスよい落ち着いたハーモニーを奏でているような映画でした。
正直な構成で整った姿の映画という感じですか。
勿論これは映画を見てからの総合的な感想です。
物語はハーモニーなんていうような物では全くなくて、過酷な青春の物語でしたから。
主人公の苦闘の歴史と言っていいでしょう。それだけに山田さんの好演が光ってたように思いますが、勝手な私は玉山さんは佐多啓二を思わせる久しぶりの二枚目登場?かとちょっとわくわく。もっともそういう私は玉木何とかという俳優さんと区別が付いていなかった若手音痴なのですが。
彼が兄の殺人と言う事件のあおりを食って投ぜられた状況は、いかにその犯罪が弟のために切羽詰った兄の弟ゆえの犯罪だとしても過酷なものでした。
実際社会と言うのはそんなものなのではないかな・・・と思いますし、私自身婚約した女性のお父さんのような行動を取らないという自信はありませんもの。
殺人を犯してしまった、それがどんなに気の毒な思いがけない成り行きからのではあっても、その兄が服役を終えて帰ってきてからの事を考えないわけにはいきませんものね。その点は実際杉浦さんが言った通りです。大人の説得力のある人格者が言うとやっぱり心にしみこみ方が違う・・・なんて素直に感心してしまった私です。
だからそれが彼の心にも穏やかに浸透したのでしょうね、諦念と共に。それまでに萌していた無念な諦念にここで始めて彼は向き合ったのですけれど・・・受け入れたと言うことが又気の毒で・・・可哀相で。
兄はどんなに後悔しても、それが胸を噛んで、弟を思いやっていてもたっても居られない気持ちに追いかけられていたとしても、社会の仕業は兄の所へはやってこないのですね。
兄はやるせなく座しているのですが、その姿は哀れで・・・罪を犯してはならないとつくづく思わせられる姿勢ですが、生活して、自力で生きていかなければならない弟に容赦なく社会の荒波が襲い掛かります。アパートの落書き、職場への垂れ込み・・・不条理です。不条理極まりないのです・・・犯罪者の兄弟を受け入れられるかと問われれば二の足を踏む私でも積極的にあんなことは出来ません。
被害者そのものもそんな事をするゆとりはないでしょう?それをする人たちが居ると言う事実も胸を噛みますが、でもあり得ることだと一方では納得もします。それが社会かも知れませんと。
だからこそこの映画の沢尻さん演じる彼女には驚かされますね。本当にこんなに強い可愛い女性が居る確率って、巡り会う確率ってどのくらいだろう・・・なんてつい考えたりしてしまって。
「君ってホント人間と言う者を信じていないんだね?」なんて自分に突っ込んだり。
だから彼女の存在が出来すぎだよ・・・って思っていたのに、なんと最後で泣けました。
吹き越しさんの演じる被害者の息子の言葉あたりからもう駄目でした。
「ほら、一生懸命の何かって何かにはなるんだから!」なんて自分に訳の分からない事を突っ込んだりして。
それにしても手紙書かなくなったよねぇ・・・心のこもった手紙って本当に書かなくなったよ・・・
「手紙」って言葉自体がもうセピア色していて懐かしくて愛しくて、構えちゃうんだなぁ・・・
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