監督  コリーヌ・セロー
出演  ミュリエル・ロバン、アルチェス・ドゥ・バンゲルン、ジャン=ピエール・ダルッサン、マリー・ビュネル、バスカル・レジテミュス、エメン・サイディ

何時かは四国のお遍路さん!それもちゃんと歩いてのお遍路さん!と、思っていた私ですから・・・ぴったりの映画でした。
やっぱりね、そうよね、今すぐ・・・的?気分です。
心が温かくなって、肩の荷物を一緒に落としてきちゃった気分です!
ただひたすらでいいんだね、目的は何でもいいんだね、ただただ前へ進めばいいんだね。
結末がどうであれ、ロードムービーっていうのは前へ進むから感動するのかも・・・?
「ロード・オブ・ザ・リング」は別枠にして「リトル・ミス・サンシャイン」「ストレイト・ストーリー」「幸福の黄色いハンカチ」パット浮かぶこれらの作品から受けた感動・・・「レインマン」とか「テルマ&ルイーズ」「マイ・プライベート・アイダホ」とかも入れてもいいかな・・・心に与える何かが有る、それも豊かに有る映画。
サン・ジャックはスペインのサンチャゴ・デル・コンポステーラのことでキリスト教の巡礼地、フランスのル・ピュイから1500kmピレネー山脈を越える遠い困難な巡礼地だ。
たまたま同じ先導者の下に出発した総勢9人の旅の物語だが、宗教的な意味合いを強く打ち出した旅を描こうとしてはいない。主役の三兄弟(これが又えらく似ていないんだ!)は無神論者に近いし、癌患者らしい女性には神の救済の必要があったのかもしれないけれど、それも別に強く訴えようともしていない、アラブ系の二人男の子の一人が病弱な母のためにメッカへ行くと信じている(友人に思い込まされている)けれど、それもイスラム教を押し出してはいない。何より途中立ち寄る教会すらもただ建物、美しい雰囲気のある建物だというのに過ぎない。巡礼に慣れている司教?たちのあり方さえも特に慈愛に溢れて・・・ということも無い・・・だから私も素直に彼らと歩を進めることが出来たといった感じだ。
共通しているのは何かしら何かを抱えているということで、それが順次現れてくるがそれも長い道中で順次収まりが付いてきかかる・・・という道中記だ。道が険しくなると鬱屈がこぼれ出て、道が優しくなると癒されて・・・でもその一つ一つの1日1日が普通なのに愛しくおかしくほほえましく心に響いてくる・・・というより私の心からそういうものが出てくるようなのだ、そして景色の美しさに気が付くようになってくる。
特に妹のクララの顔と声の変化に私は共感してしまった。棘々と主張してばかりだった彼女が自分の「教える」という職業の原点を取り戻せたこと、又彼女の傍で「学ぶ」事の楽しさを知った少年の笑顔!が1番の私の収穫。見る人それぞれにそういう収穫もきっと有りそうな素晴らしい映画だった。
面白かったのは途中に挟まる夢の中の?映像。チョトいい!シュールなイマジネーションの中でアバンチュールした後の静謐風絵画で?それともあれは渇望かな?
でね、兄のピエールと比べて弟のクロードの無一物の長い旅がなんとも象徴的でおかしくて、うーん、考えさせられちゃった、生き上手ってこういうことかって!とにかく楽しかったし嬉しくなった。最後が本当に良かった!
大掃除して不用品片付けたくなっちゃったけれど、実際は心の中の方が不用品が多いのかもね?