監督  ポール・バーホーベン
出演  カリス・ファン・ハウデン、トム・ホフマン、セヴァスチャン・コッホ、デレク・デ・リント、ハリナ・ライン、ワルデマー・コブス、ミヒル・ホイスマン、ドルフ・デ・フリース、ロナルド・アームブラスト

スピルバークの「シンドラーのリスト」、ポランスキーの「戦場のピアニスト」に続くバーホーベンの「ブラックブック」っていうコピーの下の写真は美しい女性と二人の男性。その一人ナチの軍服のふっくらと上品なハンサムな男性は見たことあるぞ?
・・・ん、「飛ぶ教室」の・・・ケストナーの名前を思い出せば、磁石に吸い付く鉄くずみたいなもので・・・
もっともこのセバスチャンさんを見た、新しい「飛ぶ教室」は原作に忠実というわけではなかったので、帰ってきて直ぐ本を読んで元の感動を取り戻したんでしたっけ。
最初に主人公を演じたカリスさんを見た時、とっさに思ったのは「美人じゃない!オランダ人なのに?」と失礼千万!
オランダって行ったことがありませんし、オランダ人って余り知りませんし・・・でも日本人が外人に抱いていた「赤鬼」の印象はオランダ商館のオランダ人から来ているのでしょう?オランダ人て赤ら顔の大男か大女のイメージが私の中に有ったんですね。最初に見たオランダ人はへーシングさんでした、多分、だからね!

それはそれとして、冒頭に上げた二つの映画とはただ第二次世界大戦下のユダヤ人の物語という共通点だけで、それなら他にも映画はあるのに、又なんでこの大作を列挙したのでしょうね?
もっとも私はそれに釣られたのですけれど・・・釣られて良かった!
これはあの困難な時代を背景にした波乱万丈の恋愛物語でした。
ロマンチックな気分が凄く刺激されましたが、憧れの?レジスタンスは地に落ちました。
物語で言えばレジスタンスものってスリルの極みでも有るし正義の極みでもありますが・・・普通は。でも実際に人間が複雑な状況下でありとあらゆる権謀術策を弄して地下で行うものである以上、裏切りもまた術策の一つなんだ・・・と。人間の濃密な縮図世界なんだ・・・と、映画の中で納得しちゃいました。
その意味でこの映画は戦下の「ロミオとジュリエット」に終らず濃密なものになりました。
戦時下のユダヤ人といえば・・・あの当時ポーランド・ドイツ・オランダ・ロシア・・・あの辺りにいた全てのユダヤ人に困難・波乱・悲惨極まりない生死を賭けた物語があったと思います。よく知っているアンネ・フランクのように。
そのユダヤ人とナチの将校との愛は究極の?「ロミオとジュリエット」です。それにオランダレジスタンスの腐敗部分を重ねた構造、そしてイスラエルのキブツで暮らすユダヤ人に戻ったラヘルを見せることで・・・(イスラエルってまだまだ混沌の真っ只中ですから)ラヘルの人生はまだまだ波乱の予感・・・を印象付けて・・・ユダヤ人の普遍の一つの姿を描きだして、前半は重厚な愛の物語になったと思いました。
そして後半ムンツェが捕まってからの畳み込み方はナチの終息と響きあってスリリングでドラマチックでした。オランダの熱狂!時代の雰囲気が見事に現れていました。
ただセバスチャン・コッホとトム・ハフマンの配役が俳優さんの魅力のせいで?途中直ぐ裏切り物は誰だか分かってしまったのが残念!「絶対こいつだよ、上手に生き残って行くじゃないの・・・」と顔を見るたびに怒っておりましたよ。
それにあの能天気な?時代の子?ハリナ・ラインさんが演じたロニー?何であんな危険を犯す気になったのかその必然が今一分からなかったのが気になっていますが。
こういう言い方もどうかと思うけれども、見ごたえのある映画で楽しめました。なんと、「ロマンチックな夜だったわ。」と思って帰ってきましたもの。
ミヒル・ホイスマンって言う人かなぁ?最初にラヘルを助けてくれた青年、又何かで見ることが出来るかなぁ・・・?
音楽も印象に残っています。エリスの歌はディートリッヒを思い出させましたね。リリー・マルレーンとか。