監督  ジョゼッペ・トルナトーレ
出演  クセニャ・ラパポルト、ミケーレ・ブラチド、クラウデア・ジェリーニ、ビエラ・デッリ・エスボスティ、アレッサンドロ・ヘイベル、クララ・ドッセーナ

「今度『題名の無い子守唄』っていうの見に行かない?」と誘われたのはもう一ヶ月以上も前になる。その時は私はまだこの映画の情報を持っていなくて「面白いの?」「面白いかどうか?興味深そうな映画なのよ、読んだところでは。」「じゃぁ来たら行きましょう。」
で、始まったので行って来ました。ご主人が見たくないタイプの映画なのだそうです。見て、ご主人に見せたくない方の映画だ!と思いました。と言うより一緒に見たくない?一人で見たい!
最初から最後まで緊迫感の切れない映画でした。
彼女の過去に何があったのか?それは永遠に振り切れないものなのか?彼女の真意はどこにあるのか?そして彼女は何をしてどこへ行きたいのか?彼女の行く道にちりばめられる謎の深みに私は落ちました。挿入されるカットバック・フラッシュバックに見えてくる過去が痛々しさで彼女を彩ります。金髪を輝かせて笑う彼女が若い!このカットバックで入る映像が色鮮やかな分その瞬間がこちらの心臓の心拍数を跳ね上げて、現在の彼女の暗さを痛いものにする。多分難民でウクライナから流れてきてこの運命にとっ捕まったんだろう・・・と想像して・・・今まで見た難民を扱った映像のきつさをもこの映画に覆い被せて・・・彼女の過去が胸に迫ってきます。来た道が見えてきて、行く道も見えてくるに従って、今度は彼女の犯した過ちが取り返しの付かないものであることも見えてきて、見る方の心の中が収拾つかなくなってきます。彼女にもう救いは無いだろう!落とされてしまった先任の家政婦、殺されてしまった母親!でも彼女の突き進む意志は揺るがない。ただただ彼女とそっくりの?縮れた豊かな濃い色の髪の少女にヒタト据えられた眼差しだけは動じない。
そのために払われる彼女の智恵の限り、努力の限り!その分彼女の人生の愚かしさ、悲しさ、苦しさ、失ったもののかけがえの無さが胸に迫ってきて痛くなります。
それで?それで・・・(結末は教えないでください)の字幕がありましたね。
理解してもらっても同情されてもそれがなんになるでしょう?その上、代わりに誰かが何かが償ってあげることも出来ません、彼女の過去に。
どんな過去があっても、どんなに虐げられても、してしまった事を償わなければ穏やかな時も心も恵まれはしない・・・と。この作家・監督の語りたいことが最後の映像で見えるまで、しっかり虜にされた2時間でした。「時だけ」では何も解決しないのです。でも「時」は絶対に必要なのです。それ無しには、どこにも行けないのです。
子供の出生率がこんなに低くなっているこの国で今この時子守唄を聞いている子供はどのくらいいるんだろうなぁ・・・うちの子供たちは私の歌った子守唄を覚えているだろうか・・・なんて・・・
エンニオ・モリコーネって!!!それなのにまだクリント→マカロニウエスタン→モリコーネの私って?