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監督  エラン・コリリン
出演  サッソン・ガーベイ、ロニ・エルカベッツ、サーレフ・バクリ、カリファ・ナトゥール、

何がこの映画を際立たせているのか?
ふと考えてしまう作品でした。
最近おなじみの「凄い!どうやって撮ったの?」映画とは全くの対極にある作品。昨今こんな地味な作品もないでしょう。
丸1日の出来事、それもユックリとした時間の流れの中の。
景色も侘しい、何にもないと言っていい荒涼としてただ地平線が茫漠として思いっきり広く長く、空がとてつもなく大きい。奥に見えるのは山か砂丘か。
真っ青なその広い空の下から物語りは始まるのだけれど、このお揃いの空色隊服8人のエジプト人音楽隊、彼らのこの時の表情からして既に魅力的なのだ。飛行場でぼうっと迎えを待っている。
苦々しい不満、何とかするぞと言う悲壮、任せておけば何とかしてくれるだろうと言う安心、「え、俺にさせるのかよ?という不安」・・・人間的なそれらが幾何学的に無愛想な空港を背にして妙に危うい。それなのに、彼らはバタバタしない。時と地の上にポワーンと突っ立っている。       彼らのその感情は言葉にはならず表情だけで、その姿をすーーーっと引っぱって映画は進行する。
ここで既に私は彼らと心を一つにしている。
だから彼らの話すおぼつかない英語がアメリカ人の英語がちっとも聞けない私にちゃんと語りかけてくる嬉しさ!
最小限の意思の疎通。彼らと突然現れた彼らを受け入れた人々の間にかもし出される交流。なんと言うほほえましい長閑さだろう。余分な装飾がない。事態を唯受け入れ一番簡単な対応をするだけ。
女主人のディナのあの声!私は魅惑されてしまった。大地の上にしっかと乗っかった逞しくも強い声!それでいて素朴、飾らない。彼女の気持ちを真っ直ぐに伝える声。
彼女と隊長の短いけれど丁寧なやりとりが生み出す心の結び合いのなんともいえない可愛らしさ。
そして表情が出来ること!楽団の若い団員カーレドと女性と上手く付き合えないイスラエルの青年とのエピソードがなんともやはりほほえましい。素直な信頼がいつの間にか醸し出されて。
そして歌!もう一つの宿でのエピソード。あの困惑しきったシモンたちの顔と無言・・・そしてこぼれ出た「サマータイム」
音楽が皆凄く良かった!
ティナと隊長のレストランのシーンに流される曲、シモンの途切れる曲、「サマータイム」、ラストの隊長の歌、エンディングに流れる曲。演歌好き?の旦那のお土産にサントラ?と思ったのだけど。
この東京の反対側にこんな世界が横たわっているのだろうか?・・・と、世界の実情を殆ど忘れていた。特にこのイスラエルとエジプトの。そして帰ってきたらガザのニュースが流れていた。