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監督  フランソワ・ジラール
出演  マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、アルフレッド・モリナ、役所広司、芦名星、中谷美紀、國村隼、ケネス・ウェルシュ、本郷奏多
見終わったとき、夢のような映画を見たという気分でした。
エンド・ロールの間も心をその夢の中に憩わせるような美しい音楽が聞こえていました。
この映画の夢感、憧れ感、浮遊感の源は美しい映像とこの音楽だったんだと思いながら座っていました。
予告編から受けた印象で少し見るのを躊躇っていたのですが、映画は違うものでした。
外国映画で日本を描くときの違和感は時に非常に不愉快です。
スタッフの中に日本人の名前を見つけたときなどはもっと不愉快です。「何で正す努力をしなかったんだ?」って思うからです。
でもこの映画は日本をきちんと描く意志は、はなから無かったと思います。(それにしてはいいほうだと思います) 媒介したのは絹だったのだから極端に言ってしまえば中国でもタイでも良かったんです。
要するに男というものは本当に大事なものを手に入れていながら、憧れに生きる者だと言う事を描きたかったように思えます。
実生活の中にあるある種の倦怠感が男を冒険にかき立て、憧れにいざなう。異国の少女の唇や肌やエキゾチックな不思議なとらえどころのない魅力はそれそのものが目的ではなかったのだと思いました。
男は「山のあなたの空遠く」それが遠くにあればあるほど憧れがかきたてられたのです。
向うに居ると残してきたものに思いを寄せ、帰ってくると後ろめたさに愛を語りすぎ、尽しすぎ、相手の不安を掻き立ててしまう。
そして自分の心もまた不安と憧れの間に落ちる繰り返し・・・。
しかしこの場合利発な妻はその夫を理解している。
彼を支配し、衝き動かしているのは異国の特定の女そのものではなく遠く憧れる心そのものだと。
妻からの曲折を経て届けられる手紙に男は知る・・・という形ですが、多分男は男を男たらしめた芯にあった憧れをも失ってしまったのではないかと気の毒でもありました。
男は失って初めて自分の運命の最高に大事な者とその価値を知る・・・まぁ、そういってしまっては男が可哀相かも。
あの庭を埋める百合は香りのない山百合でしょうか、それとも?
妻のために美しい庭を作る夫は心の底ではそれと知らずに愛を尽していたのかもなぁ・・・なんてロマンチックな気分にどっぷりつかってきました。
そしてあの日本の雪景色に妙に郷愁を誘われてしまったのは何故でしょうね?