監督  ポール・トーマス・アンダーソン
出演  ダニエル・ディ=ルイス、ポール・ダノ、ディロン・フレイジャー、ケヴィン・J・オコナー、キアラン・ハインズ、

見終わるまで150分以上もある長い映画だったとは気付きもしませんでした。凄い!前日4時間しか寝ていなくて・・・下手すると寝ちゃうんじゃないかと心配していたのに・・・始まったらそんな心配吹っ飛んでしまいました。
石油が噴出する映画というと「ジャイアンツ」が直ぐ思いだされますが、あの映画も家族の1代記、これもある意味血は繋がらないながら父息子の1代記、石油発掘が絡むと物語りは巨大に骨太になるという感じか。
時間を忘れて画面に引き込まれたのにはあの音楽と言うか「音」に物凄く因るところが大ではないかという気もする。
伝道師、カリスマ宗教家といってもいいかもしれないがイーライがある意味牛耳っている土地で、非常に偏った宗教色の強い土地柄故、女性たちの服装も殆ど色の無い映像世界で石油が燃え上がる映像だけがすごいインパクトで頭に残っている。そしてそれを際立たせるのがあの「音」だ。
その色はプレインビューのともイーライのともいえる男の野心の象徴の様でもあった。男たちを突き動かす欲、それが生み出す葛藤、狂気、それが噴出したような炎の柱。そしてそれに飲み込まれる息子の運命。
プレインビューもイーライもとてもあたしの理解の他だとあの焔を見ながら、あの音に心をズッタズタいじめられながら、座席に埋もれこんでしまった。
明るさを感じる余地は全く無い。にもかかわらず、ダニエルの声は実に明確に明瞭に鮮やかに耳に飛び込んでくる。対するのがイーライの中身はまやかしで胡散臭いとしか思えない熱弁だ。裏腹なのに同じ狂気を感じさせられる。オトコはコワイ!
石油が湧き上がる、油井が掘り当てられる、その一本一本に一つの狂気がアメリカでは生まれているのかもしれないなんて思って、いや世界中の油田一つ一つに紛争と怒りと恨みと・・・やっぱり狂気としかいえないものが湧き上がっているんだ!と思えた。
そしてそれを消費して一刻一刻を私は生かしてもらっている・・・という恐ろしさ!
デモネ、どんな打算に突き動かされたにしろ、どんな黒い意図があったにせよ、子供を連れて歩いていた時の彼には人間らしい潤いが時に見られたのに、息子が去った時に、あの時の致命的なやりとり後、彼は乾燥し果てて・・・あの最後が来たんだと思いたい私がいて、その私は自分で自分の終わりに「終った!」と、はっきり言い切れる人生ってただただスゴイ!と思っている。
誰がこれだけの迫力と意志を狂気のように貫いて生きられるか?って。

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サントラWarner Music Japan =music= 2008-04-23
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