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監督  藤原智子
出演  ベアテ・シロタ・ゴードン、アリーヌ・カラッソ

「敵こそ・我が友」に次いでのドキュメンタリー作品となりました。岩波ホールで鑑賞。
生きていらっしゃる方が証言すると言う形で進行します。同じシロタ家の女性二人の話が挿入されて、それに沿う形で映像が提供されます。
シロタ家と聞けば「白田家・城田家」などという苗字が思い浮かびかけますが、この映画はウクライナ出身のユダヤ人一族の20世紀を記録するものです。ウクライナからキエフに出た両親の元から世界中に散らばった(5人の姉弟のうちの)男子3人の生きた証しとその子孫の物語と言ってもいいでしょう。
「ベアテの贈り物」は見たいと思っていて見損なったのですが、同じ監督によるドキュメントです。ベアテさんとはピアノ演奏家として・ピアノ教師として日本で戦前・戦中・戦後を過ごしたレオ・シロタ氏の娘さんで、戦争勃発前夜アメリカに留学して戦後進駐軍と共に来日し憲法草案に携わった方です。男女平等の草案者となった人です。
しかしこのドキュメントで私が感じたのはユダヤ人という種族のなんと言ったらいいのか・・・気の毒な、しかしそれゆえにか実に逞しい民族のありようでした。世界中のいたるところに住み、いたるところに社会を築き、信仰を維持し、様々な時代を渡ってきた偉大な民族です。シロタ家もパリに出た3人の息子の子孫がパリ・日本・アメリカと足跡を残していきました。ポーランドの軍隊でナチスと戦って亡くなったイゴール。アウシュビッツに送られた祖父ピエールの現在はパリで生活している孫娘たち、そしてアメリカで生き延びたレオの娘一族。
「世界は一つの家」を実現できるとしたら、それはユダヤ人によるのではないかと思えるくらいです。
しかし現実はイスラエル問題を抱えた世界はそれどころではありません。民族と信仰は本当に難しい。そしてそれが人類の救いになるのか?人類の足元をさらうのか?先の見えない世界です。それでも生きていく力強さは何かを生み出していくに違いないと思わされました。少なくともシロタ家が日本で行きぬいた証しが「男女平等」という法に刻まれているのですから。