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監督  アグスティン・ディアス・ヤネス
出演  ヴィゴ・モーテンセン、エドウアルド・ノリエガ、ウナクス・ウガルデ、ハビエル・カマラ、エレナ・アナヤ、アリアドナ・ヒル

「アラゴルンのヴィゴさんが帰ってきた!」予告編を見たときそう思いました。ツバ広の帽子をヒヨウと投げた時、スペインの騎士の物語だと早とちりしちゃったようです。結果的には王でも騎士でもなかったのですが、でも冒険譚の勇者ではありました。
冒頭の腕に火縄が巻かれているところで、「あぁ、騎士の時代より身近な時代だったのね・・・」と不安に思うほどヴィゴさんのアラゴルンは私の中の王の王、騎士の騎士でしたからね。「イースタン・プロミス」のヴィゴさんにイカレた後でさえも。
この人の立ち姿はどんな服装の場合でも優雅な?魅力があるんだなぁ・・・と、惚れ惚れしたのですが、それは姿勢がいいとか姿かたちが美しく‘すっくっ’と立っているからでもないんですね。壁に寄りかかっている時、前かがみにお辞儀しそうな時体が描くそこはかとないカーブに見入っちゃうのです。
とにかく頑固で彼でしかありえなかったという男を今度もまた見せてくれました。しかもロシア語に(もっとも私はロシア語なんて全く知らないのだけれど)違和感が無かった?ように、スペイン語を話す彼も違和感が無くて・・・それはひょっとしたら人語も、ホビット語も、エルフの言葉までも話す彼を知っていたからかもしれませんね。あー、また「指輪物語」が読みたくなった!この映画の原作がある事を知りましたが(しかもかなり長編)、それを読むよりはやはり・・・ということは・・・
17世紀初頭のスペイン、ベラスケスの絵のような世界(だと言っても良いのか?)と思うほど宮廷の貴族たちの姿・衣装は美々しく、それに対して、アラトリステたち傭兵の貧しさと生活の厳しさが浮きぼりにされ、社会の不均衡・階層社会の厳しさが浮き上がっていた。
既にこの時代のスペイン兵士には凋落して行くスペインの末路が伺え、傭兵への支払いも滞り、きらびやかな装束・戦闘用甲冑も無く、戦に負け続けていく様がリアルに映し出されていた。CGの「レッドクリフ」の戦闘場面を見た後の目には兵士の息遣いの聞こえてくる、地の嘆きが満ちてくるような戦闘場面のリアルさがつらいくらいだった。
イニゴ(この坊や「コレラの時代の愛」より大人に成っていた!けれどあの可愛らしさは失われていたなぁ)が生き延びて、アラトリステの話が後世に伝わるということに歓びを感じるほどヴィゴのアラトリステに魅せられたのは、映画が上手に脚本が書かれていたとか、物語が整理されていたからとかではなく、土着の力・傭兵たちの姿を描けていたからかもしれない。道や建物や荒涼とした野戦場・渡河場面などの映像の嘘の無い力だったんではないかな・・・なんて思っているが、ただ単に死を乗り越えていく男の力強い生きる執念に敬服してしまったのかもしれない。カルタヘナかぁ・・・いつか行ってみたいけどなぁ・・・あの後ろに見えていた城は本当にあるのかなぁ・・・本当にそこで撮影されたんだという感じがするのだけれど・・・

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