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監督  ファテイ・アキン
出演  ハンナ・シグラ、バーキ・ダヴラク、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイ、ヌルセル・キョセ、パトリシア・ジオクロースカ

もうなんとも素晴らしい映画を見てしまいました。正直この間からのパレスチナの戦闘をなんと気の毒な・・・と言う目線で見ていました。実際そうなのですが、「イギリスの二枚舌め!」なんていっても今更・・・どうしようもない泥沼です。宗教民族人種などが絡み合って長い長い複雑な歴史を経てきたものを・・・と思うと、手をこまねいてただただ「子どもたちが生きて行けて憎しみを持たないですむ世の中を」と願うだけしか出来ない感じです。
そこにこの映画です。トルコへは昨年観光に行きました。トルコのリゾート地の最大のお客様はドイツ人だと聞きました。どういう経緯でトルコとドイツに絆が出来たのかわかりませんが、ドイツにトルコ移民がこんなにも多いという事をこの映画で知りました。
トルコ人はドイツの産業の底辺を支えドイツ人はトルコにユーロを落とすという関係でしょうか?この作品にでてくる3組の親子、ドイツへ移住してある意味成功して年金を貰っているトルコ人父と大学教授にまでなっているその息子、ドイツで娼婦をしながら国にいる娘の大学費用を仕送りしている母と体制にはむかう活動家として生きるその娘、国外逃亡してドイツへ不法入国したその娘に同情し恋をしたドイツ人の娘とその母。ブレーメンとイスタンブールの間で紡がれる3組の親子の運命の交差。二つの都市を訪れる観光客の知ることの無いその土地の描写に、この親子たちだけではなくこの2国の人々の間に多くのドラマが現実にも様々に入り乱れてあるのだろうということが想像される現実感がありました。そしてその上に人の心の素晴らしい面がなんのてらいも無く構築されていました。娘の教育のために身を削る母、父の罪の償いを身に引き受けたかのような息子の生き方、娘の愛情を受け継いで手を差し伸べる母の生き方。非常に難しい事を、つらい事を・・・背負って、と。母がイスタンブールのホテルで泣きつくす姿に涙し、幼い頃の父の言葉をかみ締めて浜辺で待ち続ける息子の後姿に涙し・・・めぐり合うことも、すれ違うことも、どちらも運命。それをを受け入れることが生きることなんだと思いながら涙を拭いたのです。無関心に転がることも、憎しみに傾くことも出来たのに・・・そうあっても無理からぬ成り行きだったのに、二人の選んだ道が心を素直に明るくしてくれました。母の、母以外の誰にもなりようも無い母そのもののすばらしさに打たれてしまいました。