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監督  ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演  アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ、アウバン・ウカイ、モルガン・マリンヌ

20数年と思われる人生でいったいロルナはどんな苦労をしてきたと言うのでしょう?強い女だったと思っています。何が彼女をこんなに強くしてしまったのでしょう?そしてその行き着く先は傷付き暗闇にうずくまる母性です。なんと哀れな。この先彼女はどうなるのでしょう?
真の母性こそが究極の愛だと信じます。これ以上に侵されない物はないでしょう。先日そう思える素晴らしい愛の映画を見ました。母の娘への愛の。「そして、私たちは愛に帰る」でした。最後に素晴らしいあらゆる物を乗り越える母の想いの美しさに打たれたのでした。その後、自己実現しかない、自分しか見えない若い夫婦を、愛の育ちきらない夫婦を見ました。人を自分の鎖で縛る欲は愛とは言いません。「レボリューショナリー・ロード」です。
そして今この映画の愛です。愛を描くことの永遠、尽きぬ泉を思います。一人の人の中に無限に湛えられている愛を思います。その人の成長と共に変化し育ち成熟していく愛の姿を思いました。
人も、自分も縛らない、無私の、要求しない愛は親にしかないのか?
そう最後に思わせる映画でした。
ロルナも恋人との未来のために国を出、偽装結婚をし・・・それは愛のためだと思っていたのでしょうに、哀れな青年の日常を見、頼りすがる孤独を見たとき・・・彼女の中で新しい愛が育ちます。独りよがりの自分に都合の良い愛から、苦労と忍耐を強いられ他人の支えとなれる強い愛に。犯罪者になる事をも厭わなかった、クローディが殺されることにも眼をつぶれるはずだった彼女が変わります。彼女の中に埋もれていたおおしい愛が立ち上がり育ちます。そしてその対象を失ったとき、クローディの命を救えなかったとき、彼女の愛はいつかは生まれるはずだった愛の結晶を夢見させる母の愛にまで昇華します。狂気が純粋を産んだのでしょうか?
でも現実の前でそれがどんなに悲しいことか。彼女のいる世界が病んでいるので彼女の愛の器も病んでしまう。世界の方に愛が無ければ個人はその愛をどう実現できると言うのでしょう?
いる場所を買い、国を買い、人を買う現実に人のもろい心が無傷なまま付いていけるはずも無い。何で世界はこんなにも病んでいるのだろう・・・。朝広げる新聞を見て、少しでも良くなっていくのか・・・期待がむなしい社会なのか・・・と怯えています。祈るしかないのかと。