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監督  ロバート・ドーンヘルム
出演  アンナ・ネトレプコ、ローランド・ビリャソン、ニコル・キャベル、ジョージ・フォン・ベルゲン、イオアン・ホーランダー

オペラの映画化は難しいものだろうと思います。舞台なら遠目に見て許せるものも、映画だったら許せない!って事にもなりかねません。舞台を忠実に画面に移すだけのオペラ映画は願い下げにしたいと思う所以です。オペラ歌手による映画はイメージが合わなくてつらいことが多いし、演技の種類も違うような気がします。吹き替えの方が許せる場合も多いようです。ハイビジョンシアターっていうのでオペラを見たときにこんなアップで歌手さん見たくないけど・・・なんて思ったことも。
ところがこの映画、オペラ気違いと言っても過言でない友人に誘われました。「う~ん」しばし考えてから行くよと返事をしたのは、この映画で起用される歌手に「当代一のソプラノ」とあったのを思い出したからです。そんな歌手なら舞台は高いでしょうから絶対聞く機会は来ないと踏んだからです。つましい話でしょ?
薄幸な美女をかなりお太り目の歌手が歌った事があります。隣にいた友人が「目をつぶって聞きな」と言ったので噴出しそうになりましたっけ。ウィーンのオペラ座で。いざとなったらその手があるさ?
実際ミミを歌ったアンナさんはちょっと健康的に過ぎました、が美女でした。ミミかぁ?という気配は濃厚だったものの、流石に歌は素晴らしい声でした。同じ伝で、貧乏な芸術家の青年たちは皆恰幅のいい中年でした。これも?が最初付きました。
ところがやっぱり音が、声が良いんです。それこそ目もつぶらずに聞きほれました。聞いて、聞いて、この私が眠くもならずに聞いて、聞きました。
そしてロドルフォを最初詩人と言うより気の弱い山賊崩れみたいだと思ったことなど忘れ果てました。
そしてムゼッタがミミを連れ帰ったところから涙が止まらなくなりました。映画館でここまで泣いたのは・・・いったい何時以来だろうと今考えているのですけれど・・・
あの涙は完全に歌声にしてやられたのだと思います。これが歌の力だ!と感服して、暫し席を立てなかった私です。