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監督  エラン・リクリス 
出演  ヒアム・アッバス、クララ・フーリ、マクラム・J.フーリ、アシュラフ・バルフム、ウーリー・ガヴリエル
お遊びの映画を楽しんでいた後に、このような映画を見ると下を向いて忸怩とする思いです。映画を本当の表現手段にして、訴えたい物を真摯に表現しようとしている作品の前では何ものもどんなに工夫したお金を掛けた映画も、色を失うという事を再発見してしまいます。
映画というものの持っている「手段としての機能」を改めて見つめ、これでひとつの世界を表現しようとしている人々のまじめさに頭が下がってしまうのです。
この映画も声高ではないのに、人が生きていくというただそのために費やされる覚悟の嵩を訴えて余りありました。
ここで私がぼやっと生きているその裏側では、幸せを掴み、自分らしく生きていくために非常な覚悟を求められている人々がいると言う現実に目覚めさせられました。
結婚式の一日を描いて、家族の中にある葛藤も生きているその場所が生み出す葛藤も政治が生み出す葛藤も人種が生み出す葛藤も・・・どれも解決する手段はあるのじゃないか?という希望までもこの映画は見せてくれました。大きな映画でした。
モナも姉のアマルも自分の人生に向って踏み出していくのですけれど、そこにどれだけの必死の思いがあるのかと思うとき、心が思いっきり震えます。特にやつれ果てた表情を見せながら家族思いの行動を決然として取る姉の姿には打たれてしまいました。
女性が自分の人生を選び取ることにこれだけの大きな犠牲と決意を要求する社会があってはならないのに・・・でもそれだけのものを支払う価値が本当は人生にはあるんじゃないか?と思えたことも確かです。忘れていたことでした。
戦争の悲惨は女と子供に重くのしかかってくる・・・とはいつも思われることだけれど、本当の所は戦争好きな男たちを野放しにしているツケがいつも女に降りかかってくるんだよ・・・と、思えるのだけれど?信仰と人種を手段に権力と所有の欲のために頑固と執念を糧に争いを始めたがるどうしようもない男たちにも、個人としては可愛げがあったりするのが・・・いつも女の泣き所なんです。