マッチポイント

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監督  ウディ・アレン
出演  ジョナサン・リス・マイヤーズ、スカーレット・ヨハンセン、エミリー・モーティマー、マシュー・グード、ブライアン・コックス

この映画は魅力的でした。私にとっては、ロンドンとジョナサンの2大魅力の威力です。
ロンドンが楽しめました。これが一番の収穫!
二番は「俳優を見出す人の眼力」、敬服しちゃいましたよ。
あの目と唇だけのやせこけた少年(「ベッカムに恋して」では)がこんなに陰のある魅力的な目を活用?するうーん、なんと言えばいいのかなぁ・・・古い言葉で「色悪?」を素敵に演じる俳優さんになるのですから。
音楽も上流階級の雰囲気を盛り上げるのにとても効果的だったと思いますが、「耳に残るは君の歌声」の印象が強い曲の多用で、私のイメージが分断されたのが一寸きつかったです。途中でジョニーとクリスティーナ・リッチの顔が唐突に浮かんできてしまうんですもの、参ったなぁ。
前半はジョナサン演じるクリスが欲と色の二股を一目散に追い求めるエネルギーと、スカーレット演じるノラの魅力でどうなるのだろうと息をつめて展開を追っていました。ジョナサン魅力的になったなぁ・・・でしたし、自分の魅力への自信たっぷりのノラの存在が見事だったし。
実際スカーレットにはそれだけの魅力があったので、私はテニスボールが「色」の方に落ちるのかと思っていました。どんな風に?
ところが妻が折角?女の魅力を失っていくという展開なのに、(妻の実家の)家庭生活にはどっぷり縛り付けられるし、当然・・・でしょう?
ところが愛人になってからのノラは男にとっては結婚をせっつくただの口汚い「猛烈手に負えない女」の見本になってしまって・・・このあたりでなんだ!って感じでしょうか。
よくあるパターン、よくありすぎるパターンになってしまって「こりゃー全く、しょうがないねぇ」・・・っと、ノラの死を予感してしまいました。
ノラはせっせと墓穴を掘っていましたよね?
自分の魅力に自信のある「男を翻弄できる徹底的に利巧な悪女」になれる素質満点なのに・・・惜しい!?
これじゃぁよくある男の「結婚したい女・愛人にしたい女」という週刊誌バージョンじゃないのって感じでした。
だからこのあたりで一寸期待が薄れたのですが・・・それで終らないで「いやいや面白かったね!」、になってくれて、早く行って並んだ価値があったとほっとしました。
「運」?
「結局真の悪人は男しかなれないんだ!」・・・と、思いましたね・・・?
彼にとって「罪」は生活の手段に過ぎなかった?
「罰」が控えていても?ボールがあっちに落ちる可能性はいつもあるわけでね。
それに一寸感服!クリスは言葉を知っていましたね。誰にでも的確な言葉を掛け、確実に好意を物にしていました。警察でもね。試合を組み立ててましたよ。
「罪と罰」愛読している頭脳的攻撃的テニスプレイヤーには「罪も罰も運次第」のはずは無いってことでしょうか。
結婚指輪の使い方で上手くドンデン返されちゃって・・・結構濃密に物語を楽しめました。絵ができてましたねぇという感じ!でした。
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出口のない海

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監督  佐々部清
出演  市川海老蔵、伊勢谷夕介、塩谷瞬、柏原収史、伊崎充則、
香川照之、上野樹里

7・8月体調を崩して家にこもっていた父が墓参りに上京してきた。
好きな映画も見ず、買物も散歩も極力控えていたからか、涼しくなったからか、体力を取り戻したと・・・それでも一回り小さくなって。
何もせずに家でおとなしくしていた間、横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」と「出口のない海」を読んでいたからと、墓参りがすんでからこの映画を見に行った。
私の苦手のジャンルはオカルトとリアル日本戦争映画。
史実に基づいた・・・というヤツだ。これは辛い!
しかしこの映画は不思議なことに今まで日本の戦争映画で抱かされたいやらしさが全く無かった。
陸軍を描いた映画では無かったからかもしれない。
いじめの為のいじめ、卑劣なだけの卑劣、そんな物は皆無だったからだ。
海軍は同船同夢・一蓮托生の家族的?世界だからか?
でもしかし・・・それだけにこれでは戦争の悲劇がヒーロー化しないだろうか?と不安にも思ってしまった。
何しろここに出てくる青年たちはさわやかで好感が持てて、親だったらこんな、息子を持ちたいと思う青年ばっかりだったのだから。
一寸ひねたランナー北君ですら真摯な青年であるし。
主人公の並木君はもとより、塩谷君(この人の顔本当にいい感じ!)演じる整備工君や伊崎君演じる童顔君、母似の鏡青年君、「心配したぞ!」と言って唯一鉄拳を振るった高橋君演じる教官にいたるまで、皆共感の持てる日本が誇れる?青年たちだったのだから。
こんな戦争映画作ってしまっていいんだろうかという私の不安、分かってください。
彼らは本当に死を恐れているのに、誰一人戦争への疑問・反発・憤りを表現しない、悲しみはあるけれどね。
並木君の父に至っては・・・あの諦観と平常心とあの科白「イギリス人?の何とかさん、いい人だったなぁ・・・。」はどうでしょう。
その科白が並木君の最後を左右したんでしょう・・・と、思うと、やっぱりおちおち親は出来ません。ある意味凄い親ですよ、行動で示せないことは言わないんですね。
時代に素直に育った青年たちというのは考え物だ・・・不味いんじゃないかなぁ・・・困ったもんだ・・・いい子たちだなぁ・・・の堂々巡りに落ちた私です。
やっぱりあんな子供たちをむざむざ殺す国なんて・・・自分の子の事を思うに付け安倍さんでいいのかなぁ・・・きな臭いなぁ・・・あの人本当は戦争どう思っているんでしょうね?・・・鵺みたいな答弁だし・・・と、不安が募る私でもありました。
美しい国は美しい青年たちが居てこそなんだからね!と、釘を刺したい私でもあります。
美しい青年って、素直なだけの青年ではないですからね!
とにかく、この立派に育った青年たちを生かせる国にしたい!
彼らがしたい事をして生きてゆける国であって欲しい!
という意味で、この映画も反戦・非戦の気持ちを一層強くしてくれましたし、目指せ八方美人の国?外交が全てよ!と、思いました。
ま、それはともかく、見終わって何か違和感が・・・と、ズーット考えていたのですが、分かりましたよ。
海老蔵さんです。一生懸命に演じていて、演技力にも不足は無いのになんかそぐわないって感じ・・・他の青年群と並ばないのです。
「主人公だからだろ。」って?うーん?
いえいえ、単に彼の大きすぎる立派な顔と目のせいじゃないかなぁ・・・っていう気がするのですけれど。
反対に彼だけがあの時代の顔をしていて、他の青年たちが現代の顔過ぎるのかも・・・。
海老蔵さん、別に「睨んで」くれたわけでもないのですけれどね。
香川さん、ここでも存在感有りましたね。無くてはならない俳優さんになりそうです。
でも、便利に使える何でも出来る一寸出る俳優さんにはならないでね・・・。
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ゆれる

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監督  西川美和
出演  香川照之、オダギリジョー、伊武雅刀、蟹江敬三、真木よう子、新井浩文

この映画不思議なんです。
確かにオダギリジョー演ずる弟の真っ赤なパンツ、赤い革ジャン見ているんです。
そしてちゃんとその色が焼きついているのに、思い出そうとすると映像は白黒なんです。
白黒映画を見てきたような印象が残りました。
確かに実に押さえた色合いの映画でしたが、多分白黒がこの映画のモチーフだと思ったから、映画の印象も白黒になってしまったのかも知れないなぁ・・・
兄の香川さんの顔が凄く黒くて、髭面ぼさぼさ髪で余りはっきり見えない弟の顔が凄く白くて・・・を皮切りに?今の日本で考えられるあらゆる対照が描かれたように思います。
田舎と都会、素朴と洗練、才能と平凡、女にもてるもてない、生き上手下手(要領の良さ悪さ)、お金の有る無し、親付き親無し・・・といった具合に。
その対照がご丁寧に兄弟、二代に渡って繰り返されて。
昔は長男に生まれることが全てだったのに、現代で長男に生まれることののっぴきならない重さ。
最もそれは今は都会ではもう死にかけている意識・・・でも田舎は・・・まだだろうな。
でもやはり消えかけている意識だから、伊武・蟹江兄弟では顕在化しなかったものが香川・オダギリ兄弟では顕在化してくる・・・ということだったのかなぁ。
でもどうしようもないなぁ・・・という重たい感じ?
だから映画を見終わってもしんと音なしの構え・・・劇場中が・・・と、思ったのは私の意識の問題だろうか?
男だけだったらお互いに仕方ないよな、分かっているさ・・・式に言わなくてやり過ごせたものを、良くも悪くも真木さん演じる「今の女の子(田舎はいやで、お金は必要で、だけど家族(親も子も)を作る覚悟は無い?・・・あらら、今の男の子もか!)」が挟まることで全部が見えてしまって・・・。
我慢していない者にとってはなんてことも無いことが、我慢してきた者にはここで我慢の糸が切れるって言う飽和の時が来るものだということかしら?
糸を切っておいて、奪えるものを奪っておいて、「僕の知っていた本当のお兄ちゃんになって欲しい・・・」なんてほざく弟、柵を柵と感じない無神経な都会人に、自分を投影してしまってがっくり私自身が重くなってしまった。
それにしてもお兄ちゃんの服役中の弟のこざっぱり感が解せないなぁ。正直に言っちゃったからすっきりした?正直なら何言ってもいいってことはないでしょ!
そして最後の弟の呼びかけに気が付いていたんだよね?お兄ちゃん。
あのかすかな笑みは・・・全部を見切ったと言う感じ?過去も人生も家族も故郷も・・・全ての抑制を・・・切った?
香川さんて表現する人だなぁ・・・って、凄いわ。
私まじめだから、恨んじゃうわ。一生懸命解釈しようとしちゃうじゃないの、香川さん。
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ヘヴン

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監督 トム・ティクヴァ
出演 ケイト・ブランシェット、ジョバンニ・リピシ、レモ・ジローネ、スティファニア・ロッカ、アレッサンドロ・スベルドウーティ

先だって、BSで不思議な映画を見ました。
「ヘブン」です。
何が不思議って・・・色々です。
何で「ヘヴン」なんだろうって思いながら見ていたのですけれど・・・「ヘヴン」って私が最初に思っていた「天国」って解釈だけでは填まらなかったようです。
こじつければですが、二人の間に芽生えたものが「至高」の愛に昇華したということ?
または、命を懸ける愛が生じたこと自体が「最高」?
または、逃げて二人の愛の時間が持てて、その時間こそが「天国」?
最後の上へ上へと登っていく最後の瞬間が「ヘヴン」?
昇っていって、登っていって、上っていくと・・・何時かは壊れて死が訪れる・・・天国の門が開く?え、本当に?
さて、他に見た人はどう感じたのでしょう?
気持ちを不安にされてしまいました。
だって、どうみても彼女の方は最初夫の敵を討つための方便として彼の計画に乗ったように思えたのですもの。
発端がどうであっても、何から生まれたにしても、生まれたものが愛ならその愛は「ヘヴン」に繋がる?
さて、さて・・・色々考えながら見ていたのに、後半ポロッと考えることを止めてしまいました。
と言うよりか半分ぽかんと口を開けて景色の美しさに見とれてしまったという方が正しいです。
本当に美しかったです、イタリアの田園の風景が。秋の景色が!
豊かな色合い!稔りを予感させる豊かさ溢れる色彩!
空の色、木々の色、畑の色、なだらかな丘の色、点在する家の色、そして田舎の結婚式!
押さえられていながら豊かに溢れる色彩がもう私の目を押し流す勢いで・・・静かに美しかったです!
「イタリアの田園がヘヴンなのだ!」と、言われたら、素直に「本当に!」と、頷いていたでしょう。
それほど美しく、それは最後の集約していく空の1点の美しさに至るまで「ヘヴン」でした。
ため息をついて、でも思いました。
何で、二人とも坊主なの?巻き添えを食って死んだ人を弔う気持ちを表したの?
お坊さんのように俗世を離れたってこと?
あの愛情たっぷりのお父さんは息子を理解していたにしても、あれでいいの?親はああできると思う?特に女親の私には・・・どう?
考え出すと謎にまかれちゃうけれど・・・まぁいいわ・・・ヘヴンみたいな映像が見れたんだもの・・・と無理やり納得したのですけれど・・・?
親なら理不尽だ!あんな出会いを用意する神なんて!と思うでしょう?普通!

ケイト・ブランシェットという女優さん好きです。
でもいつも迷うんです。彼女は果たして美人か?否か?
美しいなぁ!と、思い、美しくないなぁ・・・と、思う。
滑らかな肌、金色の髪、青い目、醒めた表情・・・それらが作り上げる魅力!
丁度、ガラドリエル「ロード・オブ・ザ・リング」みたいに・・・不思議で魅惑的。
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スーパーマン・リターンズ

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監督 ブライアン・シンガー
出演 ブランドン・ラウス、ケヴィン・スペイシー、ケイト・ボスワース、フランク・ランジェラ、ジェームス・マースデン、エバ・マリー・セイント

こういう映画誘ってくれる友達がいて、最高!
なんか一人で行き難い映画なんだ・・・って、思うのは何ででしょう?・・・もう子供じゃないから?
でも、好きな物は好きだよー。
子供の頃に見ていたからかな?あの時、骨の髄に書き込まれちゃったんだ「ワクワク・スーパーマン大好き因子」があの音楽と共に。
クリストファ・リーブのスーパーマン最初に見た時は違和感あったのに、気が付けばスーパーマンは「彼!」になっていたから、彼の事故の時は本当にお気の毒で、残念で。もう二度とスーパーマンは見られないと思っていたから・・・新スーパーマンの予告を映画館で見た時はショックでした。
しかも驚くほど二人は似ていたし・・・いいのかな?新スーパーマン見に行くのってクリストファーを裏切ることにならないかしら?なんて、まじ!思っちゃいました。
でも、やっぱりスーパーマンは見たかった!
そして見てよかった!
スーパーマンはそれこそ不滅にその時代時代にヒーローであり続けるということが目に見えるように納得できちゃいました。
この映画、本当に素直に感動できました。感動しちゃったんです!
物語そのものがいい感じでしたし・・・!
「クリストファーの子供」に受け継がれたような気がしてしまうくらい、ブランドンが自然にスーパーマンを感じさせてくれましたし・・・!
ロイスと飛ぶところだけでなく飛行するところ全てが・・・何というか静寂を感じさせるんですよねー・・・「静けさへの飛行」とでもいいますか。美しかったですねー。技術の勝利!進化していましたし。その飛行時の映像、昼のも夜のもどこのも・・・全部本当にきれいでしたよねー!
他の映像もCGっていうんですかねぇ?とても楽しめました!
いつもどおりのレックス・ルーサー、ジーン・ハックマンに替わってケヴィン・スペイシー、言っちゃァなんだけど・・・一寸は利口に?もっと悪く?なんて予告編では思わされたのだけれど、何のことは無くやっぱり・・・アハハ・・・お約束通り?恐くなったのは頭だけ?
私的にはフランク・ランジェラの編集長が嬉しい!
恰幅のいい、いいおじ様?になって、しかも相変わらずの大きな印象的なお目々の目力!
で、もう一つ私的には永遠の謎。 「なんでロイスなの?よりによってなんでロイスなの?」子供の時からずーっと、こう思いっぱなしなのよ・・・なのに、今回のロイスは今までで一番キレイ。それに、こうなっちゃ「なんで?」なんて思っていてももうしょうがない?すっぱりと諦めます、許す!
今度は父子の飛行が見られるのかなぁ・・・そうすると「スーパーマン新世紀」だね。見たいなぁ・・・!
それにルーサーがキャサリンだっけ?あの女に又裏切られても(彼女のおたおたしている感じ好きだな)、彼女とズーット一緒なのがなぜか嬉しい。ルーサーらしく?暴力を振るったりせずに、あの美しい無人島で仲良くのんびり足を洗われているところなんか・・・なんか良かった!しなぁー。
あと、お願い、クラーク。回復したらとりあえずお母さんに顔見せてあげて・・・。
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父と暮せば

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監督  黒木一雄
出演  宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

ここ数年体調を保っていた父が今年の夏は元気が無く、ここ2月も上京していません。あの映画好きが、映画も「「ゆれる」見に行こうかなぁ。「回天」(出口のない海)見に行こうかなぁ・・・」と言ったきり、行っていないようです。香川照之さんファンなのに、横山秀夫さんの本のファンなのにね。
その父が月初めに「お彼岸に(母の)墓参には何とか上京するよ。」と電話をかけてきました。
「これで少しは安心?」と、思っていたら、又「その折には「紙屋悦子の青春」を、又岩波ホールに見に行こうな。」と、一昨日又電話してきました。
自分で予定を立てて気力を振り絞っているのかなぁ・・・?
岩波ホールと言えば、前回は・・・「父と暮せば」でしたっけ。
黒木監督といえば私はまだ「TOMORROW明日」と「父と暮せば」の2作品しか見ていないというのに、残念なことでした。ご冥福をお祈りします。
ですから「紙屋・・・」を見れば3作目ということになります。
この「父と暮せば」を思い出しましたので書いてみます。
父と娘が見に行く作品としては妙にぴったりのようで?なんとなくそこはかとなく照れました。
父の情愛と娘の父への思いが日常的な楽しげな何気ない会話の中に浮かび上がって来ましたっけ。
広島弁は全くといっていいほど初めてでしたので、上手いかどうかということはともかく、りえさんの優しく透明な声で可愛らしく語られると、なんとも言えず娘の心根の慎ましさが匂いたつようでした。
目のくるくるした動きと声の弾み方が連動して心の波のさざめきや、この娘が元々持っていたに違いない明るさまでもが、いじらしく表現されているようでした。
被爆した挙句に、こんなにも悲しくいじらしく慎ましく自分を責め自分を戒めて幸せに背を向けているなんて・・・声高にアメリカの仕打ちをなじるよりどんなにかあの原爆が引き起こした無残さが心に迫ってきたことか。
土壇場で父を見捨てて逃げた事で自分を責める時の、娘と父との遣り取りにやりきれない涙を浮かべずには居られなかったでしょう?
「TOMORROW」もそうでした。
小さくささやかに日常を描写して重ねていって、そのいじらしく生きていた人たちにどんな明日が来たことか!胸を鷲づかみにされた感じでしたものね。
父が原爆の日の事を舞台で見栄を切るように話す一人芝居風の語りがありましたが、その中で「母のお乳を飲んでいた赤子・・・」のところで「TOMORROW」の桃井かおりさんが演じた若い母親、ちょうど赤ちゃんを産んだばかりの・・・を、思い出しました。
こうして黒木監督は見るものの心に一枚一枚の薄紙を重ねるように反戦の意志を強くさせてくれるんだなぁ・・・凄いなぁ!と、思ったことでした。
映像が出来る限りの最高のメッセージをしっかり見る人に送り届けたなぁ・・・と、思ったものでした。
その監督の遺作です。「紙屋悦子の青春」また父と見に行くことが出来るのもありがたいことですし・・・「楽しみにしている」と言うのも変な映画の様ですが、どんな事をおっしゃりたかったのかなぁ・・・と。
そして監督に「私の見たこの2作ほど、原爆について考えさせたものはありません。」と言いたいと思いました。
そうそう「父と暮せば」は原作は井上ひさしさんで舞台もあるのですね?父と娘誰が演じたのでしょう?
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ユナイテッド93

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監督 ポール・グリーングラス
出演

「9・11」のテロそのものにも色々な意見・見方があるようですが、
ここは素直に「9・11で亡くなられたすべての人に捧げる」映画と受け止めて見に行きました。
あの時の恐ろしい映像は今でも未だ脳裏に鮮やかです。
そして見終えた今、
あのテロで亡くなられた全ての人々と、その報復を果たすために派遣されて亡くなられた全ての人と、あのテロのことなど全く知らなかったにもかかわらず、アメリカの報復のために殺されたすべての人々、あの事件の余波で苦しむ全ての人に心からの冥福をお祈りし、お悔やみを申し上げたいと思います。
何にもならないことは承知で心から悲しく思います。
この憎しみの連鎖を断ち切る術など思いもつきませんし、その根を正す方法も全く分かりません。
ただただ悲しい世界だと思います。
たとえこの事件の裏がどんなものだったとしても、現実に人が沢山亡くなり、互いが互いへの報復が正当化され今も続いているのですから。
「ユナイテッド93」に乗り合わせた人々、状況をつかみきれないまま右往左往する人々の表情を見ているうちに、本当に一人一人は普通の人々なのに・・・犯人も含めて・・・ということが迫ってきて、私が生きているこの世界は一体どうなっているのだろうと、私は座席で手をこまねいて、何も見ずに暮らしている自分を感じていました。
何時何に巻き込まれてもおかしくない時代に生きているのですよね?
家族への最後の電話にすがりつき「愛している!」と必死に伝える人々を見て、有事の際の最後の伝言に涙を流すのはこれが最初では無いことに気が付きました。今も!いつまでも?人は同じ事を繰り返し続けているのです。
私だったら・・・「ありがとう。」しか出てこないだろうなぁ・・・と。
それでも繋がっている向こうの誰かに必死で何かを伝えようとするのだろうなぁと。
「この映画見に行かない?」と誘ったら、「行かない、恐いもの。男って戦争が好きで人を殺すのが好きなんだよ、結局。そんなもん一人でどうぞ。」って、言われちゃった。
女護ヶ島に暮らす気はないんで・・・思っちゃったのだけれど。
「家族を守るためだ!」ってそれぞれの男たちが武器を手にした時に「守らなくていいから、誰も殺さないで、一緒に死のう(殺されよう)!」って女たち皆が言えれば・・・そういう家族が増えれば争いは何時かこの世から無くなると思う?
女が「あなたって強そうで守ってくれそう。素敵だわ・・・」なんて男を鼓舞したり、夫の、または子供の「敵を取って!」って男にすがりついたりしなければ、戦いの連鎖はそこで終る?
それにしても、アメリカは自分の国でテロが起きた時に、ああなす術が無かった・・・、またはすべきことが決定できなかった・・・、またはやっぱり後処理(それも間違った!)しか出来なかった・・・って事を思うと日本に向かってくるテポドンに、間に合うように何か出来るとは思えないな。
テポドンを打ち込みたくないと向こうが思えるような「いい関係」が築けないなら・・・日本は政策を誤ったと言うことかも知れないけれど(最も私はあの国は得体がしれなくて、恐い)、それならそれで自分の失敗は自分であがなう気でいなくちゃならないのかもしれない。他人の妻子のために命を懸けるか?っていう問題。
どこかよその国に守ってもらおうとか、誰かがどうにかしてくれるとか思っていると、武器を手にした「自分の男?」に勢い任せに誤って?殴り殺されるかも!
やっぱり武器が一番悪い!いえ、一番悪いのはやっぱり自分しか見えない人間。
果てしない堂々巡りをしている私です。
映画のエンディングの音楽が、又非常に印象的で、私の堂々巡りを促すようでした。
内省を促すような、喪に服してと訴えているような。
心が木魚を叩きながら祈っているような・・・
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ゲド戦記

映画タイトルINDEX : カ行 No Comments »

監督   宮崎吾朗
出演(声)岡田准一、手嶌葵、田中裕子、菅原文太、風吹ジュン、夏川結衣

見ないつもりの映画、ひょんなことから見てしまいました。
一緒に行った相棒も「私これ見る気なかったのよぅ。」と言っておりましたから・・・本当にヒョンでした。
「あまり評判が悪いので・・・」と言うのが真相です。
「一応話題だからと思って、原作の方だけ読むつもりで図書館に申し込んだの・・・外伝まで入れて確か6冊?ところが2だけ来ちゃってまだ肝心の1も3(映画の原作は3が主体だと・・・?)も読んでいないのよ。で、2だけじゃとんとわかんない!」と私。
・・・と言う状態で、今日映画を見てしまいました。先に言います。
「いいじゃない!そんなに悪くないよねぇ?」が二人の共通意見でした。
で、私が思うに・・・何で悪い前評判を聞き過ぎたか・・・?
「原作の長さからいくと・・・脚本が下手だった。だから思い入れのある原作ファンに受け入れられなかった。」がその1。
その2は「もののけ姫のキャラクターがそのまま出ていたよ。あれは無いでしょ?」手抜き?丁寧じゃない!原作への誠意が不足・・・とか?
それにね、その3「絵に声に監督のオリジナリティが無い!」感じがするんだけど?「ジブリ」ですっていう線で押した!のかなぁ。時間が足りなかった?なんだろなぁ?
おまけに歌もね。「千と千尋」もそうだったけれど、歌はとてもいいよね、その声の魅力も十分認めるけれど、息がちょっとね!くたびれない?
「その点ハウルは安心して聞けたよね。紅の豚も!」
「それをいうなら千と千尋とこれ以外は皆良かったと思うなぁ。これは素人っぽさが大事だったんだよ、きっと。」
「いい曲だったからチョットもったいないような気も確かにするね。」
その4、それに科白の説明がきついよ。自分で説明しちゃっているから・・・聞くほうは「ああ、そうなんですか?」「そうだったんですか!」になっちゃう所があるよね。
登場人物が何もかも話さなくても伝わるものがあるというのが映画だよ。
でも、総じて私は楽しめました。
それなりの物語になっていましたよね・・・。
テルーとテナーと名前が間違えそうだけど・・・それに「結局テルーって、本当は竜なの?」と二人で「ハモッタ!」所を見ると、今ひとつ私たちは事情を飲み込めていないようでした。
「だってさ、親に虐待されてやけどの跡があるって言ったわよねぇ?」
「ゲドの魔法ってことあるかなぁ?それとも虐待した親って竜?」
「アレンってさ、国に帰ると国王・父殺しで磔だよね?」
「そうか!今頃新しい王が即位しているだろうしね?」
いやきっと、ゲドがここで働くのですよ。でなくてどこが大賢人なのでしょう!
結果?新しい秩序の回復の功労者としてアレンは英雄になる!
さて、物語は結局本を読まないと分からないようで・・・。
真の「名前」を伏せているところ・・・昔の日本の天皇みたいだね?
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3人の先生

映画タイトルINDEX : サ行 26 Comments »

素敵な先生が3人居ます。
一人は「チップス先生さようなら」1969年のチップス先生。
ピーター・オトゥールが演じました。
一人は「今を生きる」1989年のキーチング先生。
ロビン・ウィリアムズが演じました。
一人は「卒業の朝」2002年のハンダート先生。
ケヴィン・クラインが演じました。
どの先生も忘れられません。私が学校で習ったどの先生よりも先生らしく、どの先生よりも印象的です。
理想の先生でしょうか?いいえ、そうとは言い切れないかもしれません。でも魅力的です。

一番若い時に見た先生だからでしょうか、一番長く心に住み着いているからでしょうか、チップス先生(チッピング先生)がやはり一番好きです。つくづくイギリスの先生だなぁと思います。
チップス先生は伝統を身に纏い生徒におもねらない静かな先生です。
取り分けいい科白を言うわけでもありませんが、その佇まいこそがそのまま教えになる先生で、生徒を見る眼差しが優しくて、生徒に愛情を抱いていて、教えることが好きだと無言で語りかけています。
その生徒たちが先生をからかい、その先生の当惑した表情に生徒が自分のしたことに恥じ入るところが私は好きです。そして妻に校長に昇進した事を話そうとしてひた走るところで泣けます。滑稽な姿なのに・・・どうしてもここで泣けてしまいます。老いたチップス先生が学校で静かに生徒たちを見つめているところが好きです。チップス先生の表情・震える指・・・忘れられない心に染み入るシーンがあります。
高校の時の先生が言いました。「いい先生の一番の条件は知識があることだ。聞かれたことに答えられるのが先生の第一条件だ。」と。
そうかも知れませんが、チップス先生を見ていると生徒に人格を感じさせられるのが先生の第一条件ではないかという気がしてくるのです。先生の無口な温かさが伝わってくるようです。

次のキーチング先生は語る先生です。生徒を啓発し、理想を抱かせる先生です。意欲や行動を呼び覚まし、触媒になる先生です。
でもこの作品では一人の生徒が自殺をしてしまいます。それがこの作品を後味の良くないものにしていると思いもします。でもこの先生を見ていると、これが先生というものだと思わされてしまいます。
働きかける先生にはこういう不幸な出会いも起こりうるのかもしれないねぇと。でも「こんな先生に出会いたかった!」
生徒の心や行動に意欲を持たせ目指すものを探す「ステップ」になる事こそ先生の使命でもあり生きがいでもあるのだと頷いてしまいます。特に最後は圧巻です。気弱で意思表示もろくに出来なかったイーサン・ホークが演じる生徒が立ち上がるところで、ここで私は泣いてしまいます。
先生冥利に尽きるのではないか・・・と。学校から追われるキーチング先生に「先生を辞めないで、もっと沢山の生徒を育てて!」と言いたくなるのです。生徒を魅了してやまない先生は私の心も魅了しました。ロビン・ウィリアムズが生徒に向ける豊かな表情と目の中の愛情がとても素晴らしくて、彼のもう一つの「グッド・ウイル・ハンティング」の先生とともに忘れられない先生像となりました。

そして、最後のハンダート先生は一寸複雑です。好きになれるでしょうか?う~ん!
この先生は悩む先生です。生徒を導いていい感化を与えたいと願っており、そうできると思い、過ちをも犯す先生です。先生の感化力と自分の理想を過信します。でもこの先生は生徒に愛される先生でしたね。ハンダート先生の理想のために不当にコンテストに出られなくなった生徒のうなだれる姿に先生が何か声を掛けるだろうと思ったので、私は失望しました。先生がそうまでして感化しようとした生徒は結局最後まで心の向上を見せずに先生の理想は潰えたかに見えましたけれど、めぐり合ったあの生徒に遅ればせに彼は謝りましたね。その生徒が良い道を歩んでいたことにその時私も救われたような気がしました。「教育に出来ることは少ない!」ということをこの映画は言っている様でもありますが、先生も良い資質の生徒とどうにもならない生徒とにめぐり合っちゃうんだと少々おかしくも思えました。でもこの映画が心に残るのは、先生が一生懸命先生をしようとしていたからだと思います。先生としての格調が高いといいますか。やはり「先生」ですね!
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おしゃれ泥棒

映画タイトルINDEX : ア行 353 Comments »

監督 ウィリアム・ワイラー
出演 オードリー・ヘプバーン、ピーター・オトゥール、ヒュー・グリフィス、イーライ・ウォラック、シャルル・ボワイエ

また、先日「おしゃれ泥棒」BSでしましたね。
私は基本的にスカパーとか映画チャンネルとかは見ませんし、レンタルビデオも借りません。
それをしてしまうと際限もなく映画にのめりこんで何もしなくなりそうな予感?がするからです。
だから、衛星1・2までが守備範囲と決めています。
私が自分にかけた「枷」です。自分の弱さはそのくらいまでは理解しています?だからTVの映画放映が減ってくるのは脅威です。
この範囲でなら映画を楽しむのは「よし!」ということにしているので、こういう大好きな映画をTVでしてくれると嬉しくてやっぱりまた見てしまいます。
TVでしてくれる時が「運命の出会い!」って、大げさですかね?
先日の「秘密のかけら」は私の好きな俳優さんの組み合わせでわくわくしましたが、「組み合わせで最高!」といったらもうこの映画に尽きます。
オードリーとピーターなんですよ!この二人なんですよ!
私にとっての最高峰の二人なんですよー!
オードリーはその笑顔からすべての表情がもう可愛らしくて、エレガントで、どこを切り取っても素敵・チャーミングと言う言葉がこぼれ落ちてくるみたいでしょ。
そして私にとっての最高の男優は勿論ピーターですが、彼のこの映画のとぼけた味わい!もうなんとも言う言葉がありませんね。
オードリーが言ったように「青い目の背の高いハンサム!」。この言葉を絵にするとピーターですもん!
この二人の会話のテンポのいいこと!おしゃれなこと!とぼけたこと!「!」をどれだけ連ねたって私の気持ち表現できないわ!って感じです。それにこの映画に出てくる人、皆おかしいったら無いんですもの。「面白いおじさんばっかし!」って思っていたのに、今じゃ私が皆さんのこの映画内時点?での年齢を抜いちゃいましたよ!嘘ッ、まだですよ?
それにオードリーの着ている物、ジバンシーですって?私にはファッションとしては手の届かないものですけれどね、これがどんなにオードリーに似合って引き立てているかは分かります。って言うより本当はオードリーがこのファッションを引き立てているって言うのが本当ですよ。どのスタイルでもこの映画の中のオードリーは本当に素敵なんです。(お掃除オバサンだって可愛いッたらないんですけど)
あのびっしりつけまつげに彼女の眼絶対負けていませんものね。あのまつげのひらめきがどれだけ効果があるか・・・ぽわーんとした目で見ほれている私です。
そして目と言えば・・・あのチョコット垂れたすっとぼけたあおーい、青い!ピーターの目。跳び込めれるものなら飛び込んでおぼれたいですよぉ。
それに場所はパリですよ。美術品?満載ですよ。
リッツのあるヴァンドーム広場。ちゃんとパリに行った時見てきましたよ!小さいけれど、きれいな優雅な広場でしたもん!黒いレースのマスクをしたオードリーとピーターの笑えた場面、思い出しながら逍遥したんです。
映画を見ながら「おー、ここ私も歩いたぞ!」っていう楽しみも少し出来たので、なお更嬉しくて、またTVでしてくれますように・・・!と、見るたびに思うんです。
そして変わらないピーターを見ると私はロマンスの海に溺れられるんです。轟沈!

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