敵こそ・わが友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~

映画タイトルINDEX : タ行, 未分類 398 Comments »

tekikoso.jpg  tekikoso1.jpg

tekikoso2.jpg

 監督  ケヴィン・マクドナルド

ドキュメンタリー
ナチの戦犯の一人の、戦後逃げ延びて長寿をまっとう?した男の人生を丹念に様々な立場の人の証言をもとに構成した作品だった。
あらゆる戦争の度に繰り広げられる裁きと復讐の一つの典型だろうと思った。
見終わったときに最初に思ったのは「圧倒的に国って悪い!」「国は怖い!」「国は厭だ!」ということだった。
戦争が起こればその過程で勝っている方が負けている人民にすることは何時いかなる戦争でも同じだ。そのまま勝ち進んで征服してしまえば起こらないかもしれないことだが、その成り行きが覆った時には必ず復讐・報復、こういうことが起こる。しかも歴史はその繰り返しに尽きている気配。
拷問のスペシャリストで子供を含め多くのユダヤ人を死に送り出した男を、娘は「いい、やさしい父親だ」と言う。これも何時もどこでも繰り返される言葉である。
個人ではしないこと、できるはずも無い事を、戦下では出来てしまう。出来ない人間はそこでは無事に生き抜いていくもとができ無くなる。それでも迫害された人間は覆して勝ったとき今度は復讐と捌きを求める。
「殺した人間は殺されてしかるべきだ」もっともだ!
だけどそれが反対になったら?

その世界で、その時点で、よりよく生きようとすれば・・・?
戦争裁判は勝者の復讐に過ぎない。痛められた人間はその代償を求めずにはいられない・・・それももっともだ!どっちが勝ってもやることだ。
個人だったら出来ないことが国の名の下に召集された時、できるようになる。その国の名の下でしたことに個人は責任あるのか?
しなかった人間、心強くも拒否して制裁に甘んじた人間も確かにいる!そこに僅かの救いを感じるが、でもそれは僅かで、自分がそうなれる自信も無い。「・・・するってーと?」と私は考え込んでしまった。
国の名、民族の名、人種の名の下に殺された人を全部計りに乗せてつりあうように同量殺す?
教育の名の下に何時までも恨みを語り継ぎ不和を紡ぎ続けたり、また同じ教育の下にしたことにホッッカムリをする事を続けて、国というものは過去を今にする。

時には神の名の下に。
神があってもいけない!国があってもいけない!そうとしか思えなくなった私だが、特にねぇ・・・大国はもっといけない!

コレラの時代の愛

映画タイトルINDEX : カ行 130 Comments »

korera1.jpg  korera2.jpg

korera3.jpg  korera4.jpg

コレラの時代の愛 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1985)) コレラの時代の愛 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1985))
木村 榮一新潮社 2006-10-28
売り上げランキング : 5747
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

「コレラの時代の愛」

監督  マイク・ニューウェル
出演  ハビエル・バルデム、ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、ベンジャミン・ブラッド、ウナクス・ウガルデ、カタリーナ・サンディノ・モレル、ヘクター・エリゾンド、リーヴ・シュレイバー、ジョン・レグイザモ、フェルナンダ・モンテネグロ
「あの日の指輪を待つきみへ」を見に行った時、その友人と「次回はこれね。」と決めていました。でも、気持ちの中では「予告編を見る限り、限りなく主人公の行為はストーカーに近い感じじゃない?いやな映画になるかも?」って危惧していました。
ところが見終わってみたら・・・「良かったじゃない、いい映画だったわ」でした。わからないものですねぇ。期待していた「アウエィー・フロム・ハー」は厭な気分の残る映画だったし、「シャーリー・マクレーンとクリストファー・プラマーが顔を揃えて悪い映画になるはずは無いじゃない?」と思って見に行った映画は何とか若い俳優さんたちに助けられた感じ?でしたし、見てみないと分からないもんだなぁ!「駄目かも」と思いながら行った映画、それも寝坊助の私が9時の早起き映画をですもん、これが「良かった!」となったら凄い得した感じ、1日ウキウキもんです。
もっともアッチコッチ違和感というか、「?」っていうか、微妙に・・・なんかなぁ・・・というか・・・なんかぴたっとしない部分はあるのですが。
「LOVE」というものの遺伝子がそもそも違う!って部分があるのかもしれませんし、コロンビアを舞台の映画っていうのも初めてだし、フェルミナとフロレンティーノって紛らわしくてイタリア喜劇みたいだし?
でも何より主人公の女性を演じたジョヴァンナさんの美しさは予告編を見たときから衝撃的で、なんて美しいのでしょう!ってつくづく見入ってしまいました。年を重ねてもやはり美しくて・・・一生恋わたる男の気持ちが分かるようでしたもの。それはこの映画の場合大事な因子です。ここが弱くてははなっからお話になりません。
手紙で恋に落ち、会って現実に目覚め、大人になって普通に確実な伴侶と結婚し、それなりに添い遂げて・・・51年余り?それが普通の幸せでしょう?その人に影のように纏わり付いて、現とは思われないような人生を揺らめいて過ごした変な男の哀れさ。
時が来たと思い、またそのときに拒絶されてもまだ諦めない思い込みはある意味どうにも理解不能だし、だいたいあの時に出かけていく凄さって・・・なんだろう?って思いますよね。それなのに見終えてよかったと思えたのはやっぱりあの一途さにかなう物はないと思ってしまったからでしょうね。熱に浮かされ続けた53年の歳月の重みにね。
そしてまた手紙で繋いで2年・・・53年目の恋の成就って?その粘り、粘着性は肉食人種じゃなければ無いだろうなっていう気もしますが・・・「もう負けた!」としかね、思えないです。それにしても何処も恋の始めは普遍的、可愛いのですね。
フェルミナの73年間は普通の女性の歩んだ年月、異常なのはフロレンティーノの歩いた53年の軌跡。背中が曲がり髪が白くなり老いていくほどに私には彼の生き様が不気味に思えましたけれど、母が息子の恋を理解し共に苦しみ助けようとする様には妙に心打たれるものがありましたね。愛というものの概念と、愛に対する寛容さの違いにある国民的気質?に気押されてしまった感じでしょうか。
恋なのか妄執なのか・・・恋が成就するのに要した年月は・・・日本だったら、日本のあの頃だったら、骸骨にさらさらと風が渡っている頃ですねぇ・・・
彼女のお父さんを演じたジョン・レグイザモという俳優さんERのヘリ事故で亡くなったドクターですよね?コロンビア出身なんですね。後、印象に残ったのはフロレンティーノの少年期を演じた俳優さんの目の生き生きした若さでした。
 

帰らない日々

映画タイトルINDEX : カ行 No Comments »

kaeranai.jpg  kaeranai1.jpg

帰らない日々 (ハヤカワ文庫 NV シ 26-1) 帰らない日々 (ハヤカワ文庫 NV シ 26-1)
高瀬 素子早川書房 2008-06
売り上げランキング : 191003
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る by G-Tools

監督    テリー・ジョージ
出演  ホアキン・フェニックス、ジェニファー・コネリー、マーク・ラファロ、ミラ・ソルヴィーノ、エル・ファニング、ルーカス・アルノー、ジョン・スラッテリー

交通事故で子供を死なせてしまったのは事故か殺人か?どういう裁きが妥当なのでしょう?どう裁くべきなのでしょう?事故で人を殺した場合の罰の軽さに驚いた人は多いでしょう?
余りに身近に、誰にでも起こりうる状況を描いていて実に辛い映画でした。そう、誰でもどちらかの家族に思い入れして見たのではないでしょうか?運転する人なら誰でも、家族の車に乗せてもらう人なら誰でも。車の無い社会なんて考えられない社会で!
加害者と被害者の生活と思いをこれだけ並べて丁寧に描いていくと・・・もうどちらも悪人ではないのが解かるだけやりきれなくなってきます。
それにしても人を殺しておいて逃げる輩は許されるべきではない・・・と、思いつつ、その場になれば恐怖の余りその場から離れることしか頭に無くなるだろうとも思います。人はそんなに強くばかりもありません。実際裁判で争う飲酒運転の子供を殺した犯人なぞの記事を読むと、裁判で争うな!出来る限りの謝罪と補償に残りの人生を使い尽くせ!とか、いたいけな子供が何人も死んだ余りに悲しい事故なんかは殺したのだから死罪で償なうべき!他に遺族の悲しみをあがなう方法があるかとすら思うことがあります。
先日読んだ東野圭吾さんの「ダイイング・アイ」などを思い出すまでも無く、償って、償って、償って、それでも許しはあるか?と。
しかしこの映画で一番衝撃的に感じたのは子供を失った後の夫と妻のその後でした。最初は自分のせいと自分を責め夫の保護の下、外にも出られず自分の悲しみだけに引きこもっていた妻が、もう一人の自分を必要とする子供の存在に気が付いて徐々に日常に復帰するのと対照的に、妻と残された子供をひたすら守ろうとして理性を保っているかに見えた夫がどんどん悲しみと自責の淵に飲み込まれ引きずり込まれて復讐しか眼中に無くなっていく。男と女の違いはこの場合普遍的なものではなく、この映画の設定にすぎないと思っても、何故か女の現実的な強さに圧倒されて・・・果たして自分もだろうか?と自分を覗き込むような気持ちで見ていました。一番健気だったのは娘でしたしね。
そして償わなければ償わなければと思いつつも、自分と息子との心惹かれる生活に決別を告げられぬまま日々に流されて、償いの日を一日延ばしに延ばしているうちにのっぴきならない時が訪れてしまう犯人の心情も人事ではなくて・・・。
この場合犯人の側に正常な人間らしさがあったからこう結末が来たけれど・・・もし?と思う。もっと恐ろしい結末もありえた状況にまで追い込まれて。「もし?」の方が現実には圧倒的に多いのではないか?逃げ切る犯人の方が多いのではないか?と。検挙率の事を考えてしまう。実際、検挙率を上げることは、犯人の心の救いになる場合もあるのではないか?と。
あちらこちらで絶えることなく続いている現実を目の辺りにした気がして、切なくも悲しい映画でした。
ホアキンさんはずーっと悪人面だと思っていたけれど「ウォーク・ザ・ライン」で彼の演技力の前にひれ伏したのでした。この映画でも犯人を追い求める憑かれた父も見事でした!

あの日の指輪を待つきみへ

映画タイトルINDEX : ア行 239 Comments »

yubiwa.jpg  yubiwa3.jpg

yubiwa2.jpg  yubiwa1.jpg
監督  リチャード・アッテンボロー
出演  シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、ミーシャ・バートン、スティーヴン・アメル、ネーヴ・キャンベル、グレゴリー・スミス、ピート・ボスルスウェイト、デヴィット・アルベイ、マーティン・マッキャン

「紙屋悦子の青春」を思い出してしまいました。殆ど状況は同じでしょ。戦時下では恋人たちは同じ事を思いつくらしい。しかし、今の人は自分の将来のことまで決めておいてもらいたいものだろうか?否である。こんなこと自分の了解も無く決められてしまうなんてとんでもない!だろう。
時代と特殊な状況下の一つの心のありようとして理解しようと思えば出来ないことは無い。しかし救いの無いのは死者との約束だ。
誠実な人であればあるだけ、破約出来ないだけに縛られてしまい、その苦痛はいかばかりだろうと思う。「紙屋・・・」の場合は日本人的な、余りにも日本人的な・・・という情の絡ませ方が切なさに通じてやるせなかったが・・・アイルランドにも古風な情の世界はあったということだろうか?新婚の夫は出征前に自分が死んだら妻の面倒を見る、幸せにするという事を友人に約束させる。約束した友人はそれを守る、自分も愛していた人だから・・・でも彼女は?娘の非難がその過ぎてきた彼らの生活を物語っている。そうまでして守った約束に生かされることは無く、彼女の夫の亡くなった後の彼女の自堕落な姿勢は約束の抜け殻。娘も生まれて幸せな時が無かったわけではないだろうに、シャーリーの死んだ表情が約束を守ることに費やした時間の疲労を物語っている。だから若い時の彼女を演じたミーシャさんがあれほど美しく魅力的でなかったら・・・約束は何処かで破綻していたかもしれないのにね?でもそうしたら彼女たちの心はもっと傷ついていたろう。少なくとも夫になった青年は約束を全うすることが出来たし、愛した人と暮せたのだから。でも、死んだ心と?あーいやだ・・・とてもロマンチックとは思えないと帰って来たのだ。ラストが救いに繋がることは理解できても。
死に行く兵士とした約束につつかれながら生きてきたアイルランドの男の生き方は賞賛できても、自分も愛しているといえなかったジャックはどうだったんだろう?そしてだからこれからどうなるとも思えない・・・でも自由はやっと手元に・・・まぁほっと出来たろうね・・・「戦争って、だから・・・」と、ロマンスには乗りそこなったけれど、戦争なんてあってはならないのだとは強く思った。戦時下に始まって終わりも紛争の中。人が争い続ける限りこういう物語は戦争が生み出したあぶくのように生まれ続けるのかな?
テディを演じた人を見ていてなぜか「ウエスト・サイド物語」のリチャード・ベイマーを思い出した。妙に甘い美青年だけど私はジャックの青年時代を演じた人が好きだな。あの時もチャキリスさんが良かったように。シャーリーさんとか、クリストファーさん(変わらないよねー)とか古い俳優さんがしっかり仕事をしているのを見られるのは凄く楽しいし、若い俳優さんがどんどん素敵になっていくのを見るのも楽しい!だから映画は止められぬ。

あの日の指輪を待つきみへ (竹書房文庫 DR 206) あの日の指輪を待つきみへ (竹書房文庫 DR 206)
脚本:ピーター・ウッドワード竹書房 2008-07-10
売り上げランキング : 67952

Amazonで詳しく見る by G-Tools

Design by j david macor.com.Original WP Theme & Icons by N.Design Studio
Entries RSS Comments RSS ログイン