おくりびと

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監督  滝田洋二郎
出演  本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、吉行和子、笹野高史、杉本哲太、峰岸徹

友人に誘われて出かけました。一人だったら行かなかったでしょうから、彼女に感謝です。「落語娘」で、早々と今年の邦画を棚卸し始めたのはやはり早とちりでした。彼女が言うには「「容疑者X・・・」も来月封切りよ。」だそうです。まぁ、落ち着いて見ればまだ丸々今年も3ヶ月残していました。封切り直後の銀座のレディスデー、満席でしたが、もっ君ファン?
いい映画でした!
美しさが印象に残っています。
山形の主人公の田舎の一年の季節の景色の美しさ!
それに意外なくらい様式に徹した?納棺師の仕事手順の所作が美しく見えたのですよね。
丁度茶道の布巾でお茶碗を拭くときのような?柄杓で湯を掬うときのような指や手の動きですか。
京都でヘルパー修行をしていたとき、あと少しの実地訓練で資格が取れるという時に転勤になって残念だったのですが、あの時寝たきりの方の着替え・清拭の練習は上手になればなるほど無駄が無く、綺麗に見えるものだと、教えてくださる方の手によってその方の習熟度が見えたものでしたっけ。そんな事を思い出しました。
美しく出来る方がするほうの人の体も楽なんです。
大事にていねいに扱われる死者の方とそれを見守る方々の表情で、死が静かに受け入れられていくのが見えるような気までしました。
そういえば私は納棺師の仕事見ていないのです。
母が亡くなったとき母の脇にいたのは私一人でしたが、直ぐ長男の奥さんが母に着せる着物を持って飛んで着てくれ、彼女が付添って母が病室から出された後、病室の後始末をしていた私は、その後実家に帰ってみると母はもう好きだった着物を着て納まっていました。
あの間にこんな儀式があったのかしら?それとも病院で亡くなった方は直ぐお棺に納められるのでその過程が慌しく行われて、あの厳粛な光景はもう余り見られないのかしら?そんなことに気が付かなかったなぁ・・・「今度弟に会ったら聞いて見なくちゃ・・・」と、思ったのですが。もしそのような儀式(儀式と見えました!)があったのなら、家族全員が皆揃うまで待っていて欲しかったなぁ・・・と思います。
物語の中にちりばめられたいろいろな死や彼と妻の変化、山崎さん余さん高野さんの落ち着いた味わい深い演技と、すべてがしっくりして、あの山や田んぼを背景とする演奏の姿までが違和感無く収まりました。キスマークだらけのおじいちゃんのような死に方が出来ますように!死の現場を描いて、ほっとするようないい余韻があります。

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この自由な世界で

映画タイトルINDEX : カ行 210 Comments »

「この自由な世界で」

監督  ケン・ローチ
出演  カーストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワス・ジュリック、ジョー・シフリート、コリン・コフリン、レイモンド・マーンズ

この監督の「麦の穂をゆらす風」という映画が私に忘れられない印象を植え付けたので、その時も何もできない自分を再確認しただけだったのだけど、なんと不遜なことに!やっぱりたまには目を開かせていただかないとただただ怠惰に流れる自分を知っていますし・・・考えるだけしか出来なくとも、でもそれは必要なことではないか?という気もするし・・・。というわけで出かけました。
そしてまたあの時と同じように、私は自分の住む安易な時と場所に何もできない自分を見出して忸怩としています。
だって、この安全である程度満ち足りている生活は、絶対何処かで何かを踏んずけていることは意識できますもの。
隅田川を下ればブルーテントの膨大な居住者、ニュースを見れば金日成の死亡如何ではの緊迫した北朝鮮の難民の話題、アメリカの底知れなくなりそうな世界中を巻き込む恐慌、その社会でとりあえず安穏としていられる者は搾取している側でないと言い切れますか?
というより、この映画を見た後では自由社会は搾取自由社会ということですと思いしらされます。「何をしても自由」という世界があっていいはずはないのに、弱い者も、もっと弱いものから搾取する自由。それに気が付いてしまった、その泥沼のうまみを知ってしまった主人公が怖かったです。
付いていけなくなって袂を分かった友人も、掴んだ金は手放さなかったですものね。人は手に入れた、それも自分の才覚で手に入れた物はなかなか離せるものではありません。こんな怖い思いをしても、彼女はまだ何とか自分の才覚を頼ってやっていける、搾取できる弱者はそれこそ世界中に山のようにいると言う事を知ってしまっていますから。父母のようにつましく生きる生活にはうんざりしている。自分を生かしてくれなかった男会社には目に物を見せてやりたい。
自分は踏みつけられたのだから今度は踏みつけるものがあればそれを土台に・・・金!金!金!に縛られていることにはもう気が付くことはなくて。この哀れな連鎖、彼女から取り返した男たちもその上にそびえる社会には何もできない。出来る範囲は自分の力で抑えられる範囲。巨大な社会の仕組みの前には彼らの力は無力過ぎる。どうしてもこの連鎖は切れない、ここで彼女がつぶれても、また何処かで彼女と同じ人が生まれる・・・それが重なり合ってその仕組みの上に無意識の人々が乗って複雑怪奇に世界は回っている。自分はどこのどんな駒なのかもう分からない・・・でもそこに生きている、その上に安穏をむさぼっている。なんとおぞましい!と思いながら同情も共感も哀れみもさげすみも何の意味もないと思いつつ、それでも彼女の生きる強さ、逞しさに圧倒されて、「凄い!}と思い、ただただ感歎する私も確かにいる。

二作見ただけだけれど、この監督は演技者を選び出す才能が凄い!

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