理想的な音楽教師

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先日「敬愛なるベートーヴェン」を見てきたせいか、思いっきり年末はやっぱり第九よねという感だったくせに、結局はスティングを聞きながら掃除している。合間はクィーンだ。
私の年末はつまりマンネリ!
もっと音楽を「様々なジャンル好きになりたかったな!」・・・と、思って「そうよ、私の音楽の先生があの先生みたいだったらどんなにか良かったのに・・・!」
勿論ご存知ですよね。理想の音楽教師といったら

「陽のあたる教室」1995年アメリカ
監督  スティーヴン・ヘレク
出演  リチャード・ドレファス、グレン・ヘドリー、ジェイ・トーマス、オリビア・デュカキス、W・H・メイシー、アリシア・ウィット、テレンス・ハワード
の、グレン・ホランド先生。

「ミュージック。オブ・ハート」1999年アメリカ
監督  ウェス・クレイヴン
出演  メリル・ストリープ、アンジェラ・バセット、グロリア・エステフアン、エイダン・クィン、クロリス・チーマン、キーラン・カルキン
のロベルタ・ガスパーリ先生。

この二人、音楽への情熱と教師としての資質が共通している上に、教育予算のカットが情操教育である音楽を直撃するという現実。そこにホランド先生の場合は息子の難聴、ガスパーリ先生の場合はスラムの学校という難問が背負わされる。
音楽の素晴らしさを信じ(音楽を愛し)、教育の理念を信じ、育てるという情熱を失わず、困難に立ち向かったという点で共通点を感じさせる二つの映画でした。
そして感動の質という点でも共通していました。
教職者という人への尊敬の念!音楽という情操教育の尊さ素晴らしさ!に目覚めますよね。
最後の感動!!!
素晴らしいどんな芸術家を描いた多くの映画をも完璧に凌いで、ここには地に足の付いた誠実な努力が生み出す感動が有りました。
一人の教育者の出来ること!その素晴らしい情熱の力!音楽が生み出す力と希望!
音楽や美術の教育に手を抜いては絶対いけません!と思いましたね。
子供を本当に育てるのはこういうものなんだって。
私にも一人忘れられない音楽の先生がいます。中学の時の音楽の先生です。
声楽科出の先生は豊かなボリュームと豊かな声量で私たちをいつも陽気に圧倒しましたが、東京都の合唱コンクールの参加チームを選抜する時なぜかその先生は私も選抜したのですよね。
自他共に認める音痴の私を。メゾソプラノに組み込まれて当惑しまくりましたっけ。
そのチームは台東区で優勝して都の大会へまで出場しちゃいましたが、私は殆ど口パク状態でしたよ、白状すると。でもそのおおらかな先生は後で「可愛いいあなたを前においておくといい効果が期待できたのよ。おほほ!」ですと?確かに私は学校1のチビでした!
先生は私に合唱の楽しさを教えてあげたいと、音楽に臆病な私のために一考してくれたのかも知れませんね・・・と恥ずかしさを乗り越えた時になってやっと思いましたっけ。
おかげさまで音痴は治りませんでしたが、あの時練習した歌ニ曲はかなり?上手く?歌えるんですよー、おほほ!今では「はずかしたのし」思い出です。
音楽はホントいいなぁ!
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映画館

映画についてのコラム 147 Comments »

師走の声を聞くと思い出すのが浅草の賑わいです。
子供の頃の楽しみは浅草の映画館街へ行くこと、観音様の様々な行事に出かけることでした。
あの頃の浅草ロックや仲見世は人とぶつからないでは歩けないほどの賑わいでした。
父が休みの日に出かけたのですから日曜だったのでしょうが、大人たちの間に埋もれて、大人の背中ばかりを見つめて、目の前が見えない状態で、それでもウキウキとスキップを刻みたいような気持ちで父の手にぶら下がって歩いていましたっけ。
色々な呼び込みの声も楽しく面白く、あの賑わいを越えるウキウキ感は今も無いと思いますね。
妙なエネルギーがありましたっけ。
それでもたまにロードショーなど日比谷有楽町界隈に出かけてゆきましたが、絶対浅草が一番の繁華街だと信じていました。
親とではなく映画館へ行くようになってからなぜか浅草で映画をみなくなりましたっけ。
それにもうその頃は浅草にはスキップをしたいような賑やかさはなくなっていました。
久しぶりで日曜にロックへ出かけて人と肩をすれあわさずに歩けることに気が付いて驚いた日の事を不思議なくらい鮮明に覚えています。紙くずと埃が木枯らしに吹かれて足元で渦を作っていましたっけ。
いつの間に浅草はあの賑わいを失っっていたのだろう?
でも今考えてみれば、私ですらその頃は浅草へ行くことが稀になっていたということですねぇ。
今、ヤフーで劇場を検索すると浅草で23館出てきます。
といっても、劇場そのものは、浅草新劇場、浅草中央、浅草名画座、の3つですか。
シネマメディアージュとか、シネマコンプレックスとか、ユナイテッドシネマとかシネマートとかいうもののように一館に幾つもの劇場が入っているようなものなのでしょうね?
しょうね?って、そうなんです。
40年以上も?浅草で映画見ていないんですね。
最後は「東京オリンピック」を学校から行列を作って出かけた時かしら?
一人で行くならなるべく家から近いところを目指しますし、友人と行くとなったら圧倒的に銀座界隈か新宿界隈です。
浅草に懐かしい愛着を持っている私ですら、浅草の賑わいに引かれることがなくなったことにこの師走気が付いて、(風邪引いて籠もっていたからですよ)妙に淋しくなりました。
つくばエクスプレスの駅が出来て賑やかさを取り戻せたのでしょうか?
25年ぶりに東京へ帰ってきて観音様へ初詣に行って、長すぎる行列にびっくりしましたが、その行列はおとなしくて昔のあの賑やかさから程遠い印象でした。
人は確かにいっぱい出ているのに・・・何が違うのでしょう?
友達と
「映画に行こう?」
「うん、じゃァ浅草で会おうか。」
「うん、浅草がいいね。」
なんて会話してみたいなぁ・・・
もみくちゃになっていたのにあの頃の浅草の賑わいははちっとも怖くなかったのに・・・
そういえば先日、真新しいユナイテッド・シネマでレディス・デーに「エラゴン」を見ました。413席の劇場に客は私を入れて9人でした。
つまり私以外は4組のカップルだけで・・・しかも一組は最後列のカップル席に埋もれていましたから、私一人の貸しきりかと思えました。
うーん、贅沢って?いやーそれが妙に侘しいものがありました。
「エルビス・オン・ステージ」を有楽町で立ち見でしかも潰されそうになって見た時が懐かしく思い出されました。あの人いきれと高揚感と!
映画を見るのに最適の環境と最高の気持ちって結構難しいですよ?
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敬愛なるベートーヴェン

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監督  アニエスカ・ホランド
出演  エド・ハリス、ダイアン・クルーガー、マシュー・グード、

芸術家を主題にした映画はかなり厄介!
いつも色々思い惑うのです。
「アマデウス」然り、「ポラック」然り、つい最近では「クリムト」然り!でしょ?
ああ、「レンブラント」を描いたいい映画があったけど・・・
でも、年末に第九を中心に据えたベートーヴェン映画と来ればやっぱり引き寄せられる。
この年末第9を聞く予定も無いし、映画の中の第9は圧巻という噂も聞くし?
日本人が何故「年末には第九!なのか?」という命題はさておき。
ところがピアノ教師をしている知人が試写会へ行ってきたというので「いかがでした?」
「ベートーヴェンの尊厳を傷つけられたようで腹がたったわ。あんな女性に指揮されたり動かされたり・・・そんなはず無いわ。」
でもある音楽家が新聞広告で「感動的だっ!」て長口舌振るってたし・・・やはり芸術家物は難しい。
なら自分でとりあえず見るさ!
ベートーヴェンの難聴が進んだ晩年4年間の物語でした。
ベートーヴェンはその音楽以外の人生については難聴の話しか知らない私ですから、物語としては多分一番に彼の人生の劇的なところを切り取ったのだろうなぁと思いますが、エド・ハリスの熱演にも関わらずこれは写譜師アンナの物語でした。
「師弟愛」という素直なものが主題なのだとすると、ベートーヴェンの物語にしないでも良かったのに・・・という気がしてしまいました。
難聴でも、外の不自由でも、とにかく助けが必要になった老芸術家を尊敬し、敬愛する弟子、しかも未だ女性の能力を振るう場の無かった時代に女性の弟子が献身的に尽くし、その結果芸術家はその才能を生かしきった・・・という話として。
それならベートーヴェンへの思いの強い人にも納得が行ったでしょう?そう思ったのはダイアン・クルーガーの美しさがこの映画では生きていた気がしたからです。
この人の「トロイ」のヘレンはちょっと違うという気がしましたが、この映画で天命を生かそうとする毅然とした凛とした女性の美しさを表現していたという点で感動したからです。
だからあの指揮の場に行く時のベートーヴェンの「色っぽいな」と言うせりふはなくともがな!でしたと思います。
ただ23歳のあの時代の女性にあの自信はどうでしょうね。
必然性を薄めるような気がしてしまいましたが。
もう少し人生と苦闘しながら音楽の道を志している女性なら、あのエド・ハリスが造形したような野卑な手ごわいベートーヴェンを理解できるのじゃないかと思ってしまうのですが。
でも、確かにやっぱり年末は第9だ!
全部ちゃんと聞くぞ!ベートーヴェン聞かなくっちゃ、久しぶりで・・・なんて、追い立てられるような気持ちで帰ってきちゃったのです。
エド・ハリスさんて「ポラック」「めぐりあう時間たち」今回の「ベートーヴェン」みたいな芸術家役は確実に印象に残って凄い!のですが、でも私が好きなのは「アポロ13号」「ニードフル・シングス」は別格として、「目撃」「スターリングラード」「ザ・ロック」「ビューティフル・マインド」のような作品に出てきた時の男の魅力みたいだわ。
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エラゴン

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監督  シュテフェン・ファンマイアー
出演  エド・スペリーアス、ジェレミー・アイアンズ、シエンナ・ギロリー、ジョン・マルコヴィッチ、ロバート・カーライル、シャイモン・フンスー、

早い話ファンタジー大好き人間としては見ないわけには行きませんよね。
だから勿論、ドラゴンとジョン・マルコヴィッチとジェレミー・アイアンズを見に出かけてゆきました。
ジョンとジェレミーでは全く違うタイプの顔なのに好きだなんて、我ながらおかしい!でも2人とも好きなんですからしょうがない。
しかし悲しいかな、ジョンの出番はほんの少々・・・でもまぁ、次回作「エラゴン2?」には出番は大幅に増えそうという感触があったから許せる!でもジェレミーはさっさと殺されてしまって・・・「なんだこれでは大人の鑑賞に耐えるところが無くなっちゃうじゃないのさ!」と私は膨れっ面です。ジェレミーさんもちゃんと年は取っていますがいいお顔ですよねー、なのに勿体無い!
エルマーの竜から金龍山浅草寺の金竜の踊りの竜に至るまで、竜とかドラゴンとか聞くと素通りできない私ですから後はもう竜だけが頼みの綱!
青色発光ダイオード以来?クリスマスの電飾も青が主体の昨今、竜も青色が主流なんでしょうか?
面白い竜を楽しんできました。青い卵から孵った青い竜!
しかも完璧におばさん顔していました。驚いた!
ゴジラもキングコングも表情が豊かになって楽しみは増えましたが、オバサン表情の竜はこれまたなかなかいい感じ!なかなかのレディって感じです。
ファンタジーとはいっても私はこの物語は全く知りませんでしたが、「ドワーフやエルフの国の隣」にあるアラゲイシアという国の話として始まったこの話そのものにはちょっとがっかりでした。
「ロード・オブ・ザ・リング」や「ゲド戦記」の2番煎じの予感でした。実際「行かない?」「行かない!」の遣り取りの友人には「残念でした。ロード・オブ・ザ・リングを見直した方がずっと楽しいと思いました。」と簡単な感想を送ったくらいです。
新味に乏しいという感じです。物語・映像あらゆる点で薄いって感じでしょうか。
魔法使いやその操る者のイメージも「指輪物語」のオークやウルクの安物みたいでしたし、言霊のイメージも古い民話などからの借り物の感じが否めませんでした。つい最近「ゲド戦記」で同じイメージ読んだばかりです。
でもね、私はやっぱり物語物語した冒険ものが大好きなんですね。全くどうしてでしょうね?だからちゃんと「続き」も見に行きますよ、何時来るのかな?
主人公のいかにも農民出のエラゴンを演じた坊やは化けるかもしれませんし、早々消えた従弟のお兄ちゃんも再登場アリカモ?だし、あのお姫様日本の女優さんに良く似た人がいますよね(それが思い出せなくて気になってるし)、何よりジョンのガルバトリックス王の竜も出てくるはずなんですよね?竜が鎧兜を付けるんですよ・・・王の竜の戦闘服見ようじゃありませんか?
そう、ドラゴンライダーの世が又首尾よく戻るなら?ドラゴンがもっと生まれてくるはずですよ・・・何匹の竜が見られるかな?・・・なんて、思っているんですが・・・。
新しい本のようですからとりあえず?帰りに図書館で予約してきました。
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硫黄島からの手紙

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監督  クリント・イーストウッド
出演  渡辺謙、二宮和也、伊原剛、中村獅童、加瀬亮

「父親たちの星条旗」に次いでこの映画!
前作以上に感動した!
一緒に見た旦那は「始めから終いまで重かったなぁ!」
戦争の悲しさ、むなしさ、やりきれなさ・・・余すところなく表現されていた。
「ラストサムライ」でやっと外人による日本人を扱った映画が見られるものになってきたな・・・と思っていたが、この映画はその枠を超えていた。
知らなければオール日本人スタッフで取られた映画だと思うところだ、細部に至るまで。
何で日本の映画人はこのような映画を今まで作り得なかったのだろうか?ちょっと無念な感じ。
あの戦争の無謀さ無知さがやりきれないほど胸に迫ってくる。
栗林中将、西中佐・・・これほどの知性や人格もが飲み込まれていった戦争へ傾斜して行く世論、時流!こんな恐ろしい物は無い。
そこが戦争のやりきれないところだ。
彼らの知識を戦闘でしか生かせなかったことがやりきれない。
「5日で終る戦いを36日間凌いだ」というコピー。
一日でも長引かせればそれだけ本土への空襲を遅れさせられる・・・そのために尽くされた人智の悲しいこと。
こんなにさらりと戦争をしている当事者たちの異常を淡々とさらして見せてくれた映画は無いかもしれない。
靖国の事だって何で靖国が問題になるのか若い人たちに考えさせるかもしれない、下手な論調の新聞なんかよりこんな映画の方が。
どっちかが悪者だったり、どっちかに英雄が居たり、どっちかの立場にしっかりたっていたり・・・して描かれた戦争物は幾らでもあったが、この映画二部作では実に公平にどちらの側にも立脚していない。だからこそ戦争はむなしいだけのものだと納得できる。
日本人の投降者があっさり銃殺されるところ、日本人に捕まった米兵が虐殺されるところ、米兵を看護させるところ、否応無く自爆させられるところ、日本人の負傷者が米兵と並んで並べられているところ・・・変に力も入らず同じトーンで見せている。これが人間なんだと納得させられる。
西中佐の南方での戦死は知っていたが、それが硫黄島だったとは・・・。
この映画の視点となった元パン屋の兵士の熱くなり過ぎない視線が淡々と事実を突きつけて、この映画を普遍的な戦争否定映画に昇華するのではないかと思った。
彼の持つ庶民の明るさ逞しさがかすかに匂っていい感じ。
私の今年の洋画3本を選ぶとすればまず第一の指・・・と、思って、はて?これは洋画なのかなぁ?と思う。凄い人だなぁクリント・イーストウッドという人は。「ミリオンダラー・ベィビー」もそう思ったけれどこの人の立っているところは好きだなぁ。好感が持てる。
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椿山課長の7日間

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監督 河野圭太
出演 西田敏行、伊東美咲、成宮寛貴、和久井映見、須賀健太、志田未来、桂小金治、余貴美子、綿引勝彦、沢村一樹、渡辺典子

朝日新聞の連載で読んだ。確か面白く?だから見に行かないでいいな・・・俳優の顔ぶれでなんとなく映画の出来の感じも想像できそう・・・って。
でも鑑賞券頂いたので見に行っちゃいました。
で、良かったです!
私の今年の5本には入りませんけれど。
上手に整理されて素直に表現されて・・・結果素直に笑えて最後ちょっぴり涙ぐんで。浅田さんのいいほうの世界だなとちゃんと思わされて。
西田さんは想像通りで、伊東さんも想像通りで、子供たちが上手で、だけど物語を喰ってもいない程の良さで、小金治さん、余さん、綿引さん、市毛さん出ている皆さんほどがいいのです。
ほどって何さ?といわれそうですが、誰かが特に目立ったり印象が強かったりとかいうことが無くてアンサンブルがいいって感じでしょうか。物語の笑えるところを協調しすぎてもいないし、お涙のところもやりすぎていないし。まるで当たり前の出来事のように?
で、出色なのが和久井さんの中陰役所の世話役さん?これは役得も有るけれど、役と顔と声がグッドマッチ!って感じでしたから笑えもしたし、有り得そうでもあり?
よくあるとりかえばや物語をユニークな物にしている浅田次郎さんのこのひらめきを彼女が生かした!って気がしました。
また、伊東さんの演技は下手なのかもしれませんが下手なのが丁度これまた見事に監督の意図を生かした!という感じです。
上手すぎる女優さんだったら背後の西田さんが死んじゃったかもしれない?でもヒョットするとそれこそが演技の真髄?
殆どが中年以上のこの日の観客、映画館の中に時々広がる笑いも実にほどが良くて気持ちよい。
ある意味可もなく不可もないのかも知れないけれど、最後に思わず眼の中にぽわっとにじんだもののほどが又気持ちよかったなぁ!
しかし人生本当に色々あるねぇ、大変だったわねぇ、それでも椿山さんも皆さんも無事成仏できてよかったねぇ!やっぱり人生棄てたもんじゃないわねぇ・・・私って素直?
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麦の穂をゆらす風

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監督  ケン・ローチ
出演  キリアン・マーフィ、ボードリック・ディレイニー、リーアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド、メアリ・オリオーダン、マアリ・マーフィ

最初から最後までこんなに救いの無い映画ってあっていいのだろうか。70年前から今に、いやもっと以前からズーっと続いている事実のほんの欠片に過ぎない提示なのに・・・。
言う言葉も、考える脳細胞も、この映画のまえでは凍結してしまう。
しかもこれはまさしくイギリスはアメリカ、アイルランドはイラク!
「イラクは内戦状態」でしょ。アナンさんじゃなくとも。
強国の弱国にすることは同じパターンの繰り返し。そして弱国が陥るパターンも歴史が見せるとおり。
そのパターンを兄弟の仲に凝縮して、映画は不滅になったかな?
この監督の作品は初めて。今この作品ということはやっぱりイラク!映画が整理して見せたあの時点より70年余りたった今がIRAを含めてイギリス・アイルランドの状況が良くなっているわけでも無いようだし、とにかくその歴史すら外部の私たちにとっては理解の他というしかない入り組み方なのだ。何百年に渡って侵略され続けた国と侵略し続けた国の収拾の付かない惨めな憎しみの溢れる現状。丁度パレスチナ・イスラエル問題をどうしたらいいのか分からないような。
そしてイラクもそうなっている現状。
人はせっせと解決できない憎しみを紡ぎ続けているんだなぁ・・・と思った時に、省みられるのは日本の場合は中国・朝鮮半島の問題。
これ以上複雑に未来に残さないように・・・と、考えるべきだ・・・と、きっと多くの人が思っているのだろうに。
戦っている時、相手が強大なイギリスだった時の男たちの顔は輝いて魅力的に見えたのに、内戦になったら全ての男がまるで顔を上げられないように下を向いてしまったところが本当に切なかった。
「何故男は戦うのか?」以前に「何故男って戦う時に光が当たるように見えてしまうんだろう?」ということを考えなくちゃ?その光はまがい物で絶対的な間違いなんだよって思うのに。
悲しい民には美しく切ない歌があるんだなぁ・・・大地はこんなにも美しいのに。
受け取りたくないメッセージってあるよねぇ。
映画を見ているだけの私を許してくださいって、誰かに言いたくなる私がいるのよ。誰にも言えないし、何にもならないし。
ツィードの背広は本当に労働着だったのね。ツィードの上着を着て働く農民、馬の世話をする小者、トレンチを着て野に伏すゲリラたち・・・背広を着て働きすぎる男たちのDNAはこんなところに?
それにしてもまたしても今、この時、この日本の平和を大切に思い、維持できるよう・・・ここから始めて世界へ広げられたら。その平和も一皮剥けば風前のともし火状態?朝鮮半島を見、アジアを見、そして過去を見る。これが大切!
その意味では「父親たちの星条旗」に次いで「硫黄島からの手紙」も見るべきかも?!

キリアン・マーフィは一目見ただけで「あ、「真珠の耳飾の少女」のハンスだ!」と分かるくらい特徴的な顔の人ですが、あの映画では奇妙な顔という印象が強かったのに、この映画では妙にあの土地と溶け合ってインテリジェンスと民族性を体現しているようでした。役柄と俳優が見事に共鳴しているといった感じでしょうか?彼はアイリッシュ?
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007 カジノ・ロワイヤル

映画タイトルINDEX : 数字他, 映画タイトルINDEX : サ行 384 Comments »

監督  マーティン・キャンベル
出演  ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルソン、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジャンカルロ・ジャンニーニ

ホント、久しぶりの007映画堪能!
007シリーズを読んだのはもう40年近く前になる。そして、ジェームズ・ボンドは私のヒーローの一人となった。彼のスタイル!=ため息!!!
だからショーン・コネリーの時でさえ受け入れるのは・・・、だがその後のボンドは考える余地も無い。
「ショーンのボンドは良かった!」と、思えるようになったのは、その後のショーン・コネリーの活躍にも因るかもしれないが。
ティモシー・ダルトンはその中ではまし?と、思えたがちょっと荒削りすぎる。ロチェスターならはまり役でも、ボンドにはスマートさに欠ける・・・というわけで007映画からは長く遠ざかっていた。
予告編でダニエル・クレイグという俳優のボンド就任?を知ったが、「これは?」と、思わせる何かを彼は持っていた。
髪?許せる!目?許せる!額?許せる!鼻?許せる!口?ここではたと私は迷った。う~んこのちょっと受け口の唇は果たしてショーン・コネリーのように酷薄さを漂わせることが出来るのだろうか?
むしろキスにもって来い!って感じじゃないかしら?いつでも美人にはスタンバイ、OK!って?
でもそのスタイル!満点の肩の上の小さな顔!いけるかも?
というわけで3〇数年隔てて、銀幕の007とまみえたのですが、「結構!毛だらけ猫灰だらけ!」って寅さんなら言うだろうな・・・と、思いながらの鼻歌交じりの帰宅になりました。
面白かった!
この一言でしょう。
ヴェネチアの歴史的建造物が崩れていくところなんか・・・うぁー!
色々な有名ビルが倒壊するところは散々見てきたけれど、あの静かな崩れ方は別物だったなぁ。
絶対手を触れてはいけない聖域になんてことするんでしょうね?
でも妙にリアルで妙なカタルシス?
しかし、こんな映画こんなに楽しめちゃうなんて・・・
ダーティ・ハリーやダイ・ハードが好きな私の一部がこの作品でもわくわく震えたってことですが・・・男兄弟の中で育った歪みかな?なんて、「ちょっぴりうしろめたさ」もヴェネチアの衝撃で忘れ去られました。
風景は満点!ただ欲を言えばカジノの緊迫感がもっとあっても良かったのに・・・記憶の中の勝負はもっとスリリングだったような?
カードもトランプだった子供の頃の記憶だからかなぁ?
私的にはドァのナンバープレートが印象的だったけれど、今はカジノこんなんですか~?なんて、時代も自分もそこはかとなく・・・哀愁?
さて、次は彼で「ロシアから愛をこめて」を見たいなぁ・・・と、思うのですが、頭の中のショーンとの対決!これもわくわくするんじゃないかなぁ?
「灰色の」マチュア・・・ジャンカルロ・ジャンニーニが演じると「ハンニバル」の彼を思い出させて(強烈な印象が残って)、つい「限りなく黒だよぉ」と彼が出てきた瞬間もうボンドに言っていました。だからスパイ映画は出来たら色の付いていない配役でお願いしたいなぁ。
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クリムト

映画タイトルINDEX : カ行 2 Comments »

監督  ラウル・ルイス
出演  ジョン・マルコヴィッチ、ヴェロニカ・フェレ、サフロン・バロウズ、スティーヴン・ディレイン、ニコラス・キンスキー

「ウィーンといえばクリムト!」?ウィーンへ同行した友人と誘い合わせて行きました。で、やっぱり「クリムトといえばウィーン!」です。
金とエロスとをふんだんにてんこ盛りにしたエネルギッシュな装飾的な魅惑的な絵の作者として「クリムト」を思っていました。
それに扮するのがマルコヴィッチさんですし・・・凄い演技?が見られるのではないかという期待も勿論ありましたしね。「マルコヴィッチの穴」とか「ザ・シークレット・サービス」とか記憶に新しいところでは「リバティーン」とか、思い出しますよね。
でもそこには私が写真で見たクリムトの線を細めにして圧迫してくるような迫力を緩く薄めたようなマルコヴィッチのクリムトがいました。
でもエゴン・シーレが余りにそっくりで、「シーレ」という名が出てくる前に分かるくらいで、「ジョンは負けたな?」と、一瞬思ってしまったくらいでした。(はいはい、形態模写じゃないんですからね!)この若くして亡くなった画家は私がどうしても好きになれない絵を描いた人として覚えています。
二人の絵の間にある広がりを思うとクリムトの死の床に付添っていたのがシーレだったなんて不思議です。
映画はこのシーレが見守る中、ベッドで今しも死にゆこうとするクリムトの意識を流れる過去の断片を積み上げていくような感じでした。
作品中、時代の画壇のこと、美術・建築界の動向、パリとウィーンの在り様・・・は登場人物の会話で観客に説明されたようでした。
私が期待したクリムトの作品は幾つか映画の中で見ることが出来ましたが、作品を創造する現場はたった一っ箇所だけでした。
あの金箔が部屋中に巻き上がるところはクリムトの絵の世界を彷彿とさせて、この映画の中で唯一私の好きな場面でした。
唯一と書きましたが、私はこの映画に何を期待して出かけていったのでしょう?
画家の作品製作に纏わる逸話?画家のモデルとのいかがわしくも華やかな世界?ウィーン世紀末の画壇の中での彼の存在?かなり創作に関わったと思われる義妹との不思議なドラマ?
・・・そういう点ではこの映画は何も語ってくれなかったような気がします。彼の意識の中に意識を導くように現れる男の象徴するものも私には理解できませんでしたし(ただの狂言回しでいいのでしょうか?)、彼のあの多数の大作を生み出したエネルギーがどこから来たのかも結局分かりませんでした。
クリムトについての枝葉末節的な情報はかなり収集?出来たかもしれませんが。私には消化不良の何かを無理やり飲み込んだという感じが残りました。時代の空気感?は感じられたかな。
そのせいで「ねぇ、どう思った?」と。友人に聞かざるを得ないという気にもなったのでしょう。
「眠たくなった!」という答えを聞いて妙にほっとしました。
私は何か「ぼうっとしちゃった!」という感じでした。
何から得た創作意欲を作品にぶつけたのだろう・・・と推測していた・・・そんな場面を知るのを楽しみにしていた・・・単純な私にはちょっと高踏過ぎたのかな?
クリムトという人物を、また彼から生まれた作品への思いをこういう表現で見せたいと思った映画作家がいたんだ・・・と思って、けりをつけることにしましょう・・・わかんないんだもの・・・
しょうがないやって感じでしょうか。これ以上考えると何か無理やりこじつけそうなんです。
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地下鉄(メトロ)に乗って

映画タイトルINDEX : マ行, 映画タイトルINDEX : タ行 177 Comments »

監督 篠原哲夫
出演 堤真一、岡本綾、大沢たかお、常盤貴子、田中泯、吉行和子

原作を知っている作品の映画化はいつも葛藤を引き起こしますね。
でも、やっぱり見ちゃうんだなぁ。
さてと、何が一番違ったでしょう?
見終わって一番に思ったのは「女」というものをどう思っているの?でした。
男に優しいものを描くと女は割りを喰わなくちゃならないの?
3人、いや4人の女性・・・本当に幸せだったのは誰でしょう?
いえ、一番可哀相だったのは誰でしょう?と問いますか。
吉行さんの演じた主人公の母?
愛した人には戦死されて、お腹に残された子供には自殺されて、大成功した(成り上がった?)夫には虐待されて別れ、冴えない次男と暮している上に多分その息子の不倫にも気が付いているから一緒に暮している嫁には後ろめたい。
常盤さん演じるみちこの母?
愛して戦後一緒に生きぬいた人には妻子がいて、とうとう一緒に暮すことも無く世話されることも無く、意地を貫いてひとりで生き抜き、子供も結局は流産してしまう。
岡本さん演じるみちこ?
生きている時は愛人で、好きになった男は腹違いの兄で、その兄のために自分の存在を抹殺しようと決意しなければならなかった?
長谷部の妻?
夫の愛人の存在も知らず、姑と狭い団地で同居して、パートで家計を遣り繰りして夫の留守がちの家庭を支えている。
映画の始まりから終りまで沢山のタイムトリップがあって、過去が凝り固まった愛憎を解きほぐしていく形になっているのにこの女たちは物語から置き去りにされたままだったような・・・
勿論みちこさんは余りにも哀れな存在に描かれているけれど・・・勝手に男の守護天使なんかにされては叶わないわねぇ、みちこさん!
岡本綾さんが本当に消え入る風情の女性を好演していたからなお更。
好演といえば常盤さん、蓮っ葉な粋ないなせなお姉さん堂に入ってたわ。
主人公が優しい弟に自分の厭なもの?を押し付けっぱなしで勝手に生きてきた男と見えてしまったのは映像の力だろうか。
本で読んでいる分には彼の事を理解できたような気がして「よかったね・・・」とでも言ってあげたくなるくらいだったのに、みちこと抱き合う生の姿を見てしまうと、こんないい加減な男に「過去を知る」という恩寵がどうして与えられたのか?とすら思ってしまう。
勿体無いじゃない!もっとそれに値する人が他に幾らでもいるでしょうに、何で彼なのよ・・・ってね。
そこで「ああそうか、恩寵が与えられたのは戦中子供を助けた、良かれ悪しかれ一生懸命生き抜いた父親にだったのか!」って思ったりして。いや、でも女に手を挙げる男なんだぞ!
だけどやっぱり、みち子さんにとっては冗談じゃないわよ、こんな「真実」見せられてこんな選択させられて・・・。あんな男たちのためによ?
本でオブラートに包まれていたものが脚本に整理されたら男の童話の我が儘さがそそけたってしまったという印象なのだ。
だけど過去を振り返る、過去を見る、過去に浸るというのは確かにちょっとしたカタルシス!思い出は絶対に甘い!許しはもっとイケル!
その点でこの映画を好きだという人も多いだろうな・・・とも、思うけれど、同じ「懐かしいなぁ!」でも「3丁目の夕日」との決定的な違いは真底を流れる暖かさに無垢なもの有るか無いか、傷つく人がいるかいないか、かもしれないなぁ。
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