サハラに舞う羽根

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監督  シャカール・カプール
出演  ヒース・レジャー、ウェス・ベントリー、ケート・ハドソン、ジャイモン・フンスー、マイケル・シーン、ルパート・ヘンリー・ジョーンズ

ヒース・レジャーといえばゴールデングローブ賞受賞作品「ブローク
バック・マウンテン」に主演していた俳優さんで、今「カサノバ」が
公開されている。
「カサノバ」当時のヴェネチアには物凄く興味があるけれど「カサ
ノバ」さんはどうかなぁ?
「ドン・ファン」と「カサノバ」の違いについて聞いた事がある。
ドンファンは次から次へと新しい女性に恋をするけれど、只飽きて
次の花に移るので、女たちは捨てられても余り憎まない。
けれどカサノバは真に素晴らしい理想の女性を求めているので「こ
れは違う、理想の女では無い!」と思って捨てるので捨てられた女
は彼を本当に憎む・・・っていうんだったかな?
それとも、その反対だったかな?
見ようか見るまいか?見ればどっちか分かるかも?
そのヒース・レジャーで思い出したのがこの作品。
正直「カサノバ」を演じられるほどの男前とは思えない。
でもこの作品なら。
冒頭がとても生き生きとした青春群像で良かったという記憶がある。
戦争前と戦争後のヒースの容姿にはメイクによるものだけではない変化
が如実に現れていて、多分これは彼の演技力によるものなのだう。
演技力でいい男になれる人だという気がした。
舞台的には男の友情を描くには持ってこいの設定だ。スポーツから入って軍隊だなんてね。
協調と一体感が何より大事な所だ。
しかもその中に名花が1輪ともなれば?
否応も無く友情は試練に逢う。
しかし、男の友情を書きたいためだけの設定には少々無理があるようだ。
なぜなら、戦争がいやだから除隊したと臆病を認めている男が行け
る場所ではないからだ、あの当時のスーダンは。
このあたりで主人公の精神設定の理解に苦しむ。
「そこへ行けるなら、友人たちと一緒に戦うだろう?」と思うのは
私が男ではないから?
あの土地で、スーダンの人々の間で、言葉も分からなく、イギリス
人である事を隠して入り込めるはずも無い。
そして、あの黒人(土人)の登場だ。
まるでヒース演じるハリーの守護天使?みたいな。
妙に都合いい設定をしたとしか言いようが無い。
ハリーを守りきって彼は「神の与える道を行く。」なんて、格好よく去っていく。
それでも背景がとてもリアルに描かれているので納得させられる。
サハラの砂はそれだけで圧倒的にリアルになる。
現実離れがしているくらい現実だって言う気がする。
圧倒的な砂の物量に気圧されるのだろう。
それとその砂にまみれた戦闘場面。
緻密で丁寧なシーンが積み上げられていると感心してしまった。
主人公の思考回路にはちょっと首をかしげた私だが、ケート・ハド
ソンが美しく堅実なしかもいかにも女性らしい揺らぎを見せていて
よく描かれていた。
「あの頃ペニー・レインと」の印象的だった女優さんだ。
こんなに成熟した優しい笑顔を見せる女優さんになったんだなぁと思った。
ウェス・ベントリーの演じたジャックの「運命」に同情を惜しまない!損だ!
邦題がちょっとロマンチックだったので見たいと思ったのだった。
題名は大事!

レント

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監督  クリス・コロンバス
出演  ロザリオ・ドーソン テイ・ディグス ジェシー・L・マーティン イディナ・メンゼル アダム・パスカル

予告編を見て絶対行くぞ!と決めていたのが、ようやく実行できた。
冒頭から首根っこを引っつかまれて引きずり込まれたような感じだ
った。
多分字幕が無くて筋道が分からなくても、音楽の、そうね歌い手の
迫力・声の魅力、そして映像の面白さで夢中になって見られたので
はないかな?
7人の個性的な爆発的な歌唱力が素晴らしい説得力になって、否応
無く彼らの世界に巻き込まれてしまった。
その感じはととても気持ちが良くて、まさにミュージカルを堪能し
た満足感がある。
しかしその一方で、頭の片隅にはアメリカの、ニューヨークの片隅
の暮らしの恐ろしさも息づいていて、それが次第に私の心を蝕んで
くるような重苦しさも受けていた。
麻薬とアルコールに取り巻かれた、エイズに追い討ちをかけられる
暮らし。
でももう最初に眼鏡の彼が言ったじゃない?「こんな暮らしでも親
といるよりまし。」って。
本当にそうなの?
どう見ても(字幕)普通の親からの電話の後にね。
それって結構親としては衝撃的。
もっと強烈だったのは(親として)、モーリーンと弁護士の彼女の結
婚式。女性同士の結婚式に両方の親が「いい相手とめぐり合えて・・・」
って、コメントしていたね。
ああ、そうなんだ!もう、そうなんだ!日本もこうなっていくんだ!
否もうそうなんじゃないだろうか?私が周りでまだ見ていないだけ
で?数字的にはもうかなりの数字が出ているわけで・・・なんて思い
ながら。
少なくとも「ウエストサイド・ストーリー」のNYよりも複雑で闇の増した
NYを目の前に見ているようでした。
それでも夢がある!魂は売り渡さない!
だけど明日は無い!死んでいくんだから!直ぐに?
彼らは若いけれど、老いている。
今日があるだけ!
それでいいはず無いじゃないの!
「こんなにパワーがあるんだから・・・!」と、歌の力に引き込まれて
いたら、映画館の向こうから変な声が「ヒェック!」と聞こえた。
のめりこんでいるのに水を差すなと思ったら、また!また!また!
「なんだ?」と本気で腹がたちかけたら・・・泣き声だと気が付いた。
私の反対側で、声も忍ばず、手放しで泣いている人が居る。
まぁ、確かに、この映画にはそれだけの力がありました。
力を振り絞って今日1日を生きようとしている、美しい夢を物にしようと
している若者が実際居るんだ!ということが変な説得よりもすんなり胸に
落ちました。
何よりも「全曲聴かせたなぁ!」と心は満タンになりました。
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ダンサー・イン・ザ・ダーク

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監督  ラース・フォン・トリアー
出演  ビョーク、デヴィッド・モース、カトリーヌ・ドヌーブ

デヴィッド・モースの事を書いたからというだけではなく、「何時かこの映画のことは書きたいな。」とは思っていたのです。
ただこの映画の事を語る言葉が見付からなかったのです。
書き始めたからといって、言葉が見付かったわけでもありません。
モースを書いたついでの勢いです!
この映画がモースの映画の仕事での代表作の一つになるかも知れないと思っていますから。

見終わって重く深いため息をついたことは事実ですし、正直直ぐには二度みたいとは思いませんでした。
でも、ミュージカルシーンを思い出すと、見たくて見たくてたまらなくなります。
不思議な撮り方なのです。
絶対自然じゃないと頭の一部は囁くのですが、心は自然に受け入れて陶酔しています。
工場の場面でも、線路の場面でも、そこだけを取り出して見たいくらいに魅力的です。
でも取り出したら途端に意味の無いものになりそうです。
監督がこの映画にこめたものを考えたくない頭もビョークの歌声の前にはしびれました。
ビョークの歌声の力で、モースの演じる独善的な?アメリカ人警察官の心情の情けなさに比べて、移民のビョーク演じるセルマの心根のなんと言えばいいのでしょう、純情とも違うんですね、すれていない一途さとでも言いますか、その心がじっとりとネットリと張り付いてくる感じです。
筋立ての根底になっている眼病、なんでしょう?
設定のための設定で、これは余り深く何の病気で・・・なんていう解説はいらないのでしょうね、多分。
事を明らかにしないセルマの無知な頑固さに、私はいらつきながらも最後の最後に彼女の無知が一途さゆえに美しく思えてしまいました。
殆どビョークの圧倒的な歌の力と彼女自身の持つ味わいのなせる業だと思います。
母性を描くとこういうことって起こりがちです。
同情とか共感とかし易いのです。
私も無知な子どもが唯々可愛い一人の母親だからかもしれません。
科白と音楽と踊りが渾然として織り成した不思議さが物凄く魅力的でしたし、長く重く「記憶に残る映画だ!」と、とにかく「凄い!」と思いましたが、単純に好きかと聞かれると「好き」というのをためらってしまいます。
とにかくソファにひっくり返って気楽には見れないような気がします。
それなりに、「今日は見るぞ!」の覚悟をして・・・やっとでしょうか。
何しろ線路の場面をもう一度見たくてDVDを用意してあるのにもう何年も「そうっと」してあるのですから・・・。

カトリーヌ・ドヌーブが美しかったです。
彼女を見たのは久しぶりでしたから。
でもその後彼女を見たのは「8人の女たち」でしたから、ずっこけてしまいました。
ヤッパリ凄い素敵な女優さんでした!
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デヴィッド・モース

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マシュマロ、好きですか?
ジャガイモ好きですか?
マシュマロを好きなように、ジャガイモを好きなように、なんか分からないけれど好きな俳優さんがこの人です。
マシュマロとかシュークリームとか柔らかくて形が悪いけれど愛嬌があるものとか連想してしまうのは、この人が多分ちんまりと垂れた目とふっくらした赤い頬とかなり大柄に見える雰囲気からかしらねぇ?
うーん、頭の中を絞って思い出す・・・としても、見た映画は多分「ザ・ロック」「交渉人」「グリーン・マイル」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」これくらいです。
しかも「グリーン・マイル」を除けば別に好感が持てるというような役をしていたわけではありません。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」なんてどう考えても好きになれない役を演じていました。
なのに、なんとなく
「どうしているのかな?」
「どんなお仕事してるかな?」
「今度、どんな映画で見られるかな?」なんて思ってしまいます。
なんで私の意識下に忍び込んだのかわからないんですよねぇ。
「ザ・ロック」のエド・ハリスの後ろに立つ姿は(エド・ハリスもよかったけれど)「忠誠とはこんなもんだ!」を絵に描いたようじゃありませんでしたか?
「交渉人」のスワット、「何かあるぞ、こいつ」怪しい匂いぷんぷんでしたよね?
[グリーン・マイル]の看守、こんな感じで見回りしてくれたら死刑台への道だって暫し忘れて癒されますよねぇ?
こじつけて理由を考えると、ごく自然に彼はそこを自然にさせて「居る」んだという感じで私の中にも小さいけれど居場所を作ってしまったということでしょうかねぇ。
でも俳優さんだったら、これは当たり前。
それに+αがあったから印象に残ったんですよね。
それは、その+αってなんだろう・・・?・・・ただ私のタイプだっただけだって?
えー、あのジャガイモさんが?
そういえば吉永小百合さんもジャガイモがタイプだって言っていましたよね。
ジャガイモって「いい女!」の「タイプ!」なんだ、きっと。

今、「夢駆ける馬ドリーマー」に悪役で出ているらしいですね。
幾ら彼でも天才子役さんと馬が敵では・・・勝ち目は見えていますよね。
だから見に行かないんだ!ホント?

先日書いたエドモン・ロスタンの「シラノ・ド・ベルジュラック」、
意外に島田正吾さんの向こうを張れるんじゃないかなぁ。
翻案物、所はアメリカ、南北戦争期、南軍のグレーの制服で・・・なんて、今時流行らない恋物語ですが。
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ウォーク・ザ・ライン/君に続く道

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監督 ジェームズ・マンゴールド
出演 ホアキン・フェニックス リース・ウィザースプーン
ジェニファー・グッドウィン ロバート・パトリック

この映画散々迷ったんです。
ホアキンがあのリバー・フェニックスの弟だと知ったので。
「スタンド・バイ・ミー」「マイ・プライベート・アイダホ」2作しか見ていないのですが、お兄さんは「スタンド・バイ・ミー」の初々しくも頼もしい姿で頭に焼き付いています。
知るまでは「ホアキンの悪役面!嫌い」って思っていたんです。
映画そのものは書評などで好評が多かったので、興味は抱いたのですが、何しろ主演があの顔の人ですから。
「グラディエーター」の皇帝は見事な悪役でしたし、TVドラマか何かで「皇帝ネロ」やっていませんでしたかね?
顔で映画選んだら失敗することが多いの分かっていても好きになれない顔は好きになれない顔ですもん!なんて・・・
それがつい長~いフライト時間!
興味を持っていた映画なのでツイ見ちゃったのですわ!
そして今度はまた後悔しています。
こんな画面で、こんなスピーカーで何で見ちゃったんだろう!
「あぁ、これは大画面で音響のいい映画館で絶対見るべき映画だった!!!」と。
あの小さな画面とあのひどい音でも魅了されたのですから、ちゃんと見たらどんなにか魅惑されたでしょうね。
あの曲ちゃんとホアキンが歌ったのですって?皆?
で、リースさんもそうなんですって?嘘っ!
天は2物を与えたんだ!

ドラマは演技力で見せるものですけれど、この作品の場合歌唱力も演技のうちですよ。歌で恋を語っているのだから。
曲でこんなにぴったり添えるのに、何故二人の道のりはこんなにも長かったのでしょう?
もう、ジョニーに同情して、肩入れして、疲れちゃった!
ジェーンは何であんなに彼を理解しているように見えたのに彼をあんなに拒否し続けたんでしょうね?
それにジョニーの妻は何であんなに可愛くなかったんでしょう?
彼の生き方を拒絶・否定し続ける根拠ってなんだったんでしょう?
彼の稼ぎで子育ても何もかも出来ているのに・・・なんて専業主婦は羨ましくこそ思え・・・(おい・おい、そういう問題じゃないでしょ!)
アルコールや薬におぼれる男って本質的に危ない!と思うのは確かだけど、そう切り捨てられない魅力がジョニーという男の必死さを見ていると感じられて、あの怖い顔にも関わらずすっかり彼の味方?になっちゃいました。
おぼれていく彼の必然性が良く見えました。いとしかったですねェ、彼の心。
だから一人の男の生き方に固唾を飲んで見入っていたのに、彼を取り巻く女性たちの方はいまいち理解できずに映画は終りました。

ヤッパリちゃんとした劇場で見るべきでしたよ。
暗い画面で微妙な表情など読み取れなくて、見落としたニュアンスがいっぱいあるようでヤッパリ後悔です。
でも実際に人生を本気で!生きぬいた人の伝記物って、ドラマとして凄い説得力がありますね。
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初恋

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監督 塙幸成
出演 宮崎あおい 小出恵介 宮崎将 小嶺麗奈 藤村俊二

この映画は前もって知識が全く無かったので、チケットを頂かなければ、見損なうところでした。
かの「3億円事件」を土台に据えているところ、つまりあの時代は私の青春期だったので、様々に挿入されるあの時代の映像を懐かしく見ました。
だいたいあの事件は随分沢山様々なメディアで取り上げられていますから、解決されなかった事件だけに許されて?色々な解釈が可能ですが、この脚本には意表を衝かれました。
作家になれる人の想像力の翼って本当に凄いですね?

話は変わりますが、先だって父が「NHKの朝ドラ見ているかい?」
「その時間はドラマ見る暇無いので朝ドラってあんまり見ること無いんだわ。」
「そうかい、別にどうっということは無いんだが、今度主演している女の子なぁ、宮崎あおいとかいう名だったと思うが、久しぶりに本当に可愛い子でね、気持ちよく見ているんだ。いい女優さんに成長してくれればいいなぁと思ったんでね。」と言ったのです。
その宮崎さんが主演でした。
いい女優さんになるんじゃないかなぁと私は思いました。
彼女の孤独感、所在の無い切なさがよおく分かりました。
ジャズ喫茶の入り口に佇む姿に乾いたいじらしさがありました。
乾いたと書いたのはじーんと来る涙を誘うような感じとは一線を画すようなむなしさがあったからです。

あの時代の空気は知っているつもりですが、私は蚊帳の外でしたから・・・何も行動しなかったからで、クラスでクラスメートと安保で激論を交し合ったりはしましたから・・・ただあの映画の中の青年たちが醸すような空気は縁が無かったと言うことですが、
それだからかこの物語には「ありだなぁ」と言う部分・理解できる部分を持てないままに見終わってしまいました。
ただ、みすずの初恋の情緒は普遍的な悲しみが漂っていてあの頃の私の心のあった場所を思い起こされました。
しかし殆どの出演者がよく言えば初々しいからでしょうか、せりふが聞き取り難いので困りました。
口跡がいいとか悪いとか言いますが、それ以前かもしれません。
会話の中身が中身ですからあれは「狙い」なんでしょうか?
でも作品としては不親切です。
どんなボソッとした一言も聞くものの耳に届かなくては、意味が無いでしょう。
囁くような一言、つぶやくような一言を客の耳に届けて役者は「何ぼ!」と思うのですが、皆さんまだ途上ですからね?
唯一藤村俊二さんが助け!でしたよ。あの小柄な方の声がしっかり耳にも心にも気持ちよく届くんですからね。
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花よりもなほ

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監督  是枝裕和
出演  岡田准一 宮沢りえ 古田新太 浅野忠信 香川照之
田畑智子 原田芳雄 加瀬亮

実に充実した濃い映画を見ちゃった!
満足!満足!と、心の中でつぶやきながら席を立った。
これだけの映画見せていただけば十二分に元が取れた?いやそれ以上ですよ。有り難や!
出演の項に長屋の全員の名を連ねて書くべきですよ。ええ、そうですとも!

本当言うと途中長い映画に思えたんです。
って、中だるみしたと言うことではないんですよ。
余りに長屋の住人がしっかり書き込まれていたんです。
一人一人の個性や匂いまで伝わってくるような。
長屋しぐさとでもいいますか、狭くて汚くて思いっきり肩寄せあっている住人たちが、それぞれを馴れ合いながらも底の方でそれぞれの抱えるその阿呆さ加減も悲しさ加減も辛さ加減も尊重して受け入れあっている、認め合っているとでも言いますかね?
その描きようが余りに見事で、反対に途中で心配になってきちゃったんです。
監督はこれを一体どう収めるんだろう?
すべてのこの愛すべき人たちをどうしてくれるんだ?って、本気で
心配になっちゃって。

仇の金沢十兵衛親子どうする気よ?
一年に一回腹切る香川さんの浪人の人生って何を抱えているの?
やくざの袖吉には何があるの?
おさえ親子の仇は?
その日暮らしの面白いけれど見てると悲しくなる住人たちは長屋を追われたら・・・?
第一この情けない長屋の隅で膝を抱えてる主人公どうしてくれるのよ・・・?何とかしてやってよ、お願い!みたいな。
赤穂浪人さんの方は想像が付いていたから・・・まぁね。
っていう具合に完全感情移入。

だから濃くって重くって、時々くすくす笑いながらも、彼らの逞しさも愛しく・・・結末が出るまでが長~く感じられたと言うわけです。
でも素晴らしかったのがここからでした。
実に見事な畳み込み方でした。
収束に向かっていく収斂のスピード感と省略の上手さ!
この省略って手抜きの省略ではありません。
科白と絵面のコラボレーションとでも言いますか?
上手に見る人の想像力をフル活用する仕方とでもいいますか!
その上に赤穂浪士の討ち入りの見事な常識の裏切り方のおまけ付き。
これ、ありですよ!
書きませんけれどね、浪士の討ち入りに急ぐ場面に懸かる「一言」!
貞四郎の討ち入りの感想!
意表を突かれましたけど、頷いちゃいますもんね。
(そして寺坂吉衛門さん、息子にわらじ作り教えられるのねぇ。)

この映画の「主題」がくっきりと浮かび上がって、宗佐さんの大写しの笑顔と共に満足の吐息!となったわけであります。
出演していたすべての俳優さんがこれだけ一人一人が見事に思えた映画ってそうそうは無いですよ。
業突く張りの大家でさえもね?
いやぁ、実に秀逸な長屋セット付きの極・極上等な落語でした!
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ナイロビの蜂

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監督  フェルナンド・メイレレス
出演  レイフ・ファインズ レイチェル・ワイス
ユベール・クンデ ダニー・ヒューストン
ピート・ポスルスウエイト ビル・ナイ

さぁ、私に何が書けるのだろう?
とにかく心の中に書き綴るのが困難なものが渦巻いている。
それもどうすることも出来ないとはっきり自分で分かっている巨大な無力感の中で。
この映画の音楽が単調に静かに波が繰り返し繰り返し寄せ来るように鳴り響くように、
心の中に繰り返し繰り返し寄せ来る重い思いがある。
見たくないもの、知りたくない世界がこの音楽に乗って繰り返し繰り返し私に考えろと迫ってくる。
溢れる愛情も情熱も得体の知れない深い闇の中に飲み込まれていく。
いいたいこと、訴えたいことが声高ではなく心に沁みてくる。
だが、涙を流す以上に何が出来るのだろうか?私に?
ヒロインのテッサはその知性が得たものを一直線の情熱の羽に乗せてすべきことに突き進んで称えられるべき女性像を永遠に打ち立てた。
だが、私が打たれたのは夫のジャスティンにだ。
イギリス人らしいイギリス人。
静かで理性が勝ち庭仕事を愛する感情的ではない既に出来上がっている人間のはずだった彼だ。
知ろうと決意してからの彼のした一途な頑固さのことだ。
知っていくこと、それを受け入れていくこと、深く受容するということ、その行き着く先。
知りえた妻の愛情の深さも、自分の妻への深い愛情も、それがなんになったんだろう。
この恐ろしくも悲しい大地の上に落ちると、乾ききった大地が一滴の水を跡形も無く吸い尽くすように、どんな愛情も無力なのだと思えて・・・
一体何をこの大地に注ぎ込めばいいのだろう?
分かっているくせに!人類は皆分かっているくせに!
ジャスティンの死、自分を待つものを知りながらセスナから降りた少年のそれからが暫くは心の底であの音楽のようにこだまし続けるだろう。
だが、何時まで?それが今一番怖いのかもしれない。

久しぶりに映画を見て原作を読みたいと思っている。
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ダ・ヴィンチ・コード

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「本」で書いたからやはり映画も見てきた以上書くべきだと思う。

ダ・ヴィンチ・コード

が、さて・・・どう書いたらいいものか。
友人から
「今度の「会」丁度いいからダ・ヴィンチ・コード見に行かない?あなた銀座に近いから予約券手に入れておいてくれないかしら?」
と電話があって
「でも会は水曜日よ。六本木はいつも予約するけど日劇のレディスデーも予約できるの?」
「できるでしょ!」
で、すたこら出かけたら、予約の行列は出来ていたけれどなんとか予約できた、4人分。
その後土曜日の夕刊のニュースで開場前に100メートルの列が出来たと読んだ。
だから今日、電話をしてきた友人は「私って本当に先見の明があるわよね!」と、自賛していた。
並んだのは私だけれど、まぁ、確かに!
皆ニュースも読んでいたし、繰り返し繰り返しTVに閃く予告も見ていたし、予約券のある身、のんびり出かけていったら切符を求める長蛇の列が見えたし、期待感はいやがうえにも・・・
と、いった事情を長々書いているということは・・・なんだけれども、
決して映画の出来が悪いと言うことではないのだが、本の感想がしっかり出来ていると、
「映画と原作は別物だよねぇ・・・」なんて、また言ってしまいそうになる。
あの本の中身を凝縮しているのだから、もっとスピード感に満ち満ちてもよさそうなのに、意外とそうはなっていない。
上手に物語が整理されていると言うことも勿論あるのだが、人物描写をすっ飛ばしたせいで妙に簡単なうすべったいお話になってしまったようなのだ。
まづジャン・レノが演じた警視に意外性が無くなった!
イアン・マッケランがガンダルフの陽気な憎めない目つきで終始するので、ついこちらもにこやかになってしまう?
ポール・ベタニーの修道僧の恐ろしいまでのストイックさと狂信と従属が、経過がはしょられているので理解できない!
恐怖感も嫌悪感も沸きそこなった。
カトリックがこの作品を嫌悪する理由はわかったけれど、肝心の謎解きが妙に簡単過ぎない?
シオン修道会はこれじゃぁ何とか無事繋がっていけそうだよねぇ・・・って、えぇっ、安心していいんだっけか?
トム・ハンクスは演技力見せ所が無かったなぁ、オドレイさんは可愛らしさ魅せそこなったなぁ。
でも、フランスやイギリスや舞台はとてもよかったなぁ!
ルーブルとテンプル教会は行ったけど他のとこも行って見たいなぁ!
ロスリンて「ロード・オブ・リング」のロスロリアンを思い出さない?
と言うわけでもう一度いうけれど、小説と映画は別物だからね、映画を見ただけでも「キリスト教って一筋縄じゃ行かないんだなぁ。宗教ってなんなんだ?神なんて出来なければいいのに!」って思えることは思える?
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リバティーン

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監督 ローレンス・ダンモア
出演 ジョニー・デップ サマンサ・モートン トム・ホランダー
ジョン・マルコビッチ ロザムンド・パイク、ケリー・ライリー

本当はまず「ジョニー・デップ」という題でまとめていっぱい書きたいくらいですが、
とりあえずこの作品を見てきたので。
「シザー・ハンズ」で初めてジョニーに注目してからどれくらいの時間が流れたんでしょう。
不思議なことにこの人は、この時と今との間に時間が流れたと思わせないところがあります。
そして映画を見るたびに彼がジョニーと言う名を持つ俳優だと言う事を忘れてしまいます。
見るたび別人と言うと変ですが本人が消えてしまうのです。
見終わって暫くしてから「あージョニーって本当に魅せるなぁ!」です。
オードリーが何時どんな役で見てもオードリーがちゃんと輝いているのとは全く対照的に、
彼の場合は画面の中の男がいるだけでなのです。
良くも悪くも彼が演じている人物その人が銀幕を蠢いている感じです。
この作品でもそうでした。

それにしても男がカッコイイと対照的に女が描ききれていないと言うことがえてして多いのですが、
この作品では3人の女が輝いた分ジョニーは狂言回しになってしまったと言う感じを受けました。
ジョニーの語りで入り、ジョニーの語りで終る一代記のような体裁ですが、
実際ジョニーのロチェスター伯は狂気と悲壮と堕落を惨めなまでに迫真の演技で
画面を縦横無尽に占領しましたが、見終わった私は彼を取り巻いた3人の女性に当たったライトを心に焼き付けられた!という感じがしたのです。
それぞれに魅力的な女がそこには居ました。
ジョニーの演技が彼女たちに脚光を当てたようなのです。
あの時代女優が娼婦と同義語だった(日本の阿国歌舞伎の女たちがやはり春をひさいだように、どの世界でも同じ様な時代を経てきてるんだなぁ!)時代にあって、自分の生き方をするということがどんなに大変だったかと思う時いっそうこの女性たちは輝きます。
女優のレジーは言うまでもありません。
格好のいい科白が幾つもありましたから。
ロチェスター伯は芸術的才能がどんなにあったとしても結局時代の子。
彼女たちを完全には理解できなかったでしょう。
結局はあの時代の男に過ぎないのだから。
そう、あの時代にあの科白を言ったレジーは凄い!って思わされましたよ。
あくまで全くの対等を主張していましたよね。
そしてロチェスター伯の妻です。
ナント美しくいたことでしょう!(「プライドと偏見」のお姉さんですよ、多分)
あんな男を夫にしてどんなに屈辱と悲哀を味わったことでしょう?
でも見事に妻を貫きましたよ。
この時代にはもうあんな女性廃れてしまったかもしれませんね。
この女性からあの愛を引き出したロチェスターの「魅力を思え!」って?まぁね。
そしてあの娼婦です。
病み崩れていくロチェスター伯には自分への愛情も誠意も一片も無いと知りつつ、
引き寄せられてしまった自分の心のままに最後に追い払われるまで付き従った心とはどんなものだったのでしょう。

こう、3人の女を見事に浮かび上がらせたのはヤッパリ?
「ジョニーの魅力であり表情であり声音だった!」と、結局私はジョニーに唸って帰ってきたのですけれど・・・。
それにしてもナント猥雑で下品で、まるで印象的なあのどろどろのぬかるみのような時代だったんでしょう、食わせ物のチャールズⅡ世の時代は!
結局はあの時代が主題だったようですよ。

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