花のあと
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監督 中西健二
出演 北川景子、甲本雅裕、宮尾俊太郎、市川亀次郎、國村隼、
相築あきこ、佐藤めぐみ、伊藤歩、柄本明
見始めて風景の美しさ、静かな丁寧な映像・・・あら、「山桜」と同じ監督の作品かしら?と思ってしまいました。 藤沢さんの作品を映像化するには・・・みたいなマニュアルが出来つつあるのかもなぁ?
それにしても私の集中力は衰えつつあるのかもしれない・・・と、思わされたのは「山桜」を映画館で見た時はその‘ため’もゆっくりした人物の大写しも景色の長回しも心地よいリズムで気持ちを載せるいい時間のように思われて堪能した気分だったのに、その映画をTVで見たときには・・・やりすぎじゃないか?じれったい、思わせぶりすぎると思えたことだ。 ま、それは映画館と自宅では見る姿勢も集中力の持続も・・・ソリャハナから違うもん!と、その時は納得したのだけれど。
この映画の場合やっぱり集中力を試されているような気がしたのは何故か? 間が重すぎるように感じたのは何故か?
いい映画を観たと思う一方でそう考えたのは何故か?
多分原作が周平さんの作品の中でも私の大好きな短編であり、あの作品に漲る人生の諧謔味、ユーモア、大らかさが、あまりにじっくり溜めた主人公のしとやか過ぎる表情の中に薄れてしまったからではなかろうか? あの作品の持つ楽しさ、威勢が消えてしまっていたのが残念に思えたからに違いない。
間は難しい、本当に難しい。特に滑稽に措いては。また、情緒に置いても。 折角きりりとした表情を見事に出せる女優さんだったので、物語の切り返しにも私はもう少しきりっとした間が欲しかったんだと思う。
現在孫に囲まれて幸せでいる老女の述懐の中の懐旧。記憶の中でより麗しくなり忘れられない恋、あの当時、親や夫に従う性であった女性の一世一代の命をかけた反逆、そして夫となった男に抱けた信頼と親愛。 悲劇的な死の上にも人間の営みは着実に続いていき、常識が導く平穏な人生もまたくる。 悲喜劇綯い交ぜになる人生をまぜっかえせる人間の強さ知恵・・・そう、そうして人は生きていくんだなあと人間を肯える素晴らしい世界がこの作品にはあるのですね。そしてまた非業に倒れるのも人なのだと、若くして倒れた人を痛み続けるのもまた人なのですね。
以登さんは謹厳ながら面白そうな人だと思っていたけれど・・・でも俳優さんたちはなかなか見事にイメージに合っていて、良かったです。
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