かもめ食堂

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監督  荻上直子
出演  小林聡美 片桐はいり もたいまさこ

なんとも程のよいセンス、気持ちのいい間、柔らかなユーモア、優しい静けさ・・・見て本当に幸せな感じになりました。
ホワイトナイトの優しい夜みたいな!
女が3人も集まってあんなに静かな信頼の空気をかもし出せるものでしょうか?
「知っていました?スナフキンとニィは父親違いの兄弟なんですって。」とか、「知っていました・・・?」というような話題のためのフリに小林聡美の見せる「ポ?」っとした表情、いいですね。
おしゃべりに弾んでいってしまいそうなところで煩くならない。
こんな優しさ持てたらいいですけれど、友情なり信頼なりを示すために、または確認するために普段必要以上にしゃべりまくっている自分が画面の向こうにちょっと情けなく透けて見えるようでしたけれど・・・でもそんなことどうでも良くなって、あの食堂のサッパリした空間みたいに気持ちのいい殺風景さの中で安らいで微笑みながらのひと時を過ごしていました。
実にシンプルセンス食堂でしたね!
あの3人どんな人生を送ってきて、あの程のよさを見につけたんでしょうね。
ヘルシンキにいたるまでのそれぞれの道筋はほんの少し垣間見られた(いや、聞いた)だけでしたけれど、きっとここへいたるまでの過程があってこその彼女たちなんですよね?
でも監督が切り取ったところは本当に心地よい時間と空間でした。
その切り取り方にえもいわれぬセンスを感じていました。
この出演のお3人がまた絶妙なハーモニーを奏でていました。
持ち味そのままに見えるのですけれど、いいなぁ!
朝ごはんしっかり食べていったのに、映画は正午12時前に終ったのに物凄くお腹のすいている自分に気が付きました。
殆どがいつも私が作ってきたメニューですよ。
でも人に作ってもらったものを食べるって最高に幸せなことですね。
鮭に塩振って・・・「うーんもう少し時間を置いてから焼いた方がいいな!」とか、「サクサクっと切る音がとてもよくて、このとんかつ上手いこと揚がっているな!」とか、「このしょうが焼きの照りの程が実にいいな!」とか、「おにぎりのご飯が実にたっぷりと・・・アァ、私だったら明太子も是非メニューに入れたい!」とか・・・
お腹がすいたときにおいしいものを食べられる幸せをつくづく噛み締めて・・・それにしても「あー気持ちの良い映画だったぁ・・・」と、お昼を食べに行きました!
そうそう、かもめ食堂の前身のコーヒー店の経営者だった男性、何かで見ているような気がするんですけれど・・・ン・・・ん・・・のどに刺さった小骨?

映画館でかもめ食堂のメニュー売っていました。
イメージぴったり!ウ~ン、プロだ!って?
はいりさんがチョコチョコって書いたみたいにみえるんだわぁ。
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ナニー・マクフィーの魔法のステッキ

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監督 カーク・ジョーンズ
出演 エマ・トンプソン コリン・ファース ケリー・マクドナルド
アンジェラ・ランズベリ トーマス・サングスター

ヤッホー、ファンタジーだよぉ!
と、飛んで行きました。
コリン・ファーズだしぃ!
字幕版、夕方の日比谷みゆき座とあって?「プロデューサーズ」より込んでいたのはちょっとした驚きでした。
子どもなんか一人も居ないのよ。
で、隣は大学生くらいの男の子だし、もう片方は結構いいお姉さん。
後ろはおばあ様お二人といった感じで大人ばっかのファンタジー鑑賞。
息子たちが小学生だったら、絶対連れて行っているのに!
「大人一人で行っていいのかなぁ?」的映画のはずなのに。
イギリスの田園の余りにも濃い緑のオープニングからもう、「うんうん、私でもこんな風に始める!」
?エッ?私と同じでいいの?それって・・・?
という感じでしたが、色鮮やか過ぎのちょっとケバケバ風でした。
魔法使いってそんな風土じゃないと合わないのかなぁ?
私だったらもう少し自然な色か、パステルかけちゃうかも・・・。
とにかく、大人たちはもう目いっぱいという感じで久しぶりのジェシカおばさんも、真っ赤なほっぺのコックさんも、再婚相手?の恐怖おばさんも異常気圧。
その中で子どもたちの思いっきり可愛いこと!上手いこと!自然なこと!悪いこと!
長男のサイモン君と眼が合った途端、物語に引きずり込まれちゃいました。
眼がね!生きていたのよ!
悪戯っぽくてね!もう本当に手ごわいぞ、こいつ!って感じ。
この子キットそのまんま「地」なんだわ!って思ったくらい悪くてめちゃめちゃチャーミングで手ごわすぎて私だったら願い下げ。
当然マクフィーさんの杖が無ければ太刀打ちできません!
でもねぇ、綺麗で優しくって若いお母さんが出来ちゃうんだぁ↓
この子達の亡くなったお母さん忘れられちゃって・・・いくのかなぁ・・・って、天国から見守るのってヤッパリ割に合わないなぁ・・・でも子どもの幸せを考えると・・・天国にいたらこれが出来る最善だよねぇ・・・マクフィーさんを送って・・・子どもたちにいいお母さんを見つくろって?・・・あーつらいなぁ・・・って、どっぷり物語の中に入り込んだお母さんになってしまっていました!
で、コリン君は?
ああ、そうそう、奮闘していましたよ、しっかり喰われちゃって、情けない!
ヤッパリよく出来た妻を見繕ってあげなくっちゃしょうが無いかぁ!

プロデューサーズ

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監督  スーザン・ストローマン
出演  ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、
ユマ・サーマン、ウィル・フェレル、ロジャー・バート
ゲイリー・ビーチ

公開されて最初のレディス・デーに見に行っていいのだろうか?と、ちょっと不安に思いながら朝1番の回に出撃した。
「プライドと偏見」に同じ条件で出かけたら映画館の前に道路まで行列が続いていて、ギョットしたのを思い出したので。
前評判からすると当然これも・・・!の筈が肩透かし。
開演5分前になってようやく真ん中辺がふさがってきたけれど、真ん中から前の方は殆どがら空き状態。
女性の人気、出足は今ひとつだったようだ。
しかし、笑った。
確かに自分でもここで大口開けて笑っていいのかな?という場面がかなりあったにもかかわらず、とにかく笑った。
殆どが女性の観客たちのあちこちから憚ることなく高笑いが響く。
おおよそが芸ならぬゲイネタ&シモネタなのにも関わらず、あらゆる世代の女性たちがげらげら笑いだもの、女も変わった!
自由自在だ!
なんて、変なところに感心しながら、笑った!
まずネイサン・レインには「バードケージ」でこの手の演技力には脱帽していたから今更驚かないけれど、・・・「あぁ、舞台でご活躍だったのね!やっぱ上手いわ!!」
でも、マシュー・ブロデリックは「ファミリィ・ビジネス」と「グローリー」しか見ていなくて、「グローリー」の印象が強くて、本当に可愛い誠実な素直に育った勇敢な思想に殉じる正義漢そのものの若者、小柄な童顔坊やだったのだから・・・「おー!!!」だった。
この二人の組み合わせも秀逸ならもう一組も秀逸!
ロジャー・バートとゲイリー・ビーチの演出家とその秘書。
登場時から既にもう廻りは笑いの渦。
いやーブロードウェイにはこんな達者がどれだけいるんだろう?
ハイテンションがズーット続くのに見ていてくたびれないし!
それにもう一組といっていいのかな?
ヒトラーを舞台で演じる二人!
つまり舞台でヒトラーを演ずるはずだったウィル・フェレルの脚本家と彼が骨折して交代した演出家との二人。
ヒトラーの演じ方の丸っきりの大違い!
テンションの高さは負けず劣らず、でも対照的な演技。
舞台の幕が上がって演出家のヒトラーが現れたときのひときわ高い悲鳴のような笑い!忘れられません。
蛇足だけれど演出家のチームのインド人?(ターバン巻いていた)の美貌!舞台でナチ・ヒトラーの親衛隊役をした金髪のちょっと不気味な俳優さんの流し目と美貌!
なぜかこれも忘れられそうに無いんです!

 山猫

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監督  ルキノ・ヴィスコンティ
出演  バート・ランカスター、アラン・ドロン、
クラウディア・カルディナーレ

久しぶりにバート・ランカスターにお目にかかりました。
BSで古い映画やってくれるおかげです。
「男」が男だった時代の映画だというとおかしいでしょうか?
バート・ランカスターのシシリー島の公爵は「男」としか言えないんですもの。
現在の男女共同参画時代では許されない男ですよ。
でも、バート・ランカスターの堂々たる体躯とあの髭(似合っていますよね?)ですからね、この映画の中で彼が演じていたのは間違いなく「壮大な男」でした。
イタリアが統一される前夜くらいのイタリア、シシリー島が舞台ですから、185、60年頃?の物語です。
まず何より背景がいいです。
公爵の屋敷、舞踏会が催される特権階級の豪奢な屋敷の前に広がるのは荒れた貧しいシシリーの山岳と村落です。
こんな村々の貧しい人々をずーっと見下ろして特権を行使し続けてきた男の意識ってどんなものなんでしょう?
本当の所想像も付きませんが、公爵を演じているバート・ランカスターを見ていると分かってくるような気がします。
尊大で、磨き抜かれていて、自由奔放、欲望を抑えようともしない。
この公爵自身は生命力に溢れた生身のそれこそ生々しい男なのに、個人としてよりも彼の家柄の疲弊がここに来て時代の波におぼれかかっているという雰囲気を見せていました。
それは甥の「時代に見事に調子よく乗っていくという選択」の背中は押してやるけれども、自分はその意志も意欲もエネルギーもないという姿勢に現れているのですが。
若々しい細身のアラン・ドロンの軽やかで衝動的に見える行動力と対照して、二つの時代が浮き彫りになってきます。
アラン・ドロンが演じるタンクレディという青年とその婚約者を演じるクラウディア・カルディナーレの哄笑が暗示的で、時代に浮かび上がっていくものと、飲み込まれていくものとを見せ付けるようでしたけれども、バート・ランカスターの公爵はそれを見届けることに奇妙な楽しみを見出しているように思えて、古い時代の凋落はそれでも一筋縄ではいかないことも教えてくれるようでした。
幾時代も乗り越えて磨き続けられてきたものは、その輝きを失う時がきても、滅びる時にはまたそれ相応の残りの輝きを見せるということでしょうか?
それにしてもタンクレディとその婚約者、その父はちゃんと上手く時代を手に掴み取れたのでしょうか?知りたいです。
この公爵の妻に生まれていたら、あんな素晴らしいシャトーに住めて、あんな素晴らしいドレスを着て、たっぷりのご馳走と舞踏会と社交に明け暮れたとしても、生まれ変わったら今度は男になりたいと思うんだろうな・・・なんてつまらない事を考えちゃいました。
たとえ斜陽の家の当主だとしても・・・?
ちなみに「山猫」というのはバート・ランカスターが演じたサリーナ公爵家の紋章です。
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 ヒストリー・オブ・バイオレンス

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監督  デヴィッド・クローネンバーク
出演  ヴィゴ・モーテンセン マリア・ベロ エド・ハリス
ウィリアム・ハート

散々悩んだ末?とうとう見に行きました。
結局見ないと結論は出ないと言うことで・・・。
その結論から言ってしまうと、「ロード・オブ・リング」のアラゴルンのヴィゴ・モーテンセンは
「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーンや「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥルや「風と共に去りぬ」のビビアン・リーとクラーク・ゲーブルや「大脱走」のスティブ・マックイーンや「ジャイアンツ」のジェームズ・ディーンや「ウエスト・サイド・ストーリー」のジョージ・チャキリスや・・・
並べると結構限が無いわ・・・と同じに、私の中のムービーヒーローに奉るということで一線を画す事にして、「他の映画の中の彼は彼でまた良し!」ということになりました。
題名が題名で[R15]が付いているので、誰も付き合ってくれる人がいなかった割には地味だけれど、
なかなかいけていたじゃないの・・・と思って出てきました。
だって、それこそ地味だけど素敵な俳優さんが出ていたんですから。
エド・ハリスなんて私大好き!
「アポロ13」で、何で最優秀助演男優賞取れなかったんでしょう?
「ポロック」なんで受賞できなかったんでしょう?
「ビューティフル・マインド」の妄想の中の人物なんて存在感ありすぎの幻!
(ポール・べタニーもだけど)助演男優賞ものでしょうに。
だいたいこの映画でウィリアム・ハートがノミネートされてエド・ハリスがノミネートされないのはなんで???
って、これは余計な話。
ヴィゴ・モーテンセンはジョーイになった時のアクションのスピード感のある動きと表情、トムの時のマスターの、また父、夫の時の表情と、最後に帰ってきて家族に見せるなんとも自信無げな表情とが皆良かったですよ。
でも、何がどうあってジョーイがトムになったのか?
こんな大きな変化を遂げさせた何かが分からなくて、ちょっと私の中ではドラマ的には消化不良です。
等身大の普通の男を彼は演じることが出来ると言うことがわかってよかったなぁ、っていうより、この映画の中で完全にそこらにいる男の人でした。
ま、この映画の場合私は映画を楽しみに見に行ったというよりは、映画の中のヴィゴ・モーテンセンを確かめに行ったということで、その意味ではなかなか収穫があったと言えるでしょう。
それにしてもエド・ハリスとウィリアム・ハート(ブロード・キャストの彼は嫌な奴だったなぁ!)ってやっぱり凄い俳優さんだなぁ・・・!ってところに戻るところに問題があるような・・・でもこの映画の場合それでいいような?
いいのよ!
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「への字の口」を持つ女優

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ジャンヌ・モロー(フランス)
シャーロット・ランプリング(イギリス)

ジャンヌ・モローが1928年の生まれ、シャーロット・ランプリングが1946年の生まれといいますから、キャリアの本当に長い大女優といってもいいでしょう。
かなりの?年の私でさえお二人の若い頃の作品は見た覚えがありません。
それでも名前と顔だけはしっかり知っていたということは、コンスタントにお二人が映画界で活躍続けていたということでしょうね。
多分色々な映画でチョコット出ているのを見ているのでしょう。
この二人の印象が私の中にしっかり出来たのはほんの最近のことです。
ジャンヌ・モローは「デュラス 愛の最終章」2001年、今年公開の映画「ぼくを葬る」があるようです。
シャーロット・ランプリングは「まぼろし」2001年、「スイミングプール」2003年、今年は「家の鍵」が公開されるようです。
だからまだまだ彼女たちの映画見られそうです。嬉しいですね。
「デュラス」も「まぼろし」も「スイミングプール」もフランス映画です。
フランス人のジャンヌ・モローはともかくシャーロット・ランプリングはちょっとユニークです。
この2本のフランス映画で輝きを放ち、というより「存在感を示しました。」という言葉を使った方がいいかもしれません。
私はフランス人だと思っちゃいました。
「デュラス」のジャンヌも「まぼろし」と「スイミングプール」のシャーロットも、にこりともしない不機嫌そうな「への字の口」のままで「女」を描ききりました。
小気味が良かったですね。
年を取ると顔の筋力が衰えると見えて、老人には圧倒的に「への字」口の人が増えますよね。
それがいやで、日ごろ口の端を持ち上げて笑顔口を作るように努力していませんか?
特に女の子は、笑顔笑顔笑顔と押し付けられていませんか?
私はよく両親に「女の子なんだから口の端をきりっと上げていつも笑顔が身につくように努力しなさい。女の子に不機嫌なへの字口は似合わない。」といわれたものですが。
この年になると結構きついです。
自然にしていてふと鏡を見ると口の端は自然に?垂れています。
それが人にいやな印象を与えるのではないかと、自戒して唇を上げ笑顔をつくります。
するとまるで年にこびているようでちょっといやな感じです。
だから、にこりともしないで、しかも老年なのに、ずーっと若い崇拝者に向かって居丈高に「私は魅力的だ!」と言い放つデュラスに驚きましたね。
そしてシャーロットも60歳の女のまだまだ生きている感情と体の生き生きとした魅力をへの字口のまま見事に表現しましたね。
時々頬に浮かぶ笑みはその笑みで人を魅了しようと言う意図は全く持っていませんでした。
ほんの少し自分を、自分の立場を、横目に見ているようなちょっと醒めた皮肉な揶揄する笑みでしたね。
年を経た魅力・年輪の持つ魅力を彼女たちは自信を持って表現していました。
「若い者が絶対見せられない、太刀打ちできない魅力と言うものを私は持っているのよ!
伊達に生きてきたんじゃないのよ。」とその口は雄弁に語っていました。
ほんとあの自信にうっとりしましたよ。
こんな風に立てるように私も生きなくっちゃ!?
でもこれってフランスならではの・・・フランス人しか認めない魅力かも・・・と・・・心配?
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歓びを歌にのせて

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監督 ケイ・ポラック
出演 ミカエル・ニュクビスト フリーダ・ハレグレン
ヘレン・ヒョホルム レナート・ヤーケル ニコラス・ファルク

私はこの映画を見て帰ってきてから、毎日ボイストレーニングをしています。
そういうと凄いみたいでしょ?
でも、ただ家で、窓を閉め切って、彼らがしていたように自由に自分の声を出しているだけです。
そして良ぉく声を出したら懐かしい童謡などを一節、仕上げに歌います。
これが結構いいストレス解消?になっています。
が、それ以上に映画を心の中で反芻して、感動を確かめているということでしょう。
この映画の物語に感動したことはもう最上の感動をしましたけれど、それ以上にひょとすると私は声を出すことの楽しさ、気持ちよさに目覚めちゃったのかもしれません。
それぞれに生活の中で色々な問題や屈託や葛藤を持っていたり、それぞれの道徳観に縛られていたりする様々な村人が、床の上に寝転んで人のお腹の上に頭を乗せて発声しているところなんか、愉快でもあり、また象徴的でもあると思われました。
腹の中、聞いてみたいものですよ。
お互いが腹の中をぶちまけると取り返しの付かないことになるのじゃないかと言う気がしますけれど、意外に道が開けることもありますしね。
同じ村でずっとーお互いの生活を見尽くしてきた人々ですもの、結末の心地よさに素直に流れ込んでいく素地が自然です。
結末では、折角思いが通じた村の雑貨屋でレジをしていたレナの、この後の悲しみまで想像してしまって、涙が止まらなかったのです。
でも命と引き換えに幼い頃の夢を実現した主人公の指揮者には「良かったわね!」と声を掛けるほか無いでしょうね。
本当に「ヨカッタ!良かった!」って、声を大にして。
彼にとっては「これで人生は完璧に近く満足のいくものになった!」と感じさせる表情を彼は見せましたから。
それにしてもレナの素朴で直接的な求愛(ちょっと古い言葉ですが)は可愛らしかったですね。
ぽっちゃりとした白い肌のように体中に優しい母性的な愛が満ち満ちていました。
それに引き換え人間関係に子どもの頃ににつまずいたままの主人公のダニエルが心を開くまでのおぼつかない戸惑いの連続はちょっとひ弱で見る女性すべての母性をくすぐったのでは無いでしょうか。
聖歌隊のヘレン・ヒョホルムの演じる夫の暴力に耐える妻が、歌に癒され勇気を得ていく過程も、それを引き出していくダニエルの書いた曲も素晴らしかったです。
スェーデンの厳しい冬の大地の中にも優しく春が芽生えてくるように、心の中にも暖かいものが芽生えてくるようなそんな映画でした。

ナルニア国物語 第1章ライオンと魔女

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監督 アンドリュー・アダムソン
出演 ウィリアム・モーズリー アナ・ポップルウェル
スキャンダー・ケインズ ジョージー・ヘンリー
ティルダ・スウィントン

原作がC・S・ルイス と言うことでまたファンタジーの映画化です。
映画をどう位置づけるかでこの映画の評価は人によって真っ二つかもしれません。
でも映画というものはいつも楽しむものだと思っている私にとっては、ファンタジーの映画化?
願っても無い!です。
また素晴らしい映像が見られるぞぅ!!!
と言うわけで楽しむ姿勢バッチリで映画館に座れば、期待にたがわぬ美しい映像がたっぷり繰り広げられていく・・・というわけで、うっとり!わくわく!の2時間余りでした。
物語を原作で読まれた方はきっと映像作家のファンタジー力に感心されたことと思います。
あれだけの物語をあれだけの世界に昇華せしめたのですから。
丁度「ロード・オブ・リング」の反対だと思いました。
壮大な宇宙を7時間余りの時間で語ることが余りに無理なむちゃな挑戦だったのと比べると(と言って映画が粗雑だと言うこととは違いますよ。映画はそれはそれは素晴らしく出来ていましたからね。)、これは1時間余りで読める物語を2時間余りの壮大なスケールに膨らませたのですから。
多分この作品の方が映像にするのには楽しい作業だったと思います。
きっと楽しく肉付けできたでしょう!
監督やスタッフの方たちは想像力を思いっきり羽ばたかせることが出来たでしょうから!
私にとっては「もののけ姫」の映像と双璧!に近いです。
「全くしょうがないわねぇ、君たちは!」と言われかねない子供たちが僅かな時間にどんどん成長していくんですから、子どもも大人もまるで一緒に自分も成長していくように、感情も移入して行きやすい素直な冒険譚です。
それにお母さんにとっては興味深いことが1つ。
「まず名前を与えろ!」です。いい名前をね。
「君は英雄王!」「君は正義王!」
「あなたは優しの君!」「あなたは麗しの君!」といった風に。
さすれば・・・そう育つ!っていう見本が最後に見られましたね。
やはり褒めて育て!
信じて育て!
そして初めて、子どもは想像の国で培った自分の力で育つのでしょう。
それにしても団子鼻のルーシーがあんなに美しくなるなら、私も天国?の母にちょっと文句を言いたい!

プライドと偏見

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監督 ジョー・ライト
主演 キーラ・ナイトレイ、マシュー・マクファデン、ドナルド・サザーランド、ブレンダ・ブレシン、ロザムンド・バイク

さて、先日「コリン・ファース」のところで、イギリスTVドラマの「高慢と偏見」について触れたから、この映画にも触れないわけにはいかないですね。
ジェーン・オースティンの原作は私の高校の頃からの愛読書ですが、TVドラマになった作品と映画を、どちらが原作に忠実だとかイメージがあっているとかいう問題を論じても意味がないと思っています。
それぞれにどのくらい楽しめたかということがまず第一に大事なことでしょう。
その点ではどちらも楽しめたという事をまず最初に書いておきたい。
原作は何回もの読書に耐える素晴らしさを持っています。
余りにも現代とはかけ離れてしまった世界に思えますが、人の心の動き、感情の波、家族の有り様、恋の駆け引き・・・色々な点で今、どんな時代に読んでもきっと十分魅力的な作品で、私など読んだ年代によってその度何か嬉しいものを感じさせられています。
恋の成り行きにも、いじらしい姉の恋にも、出来の悪い放任された妹たちのこれからの人生にも、勿論リジーの生活にもわくわくさせられるです。
姉妹・母親・その友人たちの織り成す物語のそれぞれの心の動きに頷かされてしまうのでしょうね。
これだけ魅力を持った小説は反対に言えば読むものに、読む人毎に、色々なイマジネーションを与えてくれるのでしょうから、色々な脚本が現れても不思議は無いわけです。
だからこの原作からどんなTVドラマ、映画、舞台が生まれたとしてもそれはそれぞれに比べるのではなく、それ一個のものとして鑑賞され論じられるべきだと思います。
「コリン・ファース」で激賞したように私の中ではあのミスター・ダーシーは最高に魅力的な男でした。
たった二時間のドラマにされてしまった映画においてはダーシーのしどころは短くて、その魅力を十分に発揮することは出来なかったろうという点でマシュー・マクファデンははなっから分が悪いですね。
プライドを前面に押し出すには轟然と頭をあげて、見下す視線を送るしか手が無かったでしょうから。
彼の人間性の隠れた人みしりするような繊細さ、真に誠実な性格まで表現する時間も無いままにあのいきなりの恋の告白に行かなければならなかったのだから、ちょっと辛いですよ。
結局女としての私は主人公に同化してしまって、恋の対象であるダーシーを論ずることにのみ興味を示してしまいます。
ダーシーが表面的にしか描かれなかった分、映画ではあの告白が呼び起こした猛烈なリジーの反発・拒絶は反対に素直に受け取れましたね。理解できました。
だってアンナ表情しか見せなかった男の告白ですよ?
コリンのダーシーには彼の性格の奥行きを表現する時間があったので告白がああなるという必然をちゃんと見るものに納得させるので、かえってリジーのあの激烈は拒絶はダーシーに同情を起こさせてしまうようでした。
悩める男の内心のせめぎあいの表現が見事でしたよねェ!
というわけで、私はどちらのダーシーをも楽しめたといえるでしょう。
映画のあの時代考証は綿密なものだと思いますが、彼女の家とダーシー家の階級の差は映画の方がかなり際立って表現されていました。あれならダーシーがこの縁組を心底ためらった理由が分かりやすかったと思います。
イギリスの貴族階級の館と庭園の見事なこと!
田舎が本当に美しかったですね。これはTVでも映画でも!
それにしても女性のドレス、映画のはちょっとおとなしくなりすぎていませんですかねぇ?あの時代女性は女性をモット強調していたのではないでしょうか?
キーラのリジーは繊細で機転が利き当意即妙な元気さと美しさが良いとおもいましたが、TVで演じた女優さんの理知的で勝気なしっかり者の雰囲気もよかったなぁと思いますし。そんなわけでどちらも面白く楽しんだというわけです。
ジュディ・デンチという女優さん凄いですね?
ツイこの間の「ラベンダーの咲く庭で」見ました?
あの可憐なおばちゃまですよ。
いやこっちの方が大方の彼女のイメージですよね。
ビクトリア女王とか、はまり役でしたが、「ラベンダー」で可愛いのに驚いたのでした。
お父さん役がドナルドだと知った時にも、あの田舎紳士、「彼でいいのかなぁ?」と思ったのに、ちゃんとイギリス親父になっていました。
俳優さんてだから素敵!と思うのです。
それにしても何で「プライド&プレジャデス」か「高慢と偏見」じゃなくて「プライドと偏見」なんですか?

パリの恋人

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今日の映画紹介は大分古くなりますが、
「パリの恋人」です。
先回オードリーの事を書きましたしので何か一つオードリーの映画をと思ったのです。
当然「ローマの休日」?
いえ、「マイ・フェア・レディ」でしょう?
でも001ではフレッド・アステァの事も書きましたからね。
だからこの二人の映画にいたしましょう。
オードリーには「パリで一緒に」という映画もありますから、混同しそうになるのですが。

「パリの恋人」
1957年
監督 スタンリー・ドーネン
主演 オードリー・ヘップバーン フレッド・アステァ

あの頃フレッド・アステァは何歳だったんでしょうね?
1899年生まれですって?
では58歳ですか!
花開き始めたオードリーの相手としては確かに大分お年上。
そうかやっぱり今考えると我が友人ではないけれど「貧相なおじさん」ってねぇ・・・言ってもいいのかな???
イエイエ、とんでもありません。
スリムで、ソフトで、エレガンスで!
彼の動きと顔の表情の変化はエレガンスとしか言いようがありません。ちょっと愉快でね。
まさに銀幕の中、スラリ、スレンダーな二人が踊りまわるのですから・・・夢心地世界です。
背景にエッフェル塔なんかありましたねぇ。
恋に気が付く二人、愛を歌い上げる二人、書割の舞台のような背景、
古き良き優しき世界。
人を好きになるってこんなに軟らかい柔らかいものなのですよ。
陶然とした眼差し、誘う流し目!
反る背中、流れる指先!
「やぁー恋っていいもんなんですねぇ!」って、言ってみたくもなるじゃありませんか?誰かさんみたいに?

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