エレジー

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監督  イザベル・コイシェ
出演  ベン・キングスレー、ペネロペ・クルス、パトリシア・クラーケン、デニス・ホッパー、ピーター・サースガード、デボラ・ハリー

「エレジー」ねぇ?なんていうか、いい映画見たなぁ・・・とは言えない気持ちなのですけれど、「ああ、男ってこんなもんかなぁ・・・」みたいなこと考えちゃいましたね。皆が皆こうではないけれど、確かにこんなところもあるだろうなぁ・・・、で、こんな男にめぐり会ってしまうとなぁ・・・怪我は大きいだろうなぁ・・・なんて。若くて、若くなくても人生経験の余り無い女性がめぐり会いたくはない種類の男ですよ・・・なんて。監督が女性なんですね?原作は勿論男性?男性の視点だけだったら、これは男性のお伽噺だと断定してしまいますが?
私たちおばさんも集まるとよく映画俳優なんかの棚卸?をします。
「何時まで経っても枯れないのが素敵!」
「あの人幾つ?枯れないわね。なんかぎらぎらして好きになれないわ」
「彼って凄く枯れた風情なのに時に凄くセクシーに見えるのがスキ」
なんて・・・「なんて勝手なんでしょ!」でしょ?
だから女性から見ても枯れたらステキ、枯れないからステキなんて一概には言い切ることは決してできません。
きっかけを作った男は、どんなに年上でも枯れてはいなかったんですね。とんでもない!ベン・キングスレーさんにはその微妙なところがあります。
でも彼の日常を知ると私の中では彼の人間性は眉唾だぞ・・・と警鐘が鳴ります。彼の知性も衣に過ぎなく、名声も狩人としての彼の武器でしかないのかもと。ちょっとした狩のつもりが獲物がすばらしすぎたのでしょうね。全く許せませんよ、この状況。
こんな男にとってさえ若くて美しくて知的なこんな彼女は眩しすぎたのでしょうか?大人の判断をしようと?でも女性に何らかの陰りが付いていれば・・・相殺されて釣り合いが取れるとでも?男ってでもそんな可愛い生き物ではありませんよね。地位も財産も名声もあれば、手に入る物は自分の力で勝ち取ったと誇りたいものでしょう?でも、その手にしたものが余りにも眩しく感じられたということは・・・当然まだ枯れてはいないが老いは実感し始めているという「弱み」を自覚しているわけで・・・って、ごちゃごちゃ言っても、こんな男に本気でほれてしまった女性が可愛そうな気がしてしまうんですよね。病ってこの場合に限らず傷でしょうか?老いと病という傷があるから繋ぎとめられる絆って信じられますか?そこに愛はあるのでしょうか?どんな愛が?それにしても、ペネロペさんの美しさったら・・・勿体無さ過ぎる!
この物語の結末がどうであれ、結局男性と女性とは理解はしえないのだろうな・・・どうにもならない絆を結ぶことは出来てもね・・・なんて思ったのですが。酔えなかったなぁ。
 原題の方がいえていると思える。

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旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

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監督  マキノ雅彦
出演  西田敏行、中村靖日、笹野高史、長門裕行、岸部一徳、
六平直政、柄本明、塩見三省、平泉成、堀内敬子、前田愛、梶原善

正直俳優さんの顔ぶれを見たら、これはアタリかハズレ、どっちかに思いっきり転ぶんだろうな・・・と思いましたね。コレだけ個性的で上手いけれど灰汁もあるっていう俳優さんのオールスターみたいだもの。
触発しあってやりすぎ状態に落ち込むんじゃないかって。
ところが、コッチも素直な旭山動物園応援団!気分で見に行ったからか?凄く素直にケレンみも全くなく出来上がっている映画だ!と感動してしまったのです。いやー、嘘みたい!人間素直が一番お得?
昨年のことですよ、旭山動物園をようやく見に行けたのは。そしてまさにご多分に漏れず?旭山動物園ファンになって帰ってきましたものね。見せようとして工夫してくださった殆どの物をちゃんと見て帰ってきました。白熊君だけがびっしょり濡れた身体で陸上散歩中で帰るまでにとうとう水に入ってくれなかったのだけが残念でした。この動物園の規模の小ささがこんなに生きるなんて、まさに弱点を最大の武器にしたわけです。
動物の餌の時間の表示を見ながらその展示室まで、その時間にすぐに駆けつけられる広さなのです。上野動物園で猿舎から白熊舎まで行こうとして御覧なさい?何分かかるか。
そこへいくとちょっと坂道にはぁはぁしても、気がついてから慌てても、ちゃんと間に合ってたどり着ける広さで、しかもその見せ方、説明・・・なんと!物慣れてドウドウたるものでした!
このようになってから何年になるのですか?えー、もう十年になるんですか?たいしたものですねぇ!って感じで、頷きながら映画自然に見てしまいました。
こんなで、動物園そのものがあんなに素晴らしいのですから、映画も良くなるに決まっています!っていう映画でした。ハハハ・・・子供に還れますよ。
俳優さんたちの力量に因るところですね。大体今そこにいる人物を演じてしかもその俳優さんそのままの顔をそのまましていて、しかもその人らしく見せてしまうなんて・・・なんとも難しいことでしょうに? って、私の言っていること判りますかね?俳優さんがあの西田さんまでもが、本当にそこの人で、行けばそこにいそうなんですもの。おかしくなっちゃった!ってことで、お薦めできる映画だと思うんですけれど・・・それでもやっぱり「いい、行かない」と父は言いました。

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007/慰めの報酬

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監督  マーク・フォスター
出演  ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ライト、ジャン・カルロ・ジャンニーニ、イェスパー・クリステンセン、ジェマ・アータートン

甘すぎる顔が好きではないので、前回クレイグさんのボンドを見た時はほっとしました。ロジャー・ムーアとかピアーズ・ブロスナンみたいな人が007に向くとは思えなかったので。
特に前回の「カジノ・ロワイヤル」は本当に面白かったので、今回も楽しみにしていました。
しかし、私も年を取ったのかも知れん・・・(って、取ったのですけれど)面白くって夢中でのめりこんで見てはいたのですけれど・・・いや、ホント!冒頭!凄かったですねぇ・・・スピード!
私の眼は完全にひっくり返って背中の方まで回っていたに違いないと思いますもん。動体視力って言うんですか?ボクサーじゃないからあんなモンそんなに評価していなかったんですが・・・眼が、完全に映像に遅れを取ってしまいました。クソッ!
「いやっ、今どうなったん?」みたいな・・・
でも本当に面白かったのはシエナのアジトに滑り込むまでのアクションとオペラ座のトスカの場面だったでしょうか。
あれは・・・トスカは・・・魅力的なシチュエーションでした。
どこが本当の銃撃戦でどこがトスカの殺人場面なのか分かち難い!めまぐるしさが不思議な効果を生んで、ボンドの感情の混沌までもが映し出されたような・・・印象的な場面になりました。
前回と同じく観光的な部分で満足でしたが、2週連続で(「チェ39歳別れの手紙」と)ボリビアのラパスを見るとは思いませんでした。
それに多分オルガさんという女優さんは撮り方に依ってはきっと素晴らしい美人さんなのではないかと思いますが、この映画の復讐に燃える役では却って一途さの故に?子供っぽく見えて、ボンドガールにため息をつくという醍醐味が少々薄かったようです。ポスターは魅力的だわね。
女性から見てもハードにクールなアクション系美女は魅力的なのよ!もっとも話の時期からして流石のボンドさんも心まで移す恋は出来る状況では無かったですね。その辺がクール?
復讐と忠誠の間って?相変わらずMがキュウッと閉めてくれているから・・・ボンドの現状の混乱は回帰できると思ってましたしね。
無表情・無感動で殺人ができる(女王陛下の御為には)というのはボンドの原点回帰でしょ?だからそこはともかく、次回は「カジノ・・・」くらいの内容が欲しいなって。
敵の狙いが「水」でオイルではないっていうところが、なんか新しい!しかしこの手のスパイ者の悪人はどんどんオタク系になっていくように思いますが、現実がそうなんですかね?ボンドさんもすっきりしたようですから、次回も期待するつもりです。
 

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チェ 39歳別れの手紙

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監督  スチーヴン・ソダーバーグ
出演  ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、ヨアキム・デ・アルメイダ、ルー・ダイアモンド・フィリップ、ロドリゴ・サントロ、フランカ・ポテンタ、カルロス・バルデム

「28歳の革命」と日を措かずに見れて良かったと思います。
怒涛の勢いで人生を駆け抜けた人の人生は傍観するだけにしても、やはり心が急ぎます。
見終わって気に掛かるのは今のボリビアです。学校で出て来たボリビアは「錫の生産地」ぐらいだったんではないかと思い出しているところです。
映画の冒頭で見たラパスの町は既にあの頃ビルの林立する大都会だったのでしょうか?そうなのでしょうね。
そしてチェさんが駆け抜けたボリビアのほかの地方、山野の光景にあの都会の光景がクロスしました。
ボリビアの広さ、住んでいる人々の違い、生活水準の違い、大多数の人々を同じ意識の段階に持っていくことはもう当時至難の国だったのではないかと思いました。
アメリカの傘の下の豊かさを享受してしまった地域に生息している?教育のある共産主義ってなんかいびつなイメージがありますが・・・ある意味で成熟は暴力を忌避します。それに対してチェさんらが入っていった先は自分の貧しさにさえも気が付いていない。他の生活があることすら気が付いていない人々の世界だったように思われるのです。
行きたいところ、成りたいもの、未来のイメージの無い人々に闘争してつかむ物を理解させることからはじめなければならなかったチェさんたちの革命。
そこに至るには時間もお金も考えられるあらゆるものが足りなかったのだと思われてなりません。
搾取ではなく対価を支払って食料を手に入れようとしても、貰ったお金を使う場所さえない人々には、暴力で奪い取られる方が諦めがついたのでしょうか。恐怖の方が理解しやすい感情だったのでしょうか?厳しいです。キューバとの違いを考えさせられました。
チェさんが青春時代に夢見た未来、全南米の「貧しく搾取される国からの解放」は彼の命が潰えた時文字通り夢と消えたのでしょうか?ボリビアには何か残っているものがあるのでしょうか?
それにしても彼の無私としか思えない行動、情熱の源泉はなんだったんでしょう?同じ土地に生まれた人々に対する大いなる愛だったとしか思えないのですけれど・・・こういう人はどうしたら育つのだろう?と奇跡を見るような思いで見てしまいました。

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ロルナの祈り

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監督  ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演  アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ、アウバン・ウカイ、モルガン・マリンヌ

20数年と思われる人生でいったいロルナはどんな苦労をしてきたと言うのでしょう?強い女だったと思っています。何が彼女をこんなに強くしてしまったのでしょう?そしてその行き着く先は傷付き暗闇にうずくまる母性です。なんと哀れな。この先彼女はどうなるのでしょう?
真の母性こそが究極の愛だと信じます。これ以上に侵されない物はないでしょう。先日そう思える素晴らしい愛の映画を見ました。母の娘への愛の。「そして、私たちは愛に帰る」でした。最後に素晴らしいあらゆる物を乗り越える母の想いの美しさに打たれたのでした。その後、自己実現しかない、自分しか見えない若い夫婦を、愛の育ちきらない夫婦を見ました。人を自分の鎖で縛る欲は愛とは言いません。「レボリューショナリー・ロード」です。
そして今この映画の愛です。愛を描くことの永遠、尽きぬ泉を思います。一人の人の中に無限に湛えられている愛を思います。その人の成長と共に変化し育ち成熟していく愛の姿を思いました。
人も、自分も縛らない、無私の、要求しない愛は親にしかないのか?
そう最後に思わせる映画でした。
ロルナも恋人との未来のために国を出、偽装結婚をし・・・それは愛のためだと思っていたのでしょうに、哀れな青年の日常を見、頼りすがる孤独を見たとき・・・彼女の中で新しい愛が育ちます。独りよがりの自分に都合の良い愛から、苦労と忍耐を強いられ他人の支えとなれる強い愛に。犯罪者になる事をも厭わなかった、クローディが殺されることにも眼をつぶれるはずだった彼女が変わります。彼女の中に埋もれていたおおしい愛が立ち上がり育ちます。そしてその対象を失ったとき、クローディの命を救えなかったとき、彼女の愛はいつかは生まれるはずだった愛の結晶を夢見させる母の愛にまで昇華します。狂気が純粋を産んだのでしょうか?
でも現実の前でそれがどんなに悲しいことか。彼女のいる世界が病んでいるので彼女の愛の器も病んでしまう。世界の方に愛が無ければ個人はその愛をどう実現できると言うのでしょう?
いる場所を買い、国を買い、人を買う現実に人のもろい心が無傷なまま付いていけるはずも無い。何で世界はこんなにも病んでいるのだろう・・・。朝広げる新聞を見て、少しでも良くなっていくのか・・・期待がむなしい社会なのか・・・と怯えています。祈るしかないのかと。

レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで

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監督  サム・メンデス
出演  レオナルド・デカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、マイケル・シャノン、キャスリーン・ハーン、デヴィッド・ハーバー、ゾーイ・カザン、リチャード・イーストン
 

さーてね、何から書いたら良いのかなぁ?チラシがこんなに手に入ったってことは、やっぱりハリウッドなんだなぁ・・・しかもこの写真見て、タイタニックを歌われたら・・・ねぇ?
私は老いたる家庭人なので、キャシー・ベイツの演じたギグィングス夫妻の年齢に近いので・・・最後の場面、夫がしゃべり続ける妻の言葉を補聴器を切ることでシャットアウトする場面で思わず失笑してしまった。キャシー・ベイツの病んだ息子の存在、そしてお互いの存在、腫れ物のように扱うことで?必要に応じて意識から除くことで?保ってこれた老?夫婦の形。
いわば私たち(多分不特定多数の)夫婦が上手く今まで夫婦としてやってこれたとすれば、多分この能力のお陰だろうと・・・それもあるだろう・・・と思わずにはいられなかったから。年月が身につけさせてくれる叡智を身につける暇もなく自らを滅ぼしていった若い、若すぎる夫婦が哀れだった。
ここまで来る年月の間に身をかんだ焦燥の数々を私は思い出してしまった。そういう焦燥・渇望に焼かれた日々を乗り越えてきたのは、乗り越えさせたものは、結局今思うと、子どもの存在だったから、この夫婦のというよりこの映画の子どもの存在感の薄さが気に掛かった。
子どもがいて、「子ども子ども」というわりに彼らは子どもの事を真に気にしていないような?現代の子どものいない多くの夫婦のことを考えさせる、というか世界中の子どもの減少とこの映画はある意味シンクロしているような気がした。夫婦として何かを乗り越える必要がない、誰かのために我慢しなくていい、道が違えば別かれていける現代の夫婦に通じるようだ。彼らももし今生きていれば、当然別かれていってこのような結末には至らないで済んだのに?
他人に理想の夫婦と思われ、自分たちもそうだとある意味自負していたから起こった結末。「そうじゃない、理想の夫婦じゃない、したいことも、行き着きたいところも全然違う。心は同じではない。したいことも全く違う。」っていえない時代のアメリカもあったんだ!
子どもが二人もいれば、そしてそれが3人になれば益々、その責任だけは果たそうと思うのが私の時代の母だった・・・と、思う。
母になる事を選んだ時点で、それを全うするまではきちんと家庭を維持することが義務、それがあるから夫は同志・・・だから心の補聴器はしょっちゅうオフにする。自分の心の願いも、要求にもオフにする。それは夫も妻も同じ・・・だったんだろうと思う。
そんなにつらいなら、あそこまで言い争うなら、言い募らずにはいられないなら・・・子どもも夫も捨てて飛び出せば・・・ハリウッドにでもブロードウェイにでも・・・と思ってもむなしい。あれは若さがみせる蜃気楼、でも見ているものには真のオアシス、そこに向っていかずにはいられない、誰を傷つけても自分を滅ぼしても。過去のページをめくるとだれにも思い当たる痛み。それにしてもそのエネルギーの凄まじさ!我儘さ!・・・甘え・・・と思う。

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チェ 28歳の革命

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監督  スチーヴン・ソダーバーグ
出演  ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンチアゴ・カブレラ、ロドリゴ・サントロ、ウナクス・ウガルデ、エドガー・ラミレス、エルビラ・ミンゲス、ジュリア・オーモンド

私の世代なら子供の頃にカストロやゲバラの映像を結構見ているはずです。私も髭の怖そうな悪い人・・・のイメージで見ていましたよ。
どんな人か知ろうとする努力など全くしませんでした。アメリカの敵!というだけの知識でした。
「モーターサイクル・ダイアリー」のゲバラを知ったのが初めてゲバラに興味を感じた瞬間だったかもしれません。それでもただ漠然と、こんな感受性も豊かで知識も知能も高い人がなんで武力闘争革命などに参加したのかという驚きに近いものでした。
今のキューバをある種驚きの目で見ています。教育費・医療費が無料の社会保証の行き届いている国としてです。
この映画を見て、今のあの国を見て(本の少しの知識だけですが)、
ようやくカストロとゲバラとその仲間たちが目指したものをおぼろげに掴み始めた感じです。国連で演説するゲバラの言葉からようやく読み取ろうとしているところです。
ヒョットすると今の日本に必要な人材といったら彼のような人なのではないか?今の日本の危機的状況への処方箋を書ける人といったら、彼のような人ではないのか?こんなブレインが今ここにあったら?実現する手が今ここにあったら?
戦闘の間に教育をするゲバラ、読み書きの出来ない人間は騙されるというゲバラ、分かりやすい言葉が無知な若者に染み入っていく過程・・・どこをとっても説得力のある映画でした。今のキューバにはちゃんとゲバラの意志が残っているんだ!彼が意図した理想が形を与えられているのだ!殆どドキュメンタリーのように見えました。現実のフィルムとベニチオさんが演じるゲバラとの垣根が見えないくらいでした。本当はあのベニチオさんが?人種的には違和感が無くても・・・年齢的に20代のゲバラは無理だろう・・・って思っていたのに。ベルナルさんの感性の鋭さ感受性の豊かさを感じさせた青々とした青春のゲバラ像から数年しか立っていないゲバラを演じられる?と。それなのに・・・驚きました。髭が無かったらきっと綺麗なお顔だったろうに・・・と思うゲバラさんを姿かっこよく演じていたのですものねぇ・・・

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禅 ZEN

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監督  高橋伴明
出演  中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也、勝村政信、テイ龍進、
村上淳、高良健吾、安居剣一郎、高橋恵子、西村雅彦、笹野高史
 

「うちは曹洞宗だから・・・」ってだけで見にいらした方はやっぱり多いのでしょうね?うちはそうでした。有楽町シネカノン満席。1時間前にチケット買いに行ったので、なんとかいい席取れましたけれど・・・殆どの方がシニア。しかも夫婦揃って!
もっとも宗派がそうだからといって曹洞宗に詳しいかって言うと・・・「曹洞宗だ」ってことしか知らないんです。まして私など浄土真宗から移籍?しているのに違いって大して知らないんですねぇ。
ですから途中から妙に感動して見ている自分に驚いたくらいです。
それでぴんと背中を伸ばしながら見ているうちに(どうしたって背筋は伸びます)・・・このお言葉!中国語の時字幕を入れてくれたのだから、このお言葉の時も漢字で入れてくれないかしら?と、思いました。最後の道元さんのお言葉、少しは理解できたんじゃないでしょうか?理解できなくても心を動かされたのですから惜しい・・・と、思いました。
勘太郎さんです。子どもの時から見ているんですね、この方。それなのにいつの間にこんなに骨太な俳優さんになったのか!と、驚きましたね。ぴんと張った背中で深いお辞儀をする姿の腰の定まった美しさ、お辞儀、座禅、すべてのメリハリのある姿勢の美しさ。ひたすら歩くシーンの安定感。表情の引き締まっていること。
西村さんのお坊さんはいかにも徳の無いお坊さんの感じが出ていますが(あはは)反対に何時ものように笑顔に引かれる笹野さんの役も・・・どうせなら中国人俳優さんで良かったのに、妙過ぎる!(完全日本人と分かっている人の中国僧って?)とか、内田さんの好演にもかかわらずあのエピソードの濃さとか(俊了さんの生き方、感動しました)、いろいろあっても、見終わっていい映画になっているなぁ・・・という感じでした。
少なくとも今後も正法眼蔵など読む気の無い私にも、道元様の教えの一端はちゃんと勘太郎君を通して伝わったような気がしました。
あの若さで道元さんは師を求めて遠く命を懸けて旅をしたんですね。師というと学校の先生しか思い浮かばず、それもかなり厭な先生に当たったりしたにもかかわらず、師を求めるという心に行き着くことの無かった自分を省みました。求道者というのは志を立てたらそこへ導いてくれる師をまず捜し求めるのだ・・・という基本の事をこの年で考えても・・・と、思いながら・・・考えちゃいました。
人は師を見出だして、とことん学び尽くすべきなのだと。そしてそこから出発すべきなのだと。
寂円さんが気になっています。道元さんは何故彼に永平寺を託さなかったのか?託していたら?「街道を行く」に少し寂円さんのその後が書かれているのを読んだので。

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PARIS(パリ)

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監督  セドリック・クラビッシュ
出演  ジュリエット・ビノシュ、ロマン・デュリス、ファブリス・ルキーニ、アルベール・デュポンテル、フランソワ・クリュゼ、カリン・ヴィアール、ジル・ルルーシュ、メラニー・ロラン
 

ヒョットすると、住むように?パリが見られるかもしれない映画だ!と、思ったので、ワクワクしながら出かけました。
主人公のピエールを演じたロマン・デュリスさんが私には問題でした。あのルパンをした人なんです。どう名前を確かめても・・・間違いない!(最も私はあのルパンはイメージ違いでしたけど)
なのに、死が近づいてくるその時を佇むベランダでの横顔にはルパンの面影の欠片も無いのです。いやもっと、あの真っ赤なシャツでギンギラギンのジャケットで踊る姿は・・・もっと面影は無い。いくら俳優さんとはいえこのギャップはなんなんだ?と、暫くはそこに囚われてしまいましたよ。
それはともかく彼の目から見下ろすパリの街角は、私が住んでみたいなと思うパリの街角でした、間違いなく。マルシェに人が集い、賑やかな挨拶が交わされる下町の風情。国際劇場で踊るダンサーや色物の師匠が住んでいて妙にごちゃごちゃしていた子供の頃の浅草の風情。ま、確かに建物はずーっと問題にならないくらいアッチの方がおしゃれなんだけれどね。人の匂いが濃密であるという意味では変わらない。どこか肉を感じさせる分あっちの方が濃密かな?死が近づいているときにこのような日常を見るということ、だから日常が愛しく見えるという気持ち。それがパリをパリ以上にしていたのかもしれない。実際そのときが来たらそんな風に見えるかどうかということは別として。
「生きているのだから楽しむ」の「楽しむ」部分にかなりの相違はありそうだけれど・・・まぁ、気持ちは共有できるし・・・
確かになぁ・・・年は取ったけれども、あちこち痛んでもいるけれども・・・でも、楽しめる間は積極的に楽しもうかなぁ・・・なんてしっかり思い込んで帰路に付いた事は確か。
ビノシュさんは疲れた、だけど何処か危うくかわいい母親を好演しているし・・・と、思ったら、吃驚するほど恋?にうかれてしまって・・・やっぱりパリジャンは永遠に男か女なんだ?だから私の目にはパリは永遠に魅力的に見えるのかな?この映画の中には溺れたくなるような美男美女も余りいないし、おしゃれな恋も手管も無い、だけど人が住んでいる息遣いはちゃんとあるんだな・・・って思ってみていた。映画的には海の向こうの話ははしょってもいいかもねと思うけれど、とにかくパリを縦横に歩いてみたくなったことは確か。
 

そして、私たちは愛に帰る

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監督  ファテイ・アキン
出演  ハンナ・シグラ、バーキ・ダヴラク、トゥンジェル・クルティズ、ヌルギュル・イェシルチャイ、ヌルセル・キョセ、パトリシア・ジオクロースカ

もうなんとも素晴らしい映画を見てしまいました。正直この間からのパレスチナの戦闘をなんと気の毒な・・・と言う目線で見ていました。実際そうなのですが、「イギリスの二枚舌め!」なんていっても今更・・・どうしようもない泥沼です。宗教民族人種などが絡み合って長い長い複雑な歴史を経てきたものを・・・と思うと、手をこまねいてただただ「子どもたちが生きて行けて憎しみを持たないですむ世の中を」と願うだけしか出来ない感じです。
そこにこの映画です。トルコへは昨年観光に行きました。トルコのリゾート地の最大のお客様はドイツ人だと聞きました。どういう経緯でトルコとドイツに絆が出来たのかわかりませんが、ドイツにトルコ移民がこんなにも多いという事をこの映画で知りました。
トルコ人はドイツの産業の底辺を支えドイツ人はトルコにユーロを落とすという関係でしょうか?この作品にでてくる3組の親子、ドイツへ移住してある意味成功して年金を貰っているトルコ人父と大学教授にまでなっているその息子、ドイツで娼婦をしながら国にいる娘の大学費用を仕送りしている母と体制にはむかう活動家として生きるその娘、国外逃亡してドイツへ不法入国したその娘に同情し恋をしたドイツ人の娘とその母。ブレーメンとイスタンブールの間で紡がれる3組の親子の運命の交差。二つの都市を訪れる観光客の知ることの無いその土地の描写に、この親子たちだけではなくこの2国の人々の間に多くのドラマが現実にも様々に入り乱れてあるのだろうということが想像される現実感がありました。そしてその上に人の心の素晴らしい面がなんのてらいも無く構築されていました。娘の教育のために身を削る母、父の罪の償いを身に引き受けたかのような息子の生き方、娘の愛情を受け継いで手を差し伸べる母の生き方。非常に難しい事を、つらい事を・・・背負って、と。母がイスタンブールのホテルで泣きつくす姿に涙し、幼い頃の父の言葉をかみ締めて浜辺で待ち続ける息子の後姿に涙し・・・めぐり合うことも、すれ違うことも、どちらも運命。それをを受け入れることが生きることなんだと思いながら涙を拭いたのです。無関心に転がることも、憎しみに傾くことも出来たのに・・・そうあっても無理からぬ成り行きだったのに、二人の選んだ道が心を素直に明るくしてくれました。母の、母以外の誰にもなりようも無い母そのもののすばらしさに打たれてしまいました。

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